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2026年の世界の低軌道衛星通信サービス市場、2026年に148億ドル市場へ

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ガートナージャパンは2025年7月30日、2026年の世界の低軌道(LEO)衛星通信サービスにおけるエンドユーザー支出が148億ドルに達し、2025年比で24.5%増加するとの予測を発表しました。

LEO衛星は、これまで地上ネットワークが届かない遠隔地向けブロードバンド接続を中心に利用されてきましたが、近年は企業向けや消費者向けの新しい用途が急拡大しています。高速・低遅延という特性を活かし、海事、航空、IoT、災害対応など、従来の衛星通信の枠を超えた分野での活用が広がりつつあります。

Gartner、2026年の世界の低軌道衛星通信サービス支出が148億ドルに達すると予測

今回は、この市場の成長要因、新たなユースケース、直面する課題、そして今後の展望について取り上げます。

急成長するLEO衛星通信市場の現状

LEO衛星は、高度2,000km以下の低軌道を周回することで、地球に近い位置から通信を行い、従来の静止軌道衛星に比べて低遅延かつ高速な通信を実現します。これにより、ブロードバンド未提供地域や海上、空中など、地上ネットワークがカバーできないエリアにおいても安定した接続が可能になります。

市場は急速な拡大局面にあり、世界では20社以上のLEO衛星サービス・プロバイダーが事業を展開。今後数年で4万基以上の衛星が打ち上げられる見込みです。ガートナーの予測では、2026年の支出増加率は、遠隔地のビジネス用途で40.2%、消費者用途で36.4%、IoT接続向けで32%、海事・航空で13.8%、ネットワーク・レジリエンス向上で7.7%と見込まれています。

これらの分野での需要拡大は、単に通信環境を補うだけでなく、新しい産業活動やサービスモデルの創出を促す可能性があります。

4つの主要ユースケースと事例

1. 固定およびモバイル・ブロードバンド・サービス

LEO衛星の初期用途は、遠隔地やブロードバンド未提供地域での接続、または既存サービスの補完です。建設現場や臨時拠点、船舶や航空機でのインターネット接続、災害時の緊急通信、既存回線のバックアップなど、用途は多岐にわたります。

実例として、オーストラリアではLEO衛星と接続されたドローンが自然災害時に4G/5G接続を提供。また、米国の航空会社では、LEO衛星を活用した無料高速Wi-Fiの提供が始まっています。

2. グローバルIoT接続

IoT分野では、広域での資産追跡、農業、エネルギー開発、物流、軍事・セキュリティなどでLEO衛星が活用されています。帯域や遅延の要件が比較的緩い用途に適しており、従来のIoTネットワークを補完または代替する手段となります。

中国では、自動車メーカーが自動運転車のナビゲーション精度向上のため、20基のLEO衛星を打ち上げ、将来的には240基規模の衛星群を構築する計画です。

3. モバイル・ブロードバンド・サービスの補完

LEO衛星は、デバイスへの直接通信(D2D)や5G非地上系ネットワークとの統合により、モバイル通信のカバレッジを広げ、利用者体験を向上させます。

ニュージーランドでは、携帯基地局のカバー外地域(国内の約40%)でテキストメッセージの送受信を可能にするD2Dサービスを開始。クック諸島では、約2年間にわたり衛星経由のメッセージサービスが提供されています。

4. インフラ・バックホール

CSP(通信サービス・プロバイダー)や分散拠点を持つ企業は、LEO衛星を利用して地上ネットワークに依存しない広帯域・高信頼の接続を確保できます。特に、防衛や政府機関は、遠隔地や安全保障上の重要拠点での通信確保に活用しています。

直面する課題と業界の課題認識

急速な普及の一方で、LEO衛星通信は依然として黎明期にあり、解決すべき課題が残ります。国ごとの規制、特定地域における容量不足、ローミング制限、相互運用性の欠如、海事用途の認証不足などが代表的です。

ガートナーのシャザド氏は「CSPはユースケースごとに導入戦略を評価することが重要」と指摘します。特にミッションクリティカルな分野では、安定性・安全性の担保が市場拡大の前提条件となります。

日本市場と次世代ネットワークとの融合

日本でもLEO衛星の活用は進展しています。通信事業者は、スマートフォンとLEO衛星を直接接続するサービスを商用化し、従来カバーできなかった地域での利用を可能にしました。

ガートナーの瀧石浩生氏は「5G、そして2030年頃に商用化が見込まれる6Gでは、LEO衛星との融合への期待が高まっている」と述べます。こうした統合は、僻地における消費者・企業ニーズに応えるだけでなく、新たな収益源となる可能性があります。

今後の展望

LEO衛星通信市場は、今後5年で大幅な成長が続くと予測されます。大量の衛星打ち上げ計画と新規参入企業の増加が競争を活性化させ、価格低下やサービス多様化を促す見通しです。

特に、災害対応・防災インフラとの連携や自動運転や次世代交通システムの通信基盤、グローバルIoTとAI解析の融合 といった分野ではLEO衛星が不可欠な存在になるでしょう。

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出典:ガートナー 2025.7

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