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AI時代の思考法:「どう使うか」ではなく「どう変わるか」が勝負を分ける

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「AIをどう使えば、仕事の効率や生産性を高められるだろうか?」

多くのビジネスパーソンが、今まさにこの問いと向き合っているのではないでしょうか。もちろん、AIが既存業務の効率化に貢献することは間違いありません。しかし、その変化の本質は、単なる「改善」に留まるものではないのです。むしろ、効率化の追求だけに囚われることは、AI時代における最大の経営リスクとなり得ます。

AIがもたらすのは、私たちが立つビジネスや社会の「前提」そのものを再定義するという、より根源的な地殻変動です。

あなたの問いは「改善」か、「変革」か?

冒頭の「AIをどう使えばいいか?」という問いは、既存のやり方や常識を前提とした「改善」を目指す思考です。

しかし、AIという非連続なテクノロジーがもたらす未来を見据えるならば、私たちは思考のOSをアップデートし、次のように自問しなくてはなりません。

「もしAIが当たり前の世界で、我々が今日ゼロから事業を立ち上げるとしたら、どんなビジネスを創るだろうか? その時、自分にはどんなスキルや役割が求められるだろうか?」

これは、既存の常識が通用しなくなる世界で、自分や会社、社会のあり方そのものを問い直す「変革」を目指す思考です。AIという新しい土台の上に、何を築き上げるのかを考える、いわば「常識の再定義」です。この視点に立って初めて、私たちはAIと真に向き合うことができるのです。

インターネットが残した痛烈な教訓

改善か変革かという、AIを前にしたこの分岐点は、かつてインターネットが登場した時代を彷彿とさせます。

当時、多くの日本企業はインターネットを「低価格な通信回線」と捉え、既存の業務プロセスをいかに効率化するか、という視点で適応を模索しました。あくまで主役は既存のビジネスであり、インターネットはそれを補助する便利な道具という位置づけでした。

一方、米国では、インターネットを「新しい経済や社会の基盤」と捉えました。彼らは、検索エンジン、Eコマース、SNSといった、インターネットという前提の上でしか成り立たない、全く新しいサービスやビジネスモデルを次々と生み出していったのです。

その結果がどうなったかは、言うまでもありません。GAFAをはじめとする巨大プラットフォーマーが世界を席巻し、日本は「デジタル敗戦国」と揶揄されるほどの後れを取りました。

この差は、テクノロジーを「既存を前提とした改善の手段」と見たか、「未来を創造するための新しい土台」と見たかの違いに他なりません。

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もちろん、全てのテクノロジーが「未来を創造するための新しい土台」となるわけではありません。経済学の世界では、社会や経済のあり方を根底から変え、広範囲なイノベーションを誘発する技術をGPT(General Purpose Technology:汎用技術)と呼びます。例えば、蒸気機関は単なる動力の効率化に留まらず、工場制機械工業や鉄道網を生み出し、産業革命を牽引しました。電力は家庭や工場のあり方を一変させ、そして私たちが経験したインターネットもまた、コミュニケーションや商取引を根本から再定義した典型的なGPTです。AIは、まさにこのGPTの系譜に連なるテクノロジーなのです。

GPTとしてのAI:二度目の「黒船」

このようにGPTの系譜に連なるAIは、まさに二度目の「黒船」として私たちの目の前に現れました。GPTがもたらす変化は、単なる効率化の道具の登場ではありません。それは産業構造や競争原理そのものを根底から覆し、社会のあり方を変えてしまう、抗いがたい時代のうねりなのです。私たちは今、蒸気機関やインターネットの時と同じように、再び歴史的な分岐点に立たされているのです。

既存のビジネスを前提に、「どう使えばコストを削減できるか」「どうすれば生産性が上がるか」と考えるだけでは、インターネットの轍を踏むことになるでしょう。それは、AIの持つポテンシャルを著しく矮小化する見方です。

本当に必要なのは、発想の転換です。

AIが当たり前になった世界を想像し、その新しい前提の上で、社会やビジネス、そして自分自身のキャリアをどう作り変えるべきかを考えること。既存の延長線上で未来を描くのではなく、未来から逆算して「今すべきこと」を構想する力が求められています。

AIがもたらす変化は、効率化の先にありません。常識の書き換え、前提の再定義の先にあります。この本質を見抜き、自らを変革できる者だけが、AI時代を生き抜くことができるのです。まずはチームにこう問いかけてみてください。「もしAIを前提にゼロから会社を創るなら、今の事業はどうあるべきか?」と。

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ご紹介

【正式告知/最終視察内容決定】上海・北京トップ大学新卒IT高度人材獲得ツアー

私たちインフラコモンズ株式会社では、先日ご紹介の「シリコンバレー最先端ヒューマノイド企業視察ツアー」に続いて、上海と北京のIT人材教育に積極的なトップ大学を訪問し、日本企業が各大学の優秀なIT新卒人材を獲得できるパスづくりの視察ツアーを実施します。

【視察日程】

922日月曜日〜926日金曜日 申込締切826日火曜日

【視察設計のポイント】

  • IT人材教育を積極的に行なっている上海と北京のトップ大学における新卒人材窓口を訪問し、御社と各大学とのパスが構築できる機会を目指します。
  • ベテランの日本人中国語通訳が付きます。
  • 旅行会社はJTBになります。参加申込はJTBの予約申込ページOASYSから行っていただきます。8月上旬に開通したURLを告知、正式なお申し込みができるようになります。
  • 月曜出発、金曜日帰国。最少催行人数10名。最大2020名になった時点で締め切ります)
  • 中国における視察コーディネート会社:CARETTA WORKS。視察実施後の個別企業様と各大学との交渉等を個別のコンサルティングサービスとして請け負うことも可能です。
  • 視察代金は80万円(航空サーチャージおよび空港使用料別)

【対象となる企業】

  • 日本の大手IT企業。特にAIやクラウド人材を求めている大手IT企業
  • 日本の自動車メーカー及びティア1企業でSDVSoftware Defined Vehicle)開発人材を求めている企業、及び、ADAS開発人材を求めている企業
  • 日本の大手企業において、業務部門内でアプリケーションを内製するチームの充実を図りたいとお考えの企業
  • 日本のIT人材企業で中国IT人材企業とのパイプを作りたいとお考えの企業

【視察スケジュール】

Day 1東京上海

  • 午前:東京(羽田/成田)発
  • 午後:上海浦東空港着
  • 夕方以降:自由行動/休憩歓迎会・オリエンテーション
  • 宿泊:上海市内ホテル

Day 2上海市内訪問(午前+午後で2大学)夜に北京へ移動

  • 上海交通大学、復旦大学の2校のIT新卒人材にアクセス可能な窓口を訪問
  • 夜便:上海北京移動(例:1921時台便)
  • 宿泊:北京市内ホテル

Day 3北京訪問(午前+午後で2大学)

  • 清華大学、北京大学、北京航空航天大学、北京郵電大学、北京理工大学のいずれかのうち、2校のIT新卒人材にアクセス可能な窓口を訪問
  • 宿泊:北京市内ホテル

Day 4北京訪問(午前+午後で2大学)

  • 清華大学、北京大学、北京航空航天大学、北京郵電大学、北京理工大学のいずれかのうち、2校のIT新卒人材にアクセス可能な窓口を訪問
  • 宿泊:北京市内ホテル

Day 5北京東京

  • 午前:自由時間/チェックアウト
  • 午後:北京首都空港または大興空港へ送迎
  • 夜便:北京発東京着

【資料請求および旅行について】

 株式会社JTB  
 https://www.jtbcorp.jp/jp/
 ビジネスソリューション事業本部 第六事業部 営業第二課内 JTB事務局
 TEL: 03-6737-9362
 MAIL: jtbdesk_bs6@jtb.com
 営業時間:~/09:30~17:30 (土日祝/年末年始 休業)
 担当: 稲葉・野田
 総合旅行業務取扱管理者: 島田 翔

お問い合わせは、株式会社インフラコモンズ (ホームページ下端の問い合わせ欄よりお送りください)まで

神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO

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八ヶ岳南麓・山梨県北杜市大泉町、標高1000mの広葉樹の森の中にコワーキングプレイスがオープンしました。WiFiや電源、文房具類など、働くための機材や備品、お茶やコーヒー、お茶菓子などを用意してお待ちしています。

8MATOのご紹介は、こちらをご覧下さい。

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