オープンデータ社会(63)地球観測衛星データ12年分の処理とクラウド活用
米国航空宇宙局(NASA)の主導による宇宙や地球関連のデータを活用して、世界レベルの問題を解決するアプリケーションを開発するハッカソン「International Space Apps Challenge 2013」が、2013年4月20日と21日の2日間、開発者による自主的なイベントとして、世界各都市で開催されました。
東京会場では「International Space Apps Challenge Tokyo 2013」が東京大学・駒場リサーチキャンパスで開催され、110人が参加し18チームに分かれて開発に取り組みました。
IDCフロンティア社の事例から了承をいただき、一部引用をさせていただいています。
2位となった「Cloudless Spots for Solar Power Generation (ソーラーパネル、どこへ置く?)」のチームでは、NASAが公開する地球観測衛星データ(MODIS)から日本全土の雲のデータを抽出し、緯度経度0.01度(日本国内の場合、1km毎程度)毎の晴天率の分布をマッピングして表示させ、太陽光発電パネルの設置判断を支援するアプリを開発しています。
http://spaceappschallenge.org/project/where-to-put-solar-panels-/
http://www.idcf.jp/blog/cloud/international-space-apps-challenge/
このマップからは、首都圏などの太平洋側は晴天率が高く、東京都の23区の都心部が晴天率は低くなっていることがわかります。
本アプリを開発するにあたって、NASAが公開する地球観測衛星データから、解析のために7種類のデータを抽出しています。時間情報を付加したデータは、1年分で233GB, 8027万レコードとなり、12年分のデータのため総データ容量は1TBを超えているとのことです。
http://www.idcf.jp/blog/cloud/international-space-apps-challenge/
これらの環境には、IDCフロンティアが提供するIDCFクラウドセルフタイプを利用し、8CPU/32メモリの高CPUで高メモリの仮想マシンを6台使ったクラウド環境で構築しています。
データの処理とデータベースの格納はPhythonを利用、データ変換と集計はMongoDBのMapReduceをJavaScriptから制御し、Load Balancerを用いて負荷分散を行っています。これらの環境をハッカソンの二日間で構築し、アプリ開発まで至っています。
対象地域を日本以外に増やすなどのより多くのデータを処理する場合は、Hadoopを利用することなど、構成を見直す必要があるとのことです。
今後、たとえば、気象庁が提供する降水量などのデータなどを組み合わせることで、太陽光パネル設置判断のためのより信頼度の高いデータ分析ができるようになると考えられます。
気象データから生まれる市場創出
クリエイティブコモンズの創設者で、ハーバード・ロースクールのローレンス・レッシング教授は、気象データの公開は「8億ドルを超える経済価値を生む」と述べており、気象データのオープンデータ化だけでも高い経済波及効果を生み出します。今後日本においても気象データを活用した様々なビジネスやサービスが創出されることが期待されます。
特に、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーのニーズが高まる一方で、電力需給の安定供給が大きなテーマとなっており、気象データや、統計データ、不動産データなど、オープンデータと、自社が保有するデータなどと組み合わせることで、再生可能エネルギー関連のビジネスを進めるにあたっての重要な支援ツールとなると考えられます。
オープンデータの利活用に伴い、こういった膨大なデータをアーカイブし、データ処理のためには、データを処理するための基盤とクラウド環境の活用が、重要視されていくようになるでしょう。
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