アジアで拡大するクラウド投資、生成AIで変わる競争軸
IDCは2025年7月16日、「Asia/Pacific (Excluding Japan) Whole Cloud Services Forecast, 2025-2028」を発表しました。このレポートでは、アジア太平洋地域(日本を除く)におけるクラウド市場の全体像と、2028年までの成長予測が示されました。
IDC Forecasts 22.2% CAGR for Asia/Pacific Whole Cloud Market, Hitting $471.2B by 2028
背景には、2024年を通じて加速したマルチクラウドやハイブリッドクラウドの導入、そして生成AIの急速な拡大があります。中国、オーストラリア、韓国、シンガポールといった先進市場に加え、インド、マレーシア、インドネシアなどの高成長国も巻き込みながら、アジア太平洋地域全体でAI活用と次世代ネットワーク整備が急速に進んでいます。
今回は、クラウド支出の動向、成長ドライバーとしての生成AI、そして今後の展望について取り上げたいと思います。
クラウド関連支出は2028年に4712億ドル規模へ
IDCによると、アジア太平洋地域(日本を除く)におけるクラウド関連支出は、2025年の約3,000億ドルから年平均成長率(CAGR)22.2%で成長し、2028年には4,712億ドルに達すると予測されています。
市場は以下の3つのサブカテゴリに分類され、それぞれが堅調な成長を示しています。
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パブリック/専用クラウドサービス(Cloud as a Service):年平均成長率20.2%
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クラウド関連サービス(Cloud-related Services):年平均成長率16.1%
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クラウド構築を支えるハードウェア・ソフトウェア・サポート:年平均成長率28%
2028年にはクラウドネイティブなIT環境の整備がさらに進み、特に生成AIに対応するためのインフラ拡充が投資を牽引すると見られています。
出典:IDC 2025.7
生成AIがクラウド市場を再定義
生成AIの台頭は、クラウドの役割を単なるインフラ提供から「価値創出の基盤」へと変化させています。従来、クラウドは業務効率化やコスト削減のための手段として捉えられていましたが、現在ではAIの訓練・実行環境として不可欠な基盤となりつつあります。
特に、生成AIが要求する大規模かつリアルタイムのデータ処理には、柔軟かつ拡張性の高いクラウド環境が必要です。企業はモデルの開発、デプロイ、保守までを包括的にサポートする「AI対応クラウドアーキテクチャ」の構築に注力し始めています。
IDCアジア太平洋のシニアリサーチアナリストであるShouvik Nag氏は、「クラウドは今やAIを支える"基盤技術"であり、クラウドの成熟度がビジネス価値の源泉となっている」と指摘しています。
デジタル基盤強化に向けた官民の取り組み
政府と民間企業は共に、5G、エッジコンピューティング、グリーンデータセンターといったデジタル基盤への投資を加速させています。特に、東南アジア諸国では経済成長と都市化の進展を背景に、次世代インフラの整備が国家戦略に位置づけられており、クラウドの役割はますます大きくなっています。
経済・地政学的な不確実性が残る中でも、マネージドクラウドやプロフェッショナルサービスへの需要は堅調に拡大しており、クラウドが「不確実性に対する耐性のある基盤」として再評価されています。