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世界のコロケーション市場、台頭するティア2都市の勢い ―上位10都市が依然4割強を占めるも、新興都市の成長率は2倍以上に

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Synergy Research Groupは2025年8月7日、世界のコロケーション市場に関する最新調査結果を発表しました。

Tier Two Metro Markets are Reshaping the Colocation World

調査によると、北バージニア(米国)や北京、上海、ロンドン、東京、ニューヨークといった上位10都市が世界市場の41%を占める一方で、次の階層にあたる「ティア2都市」が急速に存在感を高めています。上位10都市の年間成長率が平均8%にとどまる中、次の30都市は12%、さらにその下の30都市は17%と、成長率は倍近くに達しています。特にアジア太平洋(APAC)や欧州・中東・アフリカ(EMEA)地域の新興都市、さらには米国の一部地方都市が顕著な伸びを見せており、コロケーション市場の地理的勢力図が大きく塗り替わる兆しが見えています。

今回は、上位市場の現状とティア2市場の急成長要因、そして今後の市場構造の変化について取り上げたいと思います。

上位10都市の安定した支配力

Synergyの調査では、世界のコロケーション市場の41%がわずか10都市に集中していることが明らかになりました。最大の市場は米国・北バージニアで、単独で世界全体の7%を占めます。これに北京、上海、ロンドンがそれぞれ約5%で続き、東京とニューヨークが約4%を占めています。このランキングは前年の分析から大きな変化はなく、経済規模や企業集積度の高さ、ネットワーク接続の豊富さが市場支配を維持する要因となっています。

興味深いのは、上位内での順位変動です。上海がロンドンを追い抜く形で順位を上げており、中国のデジタルインフラ投資が着実に成果を上げていることがうかがえます。また、北バージニアは引き続き米国東海岸におけるインターネットのハブとしての地位を維持し、AIやクラウドのワークロード増加に伴い安定した需要を確保しています。

ティア2都市の急成長と地理的多様化

市場の注目は、次の階層にある都市群に集まりつつあります。ランキング11〜40位の30都市は、平均成長率が12%と上位10都市を上回り、さらに41〜70位の都市群は17%という高い伸びを記録しました。

成長が著しいのは、マレーシア・ジョホール、南アフリカ・ヨハネスブルグ、マレーシア・クアラルンプール、米国・ポートランド、インドネシア・ジャカルタ、インド・ムンバイなどです。これらの都市は、域内の経済発展やデジタル需要の高まりに加え、国際的なクラウド・AI事業者による新規データセンター投資が相次いでいます。

また、ランキング41〜70位の都市では、米国・オースティンやサンアントニオ、ナイジェリア・ラゴス、米国・クインシー、ポーランド・ワルシャワ、アラブ首長国連邦・ドバイなどが高成長を遂げています。特にアフリカや中東、東欧といった地域は、デジタルインフラの整備が急速に進む「未開拓市場」として、今後の成長余地が大きいと評価されています。

成長を支える要因

Synergyの主席アナリスト、ジョン・ディンスデール氏は、「顧客との近接性が依然としてコロケーション市場の主要な成長ドライバーであり、企業や経済活動が集中する都市にデータセンターが集まる傾向は続いている」と指摘します。一方で、成長率の差は市場の将来像を示唆します。上位10都市の平均成長率が8%であるのに対し、20%以上の成長を遂げたティア2都市は17にも上り、需要が多様な地域に拡散していることが明らかになっています。

背景には、クラウドや生成AI、エッジコンピューティングの普及によるトラフィックの分散があります。従来は一部の大規模ハブに集中していたデータ処理やストレージが、ユーザーやデバイスに近い地域で行われるケースが増えており、そのため地域都市へのデータセンター投資が加速しているのです。さらに、各国政府のデータ主権政策や規制も、地域分散型のインフラ整備を後押ししています。

主要企業の動向

世界的なコロケーション市場をリードする企業には、Equinix、Digital Realty、NTT、China Telecom、CyrusOne、GDS、KDDI、Chindataなどが名を連ねます。これらの事業者は、大都市圏の設備拡張にとどまらず、成長著しいティア2市場への積極的な進出を進めています。例えば、日本のNTTやKDDIは東南アジアやインドへの投資を強化し、米国企業も中南米やアフリカ市場を視野に入れた展開を進めています。

このような動きは、今後の競争軸が「規模の大きさ」から「地理的な網羅性」へとシフトする可能性を示しています。顧客企業もまた、災害リスク分散やレイテンシ低減のため、複数都市への分散配置を志向する傾向が強まっています。

今後の展望

今回の調査結果は、世界のコロケーション市場が新たな局面に入っていることを示しています。上位10都市は引き続き市場の中核を担う一方で、急成長するティア2・ティア3都市が市場シェアを着実に拡大していくと見込まれます。この動きは、クラウド、AI、エッジコンピューティングなどの需要増加と、地域経済のデジタル化進展によりさらに加速していくでしょう。

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出典:Synergy Research Group

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