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オープンデータ社会(56)新たなIT戦略におけるビッグデータ・オープンデータの位置づけ

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高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)は2013年5月24日、第⼆次安倍内閣の「新たなIT戦略」として、『「世界最先端IT国家創造」宣言(案) 』を公表しました。


http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dai61/siryou2-1.pdf

現在の日本では、長期に低迷する景気や経済成⻑率の鈍化による国際的地位の後退、少⼦⾼齢化や社会保障給付費増⼤、社会インフラの老朽化、さらに東日本大震災における震災復興など、多くの課題を抱える課題先進国となっています。

こういった現状の閉塞する打破し、再⽣する⽇本を掲げ、持続的な成⻑と発展させるための「成⻑戦略」の柱として、ITを成⻑エンジンとして活⽤していくことの重要性が示されています。

IT戦略本部では、世界最⾼⽔準のIT利活⽤社会の実現に向けて、過去の反省を踏まえ、合的に取り纏めていく司令塔として「IT戦略本部」の呼称を「IT総合戦略本部」とし、政府CIOが司令塔機能を担い、省庁の縦割りを打破して政府全体を横串で通し、IT施策の推進や政策課題への取組んでいくことが必要不可欠としています。

本戦略では「ヒト」、「モノ」、「カネ」と並んで「情報資源」は新たな経営資源と位置づけ、「情報資源」の活用こそが経済成長をもたらす鍵となり、課題解決にもつながるとしています。ビッグデータやオープンデータによる分野・領域を超えた情報資源の収集・蓄積・融合・解析・活用により、新たな付加価値を創造し、変革のスピードを向上させ、産業構造・社会生活において新たなイノベーションを可能とする社会の構築につなげる必要性を示しています。

IT利活用社会実現のための3つの柱

世界最⾼⽔準のIT利活⽤社会の実現と成果の国際展開を⽬標とし、以下の3項⽬を柱として取り組んでいくことを示しています。

1.⾰新的な新産業・新サービスの創出と全産業の成⻑を促進する社会の実現2.健康で安⼼して快適に⽣活できる、世界⼀安全で災害に強い社会
3.公共サービスがワンストップで誰でもどこでもいつでも受けられる社会の実現

1.⾰新的な新産業・新サービスの創出と全産業の成⻑を促進する社会の実現
○公共データの⺠間開放(オープンデータ)の推進、ビッグデータの利活⽤推進(パーソナルデータの流通・促進等)
○農業・周辺産業の⾼度化・知識産業化、○オープンイノベーションの推進等
○地域(離島を含む。)の活性化、○次世代放送サービスの実現による映像産業分野の新事業の創出

2.健康で安⼼して快適に⽣活できる、世界⼀安全で災害に強い社会
○健康⻑寿社会の実現、○世界⼀安全で災害に強い社会の実現
○効率的・安定的なエネルギーマネジメントの実現、○世界で最も安全で環境にやさしく経済的な道路交通社会の実現
○雇⽤形態の多様化とワークライフバランスの実現

3.公共サービスがワンストップで誰でもどこでもいつでも受けられる社会の実現
○利便性の⾼い電⼦⾏政サービスの提供、○国・地⽅を通じた⾏政情報システムの改⾰
○政府におけるITガバナンスの強化

公共データの⺠間開放(オープンデータ)とビッグデータの利活⽤推進

3つの柱において、最も最初に記載されているのが、公共データの⺠間開放(オープンデータ)の推進とビッグデータの利活⽤推進(パーソナルデータの流通・促進など)です。

オープンなプラットフォームを通じて、地理空間情報、防災・減災情報、調達情報、統計情報などの信頼性の高い行政機関が保有する公共データを公開し、民間企業や個人が保有する地理空間情報などのデータと自由に組み合わせて利活用することで、新産業・新サービスを創出する社会を実現することを目指しています。

さらに、オープンデータと顧客情報や個人のライフログ情報などの「パーソナルデータ」や社会や市場に存在する「ビッグデータ」を相互に連携させ活用を推進することで、新ビジネスや官民協働の新サービスを創出し、企業活動、消費者行動や社会生活にもイノベーションを創出する社会の実現も目指しています。

また、農業や医療などのITの利活用が遅れている産業分野を含め、データを活用した新たなビジネスモデルの構築など、産業が有する潜在能力を強化し、成長を促進する社会を実現するとしています。

オープンデータ推進のための具体的な取り組み

公共データに関する民間利用のニーズは高いものの、公開データの二次利用に制約があり、機械判読が困難なデータが多く、データの有無や所在がわかりにくく、多くのデータが公開されていないなど、公共データが十分に利用されていない環境にあるという現状があります。

こういった状況を踏まえ、公共データの民間開放であるオープンデータを推進し、公共データを自由に組み合わせて利活用が可能な環境整備を早急に推進していく必要性を示しています。

本戦略では、公共データはオープン化を原則とする「open by default」の発想転換を行い、政府や独立行政法人、地方公共団体などが保有する多様で膨大な公共データを、機械判読に適したデータ形式で、営利目的も含め自由な編集・加工等を認める利用ルールの下、インターネットを通じて公開する方針を示しています。

このために、電子行政オープンデータ戦略に基づくロードマップを策定・公表し、2013 年度からは、公共データの自由な二次利用を認める利用ルールの見直しを行い、機械判読に適した国際標準データ形式での公開の拡大に取り組んでいくとしています。

また、2013年度中に各府省が公開する公共データの案内や横断的検索を可能とするデータカタログサイトの試行版を立ち上げ、2014 年度から本格運用を実施するとしています。併せて、データの組み合わせや横断的利用を容易とする共通の語彙(ボキャブラリ)の基盤構築にも取り組んでいくとしています。

2014 年度及び 2015 年度の 2 年間をオープンデータ推進のための集中取組期間と位置づけ、2015年度末には、他の先進国と同⽔準の公開内容を実現する目標を設定しています。

オープンデータの利用促進にあたっては、コンテストなどのを実施し、利用ニーズの発掘・喚起、利活用モデルの構築・展開やデータを活用する高度な人材育成にも積極的に取り組み、新ビジネス・新サービスの創出を支援するとしています。

今回の戦略では、取り組みの進捗状況や成果を評価できるよう、可能な限り定量的な評価指標(KPI(重要業績評価指標:Key Performance Indicator))を示しており、オープンデータの推進にあたっては以下のKPIを示しています。

【KPI】
・各府省のオープンデータ達成状況
・データカタログに掲載されるデータセットの数、アクセス数・ダウンロード数 ・オープンデータを活用して開発されたアプリケーションの数

ビッグデータ利活用促進のための具体的な取り組み

「ビッグデータ」の利活用では、付加価値を生み出す新事業・新サービス創出を強力に推進することを目指しています。中でも利用価値が高いと期待されている、個人の行動・状態などに関するデータである「パーソナルデータ」の取扱いについては、その利活用を円滑に進めるため、個人情報およびプライバシーの保護との両立を可能とする事業環境を整備していくとしています。

「パーソナルデータ」の取扱いについては、IT総合戦略本部に新たな検討組織を設置し、パーソナルデータの利活用のルールを明確化した上での個⼈情報保護ガイドラインの⾒直しや、同意取得⼿続きの標準化等の取組みを年内の早い時期に着⼿するとしています。また、第三者機関の設置を含む新たな法的措置も視野に⼊れた制度⾒直し⽅針を年内に策定予定となっています。

「ビッグデータ」の利活用を促進するため、データやネットワークの安全性・信頼性の向上や相互接続性の確保、大規模データの蓄積・処理技術の高度化など、共通的技術の早期確立を図るとともに新ビジネス・新サービスの創出につながる新たなデータ利活用技術の研究開発及びその活用を推進する。

【KPI】
・パーソナルデータ利活用に関連した制度見直しの達成状況
・ビッグデータ活用により創出された新事業・新サービスの合計額

各分野におけるデータ活用

本戦略では、データというキーワードが100を越えるなど、様々な分野において、データを活用した行政サービスの効率化や社会インフラの維持、新産業の創出などの目標を設定しています。

医療分野では、保険者や地方自治体や企業が健診データやレセプトデータなどの医療・健康情報などの各種データから健康状況等を把握・分析し、データに基づく具体的な保健指導や、医療情報データベースを活用した医薬品などの安全対策に関する取り組みを推進していくとしています。

防災分野では、一部の省庁の共有にとどまっている地理空間情報をオープンデータ化し、官民連携によりインターネットを通じて情報提供を行う行うことで、地理空間情報や災害関連情報を利活用できる仕組みを構築していくとしています。

老朽化していく社会インフラの維持管理においては、社会インフラの維持管理・更新に必要なデータを体系的に把握し蓄積するため、2013 年度から各施設の現況などのデータのデータベース化を推進していくとしています。これらのデータを統一的に蓄積し管理するプラットフォームを構築し、2014年度から一部運用を開始し、2015年度以降、機能強化を図り本格運用へ移行していくとしています。

交通分野では、車と車、道路と車、車と人などが相互にタイムリーな情報交換を実現できるように、地図情報や車・人の位置情報などの地理空間情報、蓄積データを活用するといったITS(Intelligent Transport Systems)技術の活用により、交通事故の危険や交通渋滞を回避し、安全で、環境にやさしく、経済的な道路交通社会をの実現を目指しています。

データ活用のための規制改革と環境整備

政府では、時代の変化に合わせ、デジタル社会を前提としたITやデータの活用を推進していくために、IT利活用を推進するための法的措置(IT利活用を推進するための「基本法」)の必要性についても検討していくとしています。

オープンデータやビッグデータの利活用を推進するためのデータ利活用環境整備を行うため、IT総合戦略本部の下に、新たな検討組織を設置し、データの活用と個人情報及びプライバシーの保護との両立に配慮したデータ利活用ルールの策定等を年内できるだけ早期に進めていくとしています。また、監視・監督、苦情・紛争処理機能を有する第三者機関の設置を含む、新たな法的措置も視野に入れた制度見直し方針を年内に策定するとしています。

 

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