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国内ハイパーコンバージドシステム市場、年平均4.1%成長へ ― 仮想化基盤刷新と「プライベートAI」需要が牽引 ―

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IDC Japanは2025年7月22日、「国内ハイパーコンバージドシステム市場予測」を発表しました。IDCによると、2024年から2029年にかけての市場支出額の年平均成長率(CAGR)は4.1%、2029年には731億2,200万円に達すると見込まれています。

背景には、主要仮想化ソフトウェアのライセンスやパートナー制度の変更による仮想化環境のモダナイゼーション需要、さらには組織固有データを活用した「プライベートAI」基盤としての新たな利用拡大があります。

特に金融・官公庁など大規模ユーザーと、中小規模ユーザーとでは機能・コスト・信頼性に対する要求が異なり、選定基準や移行方針も多様化しています。IDCは、AIワークロードのオンプレミス・エッジ展開が加速する中、ハイパーコンバージドシステムが統合管理と自律運用を可能にする有力な基盤としての地位を強めると分析しています。

今回は市場成長の背景、用途の進化、利用動向の変化、そして将来展望について取り上げます。

仮想化環境刷新が促す市場の安定成長

国内ハイパーコンバージドシステム市場は、主要仮想化ソフトウェアのライセンス体系やパートナー制度の変更を契機に、仮想化環境の見直しが進んでいます。特にサポート終了や料金体系変更といった外部要因が、更新・移行の判断を早める動きにつながっています。

金融や官公庁などの大規模ユーザーは、高可用性・冗長性・堅牢なセキュリティといった要件を重視する一方、中小規模のユーザーは導入・運用コストや移行の容易さを重視する傾向があります。これらのニーズの違いは、産業分野や企業規模別の市場動向に直結しており、IDCの予測にも反映されています。

注目すべきは、仮想化ソフトウェアを変更してもハイパーコンバージドシステムの採用が継続している点です。統合管理の容易さや拡張性は依然として魅力であり、刷新需要は今後も市場成長を下支えする見通しです。

「プライベートAI」基盤としての役割拡大

生成AIやエージェンティックAIの台頭により、AIワークロードはパブリッククラウド一辺倒からオンプレミスやエッジへの分散展開へと広がっています。この変化は、企業や官公庁が自らのデータを厳密に管理しながらAIを活用する「プライベートAI」構想を後押ししています。

ハイパーコンバージドシステムは、コンテナプラットフォームや仮想化環境を統合し、パブリッククラウドも含めたハイブリッド構成での一元管理を実現できます。加えて、自律的な運用機能により、AIインフラの多様化や複雑化に対応可能です。この特性は、専有型AI環境の構築を目指す組織にとって魅力的であり、今後の需要拡大が期待されています。

エッジ・オンプレミス連携による新しい導入モデル

AI推論処理の低遅延化やデータ主権確保のニーズが高まり、エッジ拠点やオンプレミス環境へのAI展開が加速しています。ハイパーコンバージドシステムは、従来のデータセンターだけでなく、工場・店舗・自治体拠点など多様な場所に設置されるケースが増えています。

このモデルでは、現場での推論処理と中央システムでの学習・統合分析を組み合わせる分散型アーキテクチャが採用される傾向があります。こうした構成は、セキュリティやリアルタイム性を確保しつつ、データ転送コストを抑制できる点で評価されています。

市場予測の詳細と成長の持続要因

IDCのレポート「国内ハイパーコンバージドシステム市場予測、2025年~2029年」によれば、2024年から2029年のCAGRは4.1%、2029年の市場規模は731億2,200万円に達する見通しです。

成長を支える要因としては、仮想化基盤の更改需要の継続や「プライベートAI」基盤としての利用拡大、エッジとオンプレミスの連携強化、自律運用による管理負荷軽減 が挙げられます。

特に、エージェンティックAIの普及は、AIインフラの多様化を加速し、ハイパーコンバージドシステムの採用を後押しする可能性があります。

今後の展望

今後5年間、国内ハイパーコンバージドシステム市場は安定した成長を維持すると見込まれます。短期的には仮想化環境刷新の需要が堅調であり、中長期的にはAIワークロード分散の潮流が市場を押し上げるでしょう。特に「プライベートAI」への関心は、セキュリティ・データ主権・法規制対応を重視する産業分野で高まりを見せています。

また、エッジとクラウドをシームレスに接続し、一元管理を可能にするハイパーコンバージドシステムの価値は、産業構造のデジタル化が進む中でさらに高まります。ただし、導入に際しては、初期投資負担や人材不足といった課題も残されており、ベンダーはソリューションの柔軟性向上や導入支援体制の強化が求められるでしょう。

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出典:IDC Japan 2025.7

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