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2030年、サプライチェーン管理の主役はロボットに?

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米調査会社Gartnerは2025年7月16日、2030年までにサプライチェーンマネージャーの20人に1人が人ではなくロボットの管理を担うようになる、という予測を発表しました。

Gartner Predicts One in 20 Supply Chain Managers Will Manage Robots, Rather Than Humans, by 2030

背景にあるのは、労働力不足やコスト高騰といった構造的課題に直面する物流業界において、スマートロボットの導入が加速しているという現実です。Gartnerによれば、今後はロボットを単なる作業機械としてではなく、業務パートナーとして管理・運用する体制の整備が求められるといいます。

しかしながら、企業の多くは、ロボット導入に関する専門知見や運用ノウハウを十分に持ち合わせていません。ロボット活用の進展は、人材育成、組織設計、そしてガバナンスに至るまで、従来のマネジメントスタイルの刷新を迫る可能性があります。

今回は、Gartnerの予測内容を踏まえ、サプライチェーンにおけるロボット管理の現状と課題、今後求められる体制構築、そしてロボティクスがもたらす産業変化の可能性について取り上げたいと思います。

ロボット導入が物流現場に与える影響

物流業界においては、倉庫やフルフィルメントセンターにおける作業の多くが人手に依存してきました。しかし、近年の人手不足や賃金上昇に伴い、企業は業務効率化の手段としてロボティクス技術に注目を集めています。Gartnerによると、2030年には人の代わりにロボットを管理するマネージャーが登場し、80%の人が日常的にロボットと関わるようになるといいます。

特にスマートロボットの導入は、定型的な搬送業務から在庫管理、ピッキング、検品まで、幅広いタスクに対応する能力を備えており、その汎用性と可搬性の高さが評価されています。企業はこれらのロボットを単なる機械ではなく、協働する"職場の同僚"として位置付けつつあります。

このような変化は、ロボット導入が技術的な話題にとどまらず、組織全体の業務設計や人材戦略に直結するテーマであることを示しています。

求められる新たなマネジメント手法

現在、企業には人材マネジメントに関する豊富な経験と体系的な手法が整備されていますが、ロボットを対象とした管理手法は発展途上です。単一機能に特化したロボットだけでなく、複数のタスクを横断して行う汎用型ロボットが導入されることで、現場の運用は一層複雑化します。

ロボットのマネジメントには、エンジニアリングスキルではなく、ロボットの機能や動作の理解、そして人間とのインターフェースの把握が求められます。たとえば、あるロボットが高所にあるパレットを取り扱う場合、安全確保や作業スピード、人的オペレーションとの調整をどう行うか、といった判断がマネージャーに委ねられます。

つまり、ロボットは"使う"存在から"管理する"対象へと変化しており、今後は人的マネジメントと同様に、評価指標や運用ルールを確立する必要があるのです。

成功に導くための体制と戦略

Gartnerは、ロボット導入を成功に導くには、企業に以下の体制整備が求められるとしています。

・ロボティクス導入を全社的に推進する「専門コンピテンシーセンター」の設置
・倉庫オートメーション戦略の策定と実行
・ロボット導入から運用、保守までを含めたライフサイクル管理
・サービスレベル契約(SLA)、価格設定、セキュリティ基準を含むガバナンス体制の確立

重要なのは、ロボット導入を"技術投資"としてではなく、"業務変革の起点"として位置づけることです。ロボットの種類や利用領域が拡大する中で、導入の意義や目標を明確に定め、それを支える体制を整えることが、長期的な成功には重要となるでしょう。

今後の展望

今後、ロボットの管理は物流部門にとどまらず、調達、生産、顧客対応など複数の部門にまたがって活用されるようになります。Gartnerは、ロボットマネジメントが初期には独立した役割として立ち上がり、やがてIT部門のように企業全体に統合されていくと見ています。

このような変化を見据えると、ロボティクスに関する人材育成やリスキリングも喫緊の課題となるでしょう。技術理解とビジネス感覚の両立が求められる中で、企業は社内のスキルマップを再設計し、人材ポートフォリオを柔軟に組み替える必要があります。

ロボットを活用する企業は、単に自動化の効率性を追求するだけでなく、現場における判断力、責任、そして協働の設計思想を再定義する段階に入りつつあります。今後の競争力は、どれだけロボットと人が融合した"共創環境"を築けるかにかかっていると言えるのかもしれません。

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