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オープンデータ社会(18)日本におけるビッグデータ関連政策

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政府では、2012年以降ビッグデータに関する政策を進めてきていますが、これまで膨大なデータの処理や技術に関する様々な取り組みが行われています。

文部科学省の2005年度から2010年までに取り組んできた「情報爆発時代に向けた新しい IT 基盤技術の研究(info-plosion)」や経済産業省による「情報大航海プロジェクト」、独立行政法人日本学術振興会による最先端研究開発支援プログラム(FIRST)の「超巨大データベース時代に向けた最高速データベースエンジンの開発と当該エンジンを核とする戦略的社会サービスの実証・評価」などの取り組みが行われています。

2012年からの政府におけるビッグデータに関する政策をまとめてみたいと思います。

IT戦略本部

高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)は2012年7月4日、新たな情報通信技術戦略 工程表の改訂を公表しました。

クラウドコンピューティングサービスの競争力確保等工程表では、

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http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dai57/siryou1.pdf

ビッグデータビジネスの創出に向けたM2M通信技術などの研究開発・標準化などビッグデータ利活用による新事業創出に向けた環境整備を実施するとしています。

また、2012年7月31日に公表した「日本再生戦略」の科学技術イノベーション・情報通信戦略では、2015年度までにビッグデータの利活用等により、新たに約2兆円規模の市場創出、2020年までには約10兆円規模の関連市場の創出することを目標として掲げています。

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http://www.npu.go.jp/policy/pdf/20120731/20120731.pdf
を元に筆者加工

以下、各省庁の取り組みについて整理してみましょう。

総務省の取り組み

総務省の情報通信審議会ICT基本戦略ボードのビッグデータの活用に関するアドホックグループは2012年5月17日、「ビッグデータの活用のあり方」をとりまとめました。

センサーデータにおいては、データの収集等を可能とするセンサーの小型化・低価格化とセンサーにより収集したデータを送信する通信モジュールの低価格化が進み、センサーを利用する契約者数も増加傾向にあるといいます。

センサーの活用においては、現在はネットワークによる情報収集・活用が中心となっていますが、今後は、情報分析、情報配信、自動制御や他システムと連動した高度な制御へと進み、スマートシティやスマートコミュニティのような社会インフラの基盤としての活用が期待されています。

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出所:ビッグデータの活用のあり方 2012.5.17

また、自動販売機やエレベータ、プラント設備、橋梁など領域において、M2Mのサービスが提供されています。

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特に、橋梁などの構造物の劣化のモニタリングにおいては、構造物のひび割れや、異常な歪みなどの危険を検知することで、事前のメンテナンスと事故を防止することが可能となります。

公共分野におけるビッグデータ活用の課題と対応

ビッグデータの利活用においては、取り扱いに際して順守すべき法令として、個人情報保護法制、プライバシー権、著作権法などを挙げ「成果物はビッグデータをデータベース化したものと、その解析結果とに分けて検討する」ことの必要性にも触れられています。

公共分野におけるデータの流通・連携においては、震災時などにおいて、自動的に、様々なデータがアップされサーバ間で連携や加工され、必要な情報を関係者に提供するための公共的なプラットフォームの構築のあり方。また、国民IDの将来的な民間利用等のIDによる個人に関する情報の紐付けのあり方などをあげています。

データの利活用においては、オープンデータで検討されているように公共データにおけるデータの所在の明確化やデータ取得時の形式などのプロトコルのあり方を整備し、社会インフラや医療分野などの新産業の創出やビジネス領域の拡大をもたらす分野への投資を促進するためのデータ融合をもたらすための仕組みの検討の必要性をあげています。

こういった状況を踏まえ、政府のICT関連政策では、政府や自治体、民間事業者などが、センサやM2M通信を通じ生成・収集等される多種多量のデータについて、社会全体で共有可能な知識や情報の創発が促進されるよう生成・収集・蓄積・公開・流通・連携をさせる仕組みを構築することで、社会的課題の解決や経済活性化の実現に寄与する方針を示しています。

総務省では以下の7つの課題解決に向けた取り組みをあげています。

  1. 多様な分野において閉じた形で保有されているデータについて、オープンガバメントの推進等官民におけるオープンデータ化、街づくりや防災等への活用等横断的活用のための環境整備の在り方
  2. リアルタイムで活用するビッグデータについて、センサ等から生成されるデータを安心・安全に収集・解析・流通等するための基盤技術の研究開発・標準化の在り方
  3. 技術やビジネス等の様々な分野における知識や能力等を備えたビッグデータの活用に関する人材について、産学官のプロジェクトを通じた育成等による確保の在り方
  4. ビッグデータビジネスの創出に寄与するM2M(人が介在せず、ネットワークに繋がれた機器同士が相互に情報交換等を行う機器間通信)の普及促進の在り方
  5. 正確性の確保等のために多様な用途への転用が制限されているデータや既存制度の保護対象とならないため整備が進まないデータ等について、その活用を阻む規制・制度の在り方
  6. 様々な業種の民間事業者、研究機関、学識経験者、行政機関等から広く構成され、データ資源の蓄積等を通じて、ビッグデータの活用について国内の普及・展開を図るための推進体制の在り方
  7. 国際的な取組事例等の共有等を図るための外国政府等との意見交換の在り方や、ビッグデータの活用による経済価値の見える化等のための計測手法の在り方

ICT生活資源対策会議

政府は、公共分野の生活資源におけるビッグデータ活用の検討も始めています。総務省は2012年12月6日、「ICT生活資源対策会議」を開催しています。

本対策会議を開催した背景には、エネルギー消費量の急増や鉱物・水不足の深刻化、廃棄物発生量の急増などの資源をめぐる様々な課題に直面しており、ICTを活用した解決策についての検討を進めています。

これらの課題解決には、センサデータやM2M通信などを通じたデータ収集と分析などによる対応が一つのポイントとなっていくでしょう。

ICT成長戦略とデータ活用

総務省は2012年2月22日、第一回ICT成長戦略会議を開催しています。ICTを日本経済の成長と国際社会への貢献の切り札として活用する方策などを様々な角度から検討し、2013年5月をめそに5月をメドに課題ごとの工程表や支援メニューをつくり、6月にまとめる政府全体の成長戦略に盛り込む予定となっています。

戦略の3つの柱は、以下のとおりとなっています。
(1)社会実装戦略(くらしを変える)
(2)新産業創出戦略(新しいモノをつくる)
(3)研究開発戦略(世界に貢献する)

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http://www.soumu.go.jp/main_content/000205624.pdf

膨大なパーソナルデータの活用による医療や教育産業の活性化、センサを使った資源探索技術の確立、医療分野での大人数の病歴や症状などのデータを分析や統計への活用などといったように、データを活用した産業の活性化や地域社会の解決に向けた方向性が示されています。

文部科学省 

文部科学省は2012年7月4日、「アカデミッククラウドに関する検討会」において「ビッグデータ時代におけるアカデミアの挑戦~アカデミッククラウドに関する検討会 提言」を公表しています。

本提言では、ビッグデータの持つ可能性を最大化するため、データ科学の高度化のための情報科学技術分野の研究開発やアカデミッククラウド環境構築のためのシステム研究などのビッグデータに関する研究開発、研究開発法人等におけるビッグデータ活用モデルの構築に関する事業について、分野間連携、国際連携、人材育成の観点に十分留意しつつ、早急に開始する必要性を示しています。

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http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shinkou/027/gaiyou/__icsFiles/afieldfile/2012/07/10/1323376_1_2.pdf

経済産業省

経済産業省は2012年6月1日、IT融合フォーラム有識者会議を開催し、2012年6月18日には、「IT融合フォーラム有識者会議 Kick-Off Statement」を公表しています。「Kick-Off Statement の概要」は以下のとおりとなっています。

・日本が目指す将来像
 「Evidence Based Society」という新しい社会像の実現
・公共データに関するアクションプラン
 公共データ公開の義務化(Open by Default)
 データに関するポリシーの策定、世界への発信
・事業活動に伴うデータに関するアクションプラン
 データ活用促進のためのインセンティブ設計

本フォーラムでは、多種多様なモノがネットワーク化された世界(「IOT(Internet of Things)」の世界)では、あらゆる産業分野(エネルギー、医療・ヘルスケア、自動車やロボット等の製造業、農業等)において、膨大なデータ(電力使用情報、医療・健康情報、位置情報等)をいかに活用するかが競争上重要になってきているとし、本質的には、データ量の多寡を問わず、いかにデータから価値を生み出し、新産業の創出や社会課題の解決に繋げるかというデータからの価値創出に重点を置いています。

ITが多くの産業に広く浸透すればするほど、広義のIT産業(=IT融合新産業)の裾野は広がり、そこから発生するデータも膨大になり、エネルギー×自動車×交通システム、医療・ヘルスケア×農業、ロボット×小売×都市計画といったように、IT・データを媒介とした 異分野融合による新産業の創出を目指しています。

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http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/shoujo/it_yugo_forum/pdf/001_04_00.pdf

本フォーラムでは、様々な分野で多様なデータを活用して生み出される新たなビジネス、産業、社会像のあり方、そして、少子高齢化や財政制約など、課題先進国である日本において、データを活用して、様々な社会課題を効果的に解決することが、今後同様の課題に直面する世界各国にどのように貢献しうるかといったことに主眼を起き、議論を進めていくこととしています。

本フォーラムでは、公共データワーキンググループ、そして、パーソナルデータワーキンググループが設置されており、それぞれ検討を進めています。
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/mono_info_service.html#it_yugo_forum

経済産業省では、「平成24年度我が国情報経済社会における基盤整備(「データ・エコノミー社会」を見据えたデータ流通環境整備に関する調査事業) 」を募集し、受託した一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)において、「データ・エコノミー社会」調査チームのプロジェクトを作っています。本プロジェクトでは、データと実態の価値が限りなく接近する「データ・エコノミー社会」の到来を想定して、そこで起きることや、その影響などについて主にビジネス分野にフォーカスして調査を進めています。

まとめ

ビッグデータは、医療や交通情報など膨大なデータを民間事業者が活用することで、新たな産業の創出や地域社会の課題解決の活用への期待が高まっています。一方で、プライバシーの扱いや標準化の取り組みや研究開発など、政府の政策的な支援を必要とする領域も多くあります。

公共分野における公共データの公開やビッグデータなどの情報の取り扱いなどは、民間企業だけではビジネスを展開することは難しく、産官学連携によるデータ活用の仕組みをつくり、持続的なビジネスへとつながるための取り組みを加速させていく必要があるでしょう。

 

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