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IaaS市場は2024年は22.5%成長 AIインフラ需要が市場を後押し

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米ガートナーは2025年8月6日、2024年の世界IaaS(Infrastructure as a Service)パブリッククラウドサービス市場が前年比22.5%増の1,717億5,000万ドルに達したと発表しました。

Gartner Says Worldwide IaaS Public Cloud Services Market Grew 22.5% in 2024

成長の背景には、生成AIやAIエージェントの活用を支えるAIインフラ需要の急拡大と、企業によるクラウド移行・モダナイゼーションの加速があります。上位5社の市場シェアは8割を超え、アマゾン、マイクロソフト、グーグル、アリババ、ファーウェイが順位を維持しました。

企業は柔軟性やレジリエンス、性能最適化を求め、複数クラウドの活用やクラウドネイティブアプリケーションの展開を進めています。AI最適化型IaaSの動向やGPU as a Service(GPUaaS)の台頭も、市場の成長を後押ししています。

今回は、市場成長の要因、企業の利用動向、主要プレイヤーの戦略、そして今後の展望について取り上げます。

AIインフラ需要が牽引する成長

2024年のIaaS市場は前年比22.5%増と高い成長率を記録しました。その主因は、AIモデルの学習や推論に必要な大規模計算リソースへの需要増です。生成AIの商用利用が本格化し、各企業がAIプロジェクトを推進する中で、高性能GPUや高速ネットワークを備えたクラウドインフラの確保が急務となっています。

ガートナーのハーディープ・シン主席アナリストは、「企業はAIのための複数プラットフォーム活用と既存ワークロードのクラウド移行によるモダナイゼーションを優先している」と指摘します。特にデータ主権やデータ所在地の柔軟性を求める声が強まり、クラウド導入は一挙ではなく段階的に進められています。

クラウド移行・モダナイゼーションの加速

AI需要に加え、既存システムの刷新が市場成長を後押ししています。多くの企業がレガシーシステムの保守コスト削減や運用効率化を目的に、クラウド移行を進めています。さらに、クラウドネイティブ技術の採用により、複数環境でのアプリケーション展開が容易になり、事業スピードの向上にもつながっています。

こうした動きは製造、金融、小売といった産業全般に広がっており、国内外のクラウド事業者が各業界に特化したサービスを強化する要因となっています。

GPUaaSの台頭と新興勢力

市場では、ハイパースケーラー以外の事業者によるAI最適化型IaaSやGPUaaSも存在感を増しています。これらの新興プロバイダーは、高性能計算リソースをオンデマンドで提供し、AIトレーニングや推論に必要な即時キャパシティを柔軟に供給します。

まだ市場規模は小さいものの、AI関連ワークロードが急増する中で、こうしたサービスは大規模案件や短期集中型プロジェクトでの需要を着実に取り込みつつあります。

上位5社が市場を支配

2024年の市場シェアでは、アマゾンが37.7%で首位を維持し、売上は648億ドルに達しました。マイクロソフトは23.9%(410億ドル)で続き、前年比27.6%の高成長を記録。グーグルは35.4%増と最も高い伸び率で9.0%にシェアを拡大しました。アリババとファーウェイもそれぞれ11.8%、18.4%の成長を実現しています。

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出典:Gartner 2025.8

今後の展望

ガートナーは、今後もAIインフラ需要がIaaS市場の主要成長ドライバーであり続けると予測しています。生成AIの高度化やマルチモーダルAIの普及により、より高性能で分散型のクラウド基盤が求められるでしょう。

一方、GPUリソースの逼迫や電力供給の制約、データ主権規制の強化など、解決すべき課題も残ります。クラウド事業者は、電力効率の高いデータセンター設計、再生可能エネルギー活用、リージョン拡充など、持続可能性とパフォーマンスの両立を図っていくことが求められています。

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