APeJCのAI市場は年率52%成長へ クラウドと生成AIが原動力
IDCは2025年6月17日、最新調査「Worldwide Semiannual Software Tracker(2024年下期版)」を発表しました。
Asia Pacific* AI Platforms Market Surges Toward 52% CAGR, Led by Cloud and AI Software Services
IDCによると、アジア太平洋地域(日本と中国を除く、APeJC)のAIプラットフォーム市場が2024年に前年比67%増、22億ドルを突破したことが明らかになりました。この急成長の背景には、域内各国政府によるAI・デジタル化推進策、企業のイノベーション・業務効率向上・顧客体験強化を目的とした投資の加速、そして生成AIの需要拡大とITリテラシーの高まりが存在しています。
本市場はAIライフサイクルソフト、AIソフトウェアサービス、ナレッジディスカバリーソフトの3領域から成り立ち、特にAIソフトウェアサービスは前年比94%という著しい成長を遂げました。さらに、クラウド型AIプラットフォームの台頭が市場拡大の主因となっており、2024年にはクラウドが市場の75%を占めました。
今回は、APeJC地域のAIプラットフォーム市場の成長要因、業界別動向、クラウド活用の拡大、そして今後の市場見通しについて取り上げたいと思います。
AIプラットフォーム市場成長の原動力
APeJC地域のAIプラットフォーム市場の急成長は、単なる技術トレンドではなく、経済・社会構造の変化に伴う戦略的転換点です。政府主導のデジタル政策が基盤を整備し、金融、医療、製造、小売といった産業がAIを業務中核に組み込む動きが鮮明になっています。特に、生成AIの浸透がAIプラットフォーム需要の裾野を広げ、企業規模や技術力に関わらず多様な業態でAI活用の機会が拡大しました。
IDCによると、クラウド上のAIソフトウェアサービスは、技術的ハードルを下げ、コーディングやデータサイエンスの専門知識がなくともAIアプリケーションを開発・展開できることが人気の理由です。これにより、試験導入にとどまらず、実用フェーズへの移行が加速しています。
クラウド活用が市場を押し上げる構造
2024年において、クラウド型AIプラットフォームは市場全体の75%を占め、前年比94%の成長を記録しました。この背景には、クラウドサービスが提供する高水準のセキュリティ、厳格なデータガバナンス、各国の規制対応力があり、特に高度な機械学習や自然言語処理を組み込んだサービスが多くの企業の支持を集めています。
Microsoft Azure、Google Cloud、AWSといった主要クラウドベンダーは、APeJC地域での拠点拡充と地域特化型のサービス提供を進め、企業のAI本格導入を後押ししています。これにより、AIはパイロット段階から生産工程やサービス現場への実装フェーズに移行し、投資対効果を生み始めています。
各国・地域で進むAIの実装と活用
地域別に見ると、AIの活用はその国の特性や戦略に応じて進化しています。インドでは、多言語対応や音声ベースの生成AIの需要が新たな市場を形成。東南アジアでは、政府主導のイノベーション施策とクラウド基盤整備により、AIを活用したデジタルサービスが成長しています。オーストラリアとニュージーランドでは、企業のAI成熟度が高く、既にビジネス価値の創出に成功している事例も増えています。
こうした動向は、AIが単なるテクノロジーの導入を超え、各国の競争力や社会インフラの高度化と密接に関わり始めていることを示しています。
今後の展望と求められる戦略
IDCはAPeJC地域のAIプラットフォーム市場が2029年までに年平均52%で成長すると予測しています。今後は、AIの持続的活用を実現するために、企業は以下の観点で戦略を再構築することも検討していく必要があるでしょう。
まずは、クラウドネイティブでスケーラブルなAI基盤の採用です。パートナー選定においては、技術力ではなく、業界・地域特化の知見や規制対応力も重視していくことも重要になります。自然言語処理や機械学習の高度化に合わせ、データガバナンスやAIガバナンスの強化も求められます。そして、AI導入による効果測定や倫理的配慮を含む運用モデルの整備が、企業の信頼性と持続的価値創出において重要となるでしょう。
出典:IDC 2025.6