オルタナティブ・ブログ > 『ビジネス2.0』の視点 >

ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

パブリッククラウド市場はAmazonとMicrosoft、Googleで市場の68%に

»

調査会社Synergy Research Groupは2025年7月31日、、2025年第2四半期(4~6月)の世界クラウドインフラサービス市場に関する最新のデータを発表しました。調査によると、同四半期の企業によるクラウドインフラ支出は約988億ドル(約15.5兆円)に達し、前年同期比で20億ドル以上の増加となりました。主要通貨の変動影響を除いても、3四半期連続で24~25%の成長率を維持しており、2023年の19%成長から力強い回復を見せています。

Q2 Cloud Market Nears $100 Billion Milestone - and it's Still Growing by 25% Year over Year

背景には、生成AIの本格活用が進み、クラウドサービス需要を一段と押し上げていることがあります。2023年初頭からの累計で、クラウド事業者の四半期売上は360億ドル以上拡大しました。

今回は、世界規模で進行するクラウド市場の成長の要因と、企業競争の構図、今後の展望について取り上げたいと思います。

生成AIが生む新たなクラウド需要

現在のクラウド市場成長の最も大きな推進力となっているのが生成AIです。2025年第2四半期において、生成AI関連のクラウドサービス市場は140~180%の成長を記録しました。コンテンツ生成や分析、高速学習処理など、大規模モデルの処理には膨大な計算リソースが必要とされ、それがクラウド基盤への需要を急激に高めています。

また、生成AIはクラウドサービスの一部領域にとどまらず、PaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)やSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)領域にも波及し、全体的な収益成長を支えています。さらに、SNSや検索サービスといった他のデジタル領域にもAIは浸透し、クラウド基盤への負荷が継続的に増加している点も見逃せません。

主要プレイヤーの動向と競争環境の変化

市場の競争構造にも変化が見られます。Amazonは引き続き30%のシェアを維持し、クラウド市場のリーダーであり続けていますが、Microsoft(20%)とGoogle(13%)は高い成長率でシェアを伸ばしており、追い上げを図っています。3社合計でパブリッククラウド市場の68%を占めており、その支配力は依然として強固です。

注目されるのは、第2グループに位置する新興勢力の台頭です。CoreWeaveは、2年前までほぼゼロからのスタートだったにもかかわらず、AIおよびGPUサービスを武器に急成長を遂げ、四半期あたりの売上は10億ドルを突破。クラウド業界の「トップ12」入り目前まで迫っています。Oracle、Databricks、Huaweiも高成長を維持しており、多様な技術や特化領域を武器に差別化を図る企業の存在感が増しています。

地域別の成長動向と市場の分散

クラウドインフラ支出は世界全体で伸び続けていますが、その中でも地理的な差異が見られます。通貨ベースで見ると、ブラジル、インド、オーストラリア、インドネシア、アイルランド、メキシコといった国々が、世界平均を上回る成長率を記録しました。これらの国ではデジタルインフラ整備が急速に進んでおり、現地市場への投資が加速しています。

一方で、依然として最大の市場は米国であり、単独でアジア太平洋地域全体を上回る規模に達しています。米国市場も第2四半期に25%の成長を遂げており、依然としてクラウド採用の中心的存在です。欧州では英国とドイツが市場規模で先行しているものの、成長率の観点ではアイルランド、スペイン、イタリアが目立つ結果となりました。

今後の展望

Synergy Research Groupのチーフアナリストであるジョン・ディンスデール氏は、「クラウド市場は今や四半期あたり1,000億ドル規模に迫っているが、それでも年間成長率は25%前後を維持しており、今後5年間の平均成長率も20%を上回ると予測している」と述べています。

クラウドの拡張は、データ格納や処理能力の強化にとどまらず、AIとの統合によって新たな価値創出へと進化しています。企業にとっては、クラウドをITコストではなく、事業成長の基盤として捉える発想の転換が求められています。また、国・地域別の成長格差が拡大するなかで、各市場ごとの最適なアーキテクチャやオペレーション設計が、今後の競争優位性を左右することになるでしょう。

その一方で、膨張するクラウド需要に応えるためには、電力消費や冷却設備への対応、サプライチェーン管理、さらには持続可能性の確保といった課題も浮上しています。生成AIを中心とした「超高負荷」時代において、クラウド基盤の最適化と持続性の両立は、戦略的かつ技術的な対応が求められています。

スクリーンショット 2025-08-01 20.39.27.png

出典:Synergy Research Group 2025.7.31

Comment(0)