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オープンデータ社会(39)医療費抑制とデータ活用

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麻生太郎副総理兼財務相は、2013年4月24日夜の都内で開かれた会合で、医療費負担について、

生まれつき体が弱いとか、けがをしたとかは別の話だ

とした上で、

食いたいだけ食って、飲みたいだけ飲んで、糖尿病になって病院に入っているやつの医療費はおれたちが払っている。公平ではない。無性に腹が立つ

とコメントしています(関連記事)。

また、医療費の抑制策としては、病院に通わずに医療費がかからなかった高齢者に対して、

「『10万円をあげる』と言ったら、(全体の)医療費は下がる。それが最もカネがかからない方法だ」

と、健康管理をしている人に対してはインセンティブを与える必要性についての意見も示しています。

この一連の麻生副総理兼財務相のコメントは、ソーシャルメディアなどでも話題となりました。

増え続ける国民医療費

厚生労働省が発表した「国民医療費の概況」によると、2010年度の国民医療費は37兆4202億円となっており、前年度の36兆67億円に比べ1兆4135億円から3.9%の増加となっています。人口一人当たりの国民医療費は29万2200円で、前年度の28万2400円に比べ3.5%増加しています。

image

2010年 国民医療費・対国内総生産及び対国民所得比率の年次推移
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/10/dl/kekka.pdf

国民医療費の国内総生産(GDP)に対する比率は7.81%(前年度7.60%)、国民所得(NI)に対する比率は10.71%(前年度10.51%)となっているように、高齢化がさらに進めば、さらに医療費は増えていくことになるでしょう。

医療費抑制のためのインセンティブ

この先、医療費が伸び続けることになれば、社会保障財政にさらなる大きな打撃となり、医療費抑制のための対応をしていくことが大きな課題となります。

麻生氏のコメントは、この医療費の増加に対して、健康管理ができず病院を通い続けている人に対して医療負担を増やし、健康管理をしっかりしている人に対しては10万円を還元するといったように特典を与えることで、医療費を抑制していく必要性を示しているといえるでしょう。

一方、米国では、2010年の医療費が合計合計2.6兆ドルと、日本のGDPの2倍以上となるGDPの約18%にも達しており、医療費の抑制が大きな課題となっています

そのため、米国では2010年3月に「患者保護および医療費負担適正化法 Patient Protection and Affordable Care Act:PPACA)」を成立させ、健康管理に取り組み医療費を抑制しつつ、医療サービスの向上につなげたケア機関に対して、保険機関よりインセンティブが共有・分配が認めれるシェアードセービング(節減共有)の仕組みが政策的に進められています。

自動車保険と同様に交通事故にあわずに安全運転をしているドライバーに対しては保険料を下げるといったように、健康管理を心がけている人に対しては、費用を還元するといった取り組みが医療費抑制を進めていく上で重要となっています。

健康管理、医療予防のためのデータ活用

医療分野においては、病院になってから治療するのではなく、医療費用の負担軽減に向けて、病気にならないように予防するという取り組みに大きく転換していく必要があります。

これらの予防医療に向けた取り組みの一つにデータ活用も重要となっています。「健康・医療データの活用」などでもご紹介させていただきましたが、予防医療のための患者の健診・医療データ分析などが進められています。

また、個人一人一人が、生活習慣病予防の促進のために、自分自身の健康管理をデータを通じて自分自身の健康状態を常時見える化していくことも大切になっており、民間サービスも登場しています。

NTTレゾナントは2012年12月からNFC(Near Field Communication)規格に対応したスマートフォンアプリのクラウド型健康管理サービス「goo からだログ bodycloud」提供をしました。このサービスでは、NFC対応の活動量計・血圧計・体組成計にスマートフォンをかざすことで、おサイフケータイ/NFCを通じて測定値を端末に記録することができ、容易に血圧や体重などの測定データを簡単に管理できるようになります。

この測定データは、医療機器連携の標準化団体であるコンティニュア・ヘルス・アライアンスの規格に準拠したフォーマットを使用しているために、将来は医療機関のシステムなどとのシームレスな連携が可能となります。

政府や自治体が公開している医療データ

政府や自治体も医療データを公開しており、これらのデータを活用することで予防医療や医療サービスの向上につなげてことができるでしょう。

たとえば、15万人以上の都市で高齢化率の最も高い呉市では、レセプトデータベースを活用し、ジェネリック医薬品の使用促進通知の実施、頻回受診者への訪問指導などを実施することで年間薬剤費を3.5億円削減しています。

厚生労働省は、患者一人あたりの診察・治療時間、待ち時間、通院回数などの統計データ、主傷病・副傷病別の統計データ、受療傷病数に関する統計データといった「患者情報」に関する統計データを保有しています。

また、自治体では疾患別患者データや差額ベッドなどの医療機関情報を保有しています。介護関連のデータでは、要介護別・年齢別・性別ごとの被保険者数(町丁目ごとのデータ)などを保有しています。

これらの公開された医療や介護データと、地域の人口データや国勢調査などのデータと組み合わせることで、民間事業者においても、地域に応じた医療サービスや介護サービスを提供し、医療や介護サービスの向上と医療費抑制につながっていくことが期待されるところです。

 

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