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ソフトウェアエンジニアリングにおける6つの戦略的トレンド

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Gartnerは2025年7月1日、「2025年以降のソフトウェアエンジニアリングにおける戦略的トレンド」を発表しました。

Gartner Identifies the Top Strategic Trends in Software Engineering for 2025 and Beyond

生成AIの普及を背景に、ソフトウェアの開発・提供の在り方は大きく変わりつつあります。

Gartnerの副社長でアナリストのヨアヒム・ヘルシュマン氏は、

AI対応ツールと技術は、ソフトウェアの構築と提供の方法を根本的に変えています。今こそ、ソフトウェアエンジニアリングのリーダーがこれらのトレンドを活かし、持続可能でAIネイティブな開発手法を導入することが、長期的な成功につながります

と述べています。

今回は、AIネイティブソフトウェアエンジニアリング、LLMベースのアプリケーションとエージェントの構築、GenAIプラットフォームエンジニアリング、タレント密度の最大化、オープンGenAIモデルの成長、そしてグリーンソフトウェアエンジニアリングという6つの潮流、そして今後の展望について取り上げたいと思います。

AIネイティブソフトウェアエンジニアリング(AI-Native Software Engineering)

AIネイティブソフトウェアエンジニアリングは、ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)のあらゆる段階にAIを組み込み、自律的または半自律的にタスクを処理する手法です。Gartnerは、2028年までに企業のソフトウェアエンジニアの90%がAIコードアシスタントを活用するようになると予測しています。これは2024年初頭の14%未満からの急増です。開発者の役割は実装中心からオーケストレーション中心へと移行し、問題解決やシステム設計に注力するようになると予測しています。

LLMベースのアプリケーションとエージェント開発(Building LLM-Based Applications and Agents)

大規模言語モデル(LLM)は、人間のようにインテリジェントかつ自律的に応答するアプリケーションの開発を可能にし、ソフトウェアエンジニアリングの新たな可能性を開いています。Gartnerは、2027年までにソフトウェアエンジニアリングチームの55%以上がLLMベースの機能開発に取り組むと見ています。LLMベースの開発を成功させるには、生成AIの出力を活用した実験や、リスク管理を徹底するガードレールの導入、そして人材のスキルアップが重要となります。

GenAIプラットフォームエンジニアリング(GenAI Platform Engineering)

GenAIプラットフォームエンジニアリングは、開発者が生成AIの機能を簡単に見つけ、統合し、安全に利用できるようにする取り組みです。Gartnerは、2027年までにプラットフォームチームを持つ組織の70%が、内部開発プラットフォームに生成AIの機能を組み込むと予測しています。セルフサービス型の開発ポータルを通じてAI機能を発見可能にし、開発者のニーズに応じた機能を優先し、厳格なガバナンスやセキュリティを徹底することで、革新的で標準を順守したアプリケーション開発の実現が期待されます。

タレント密度の最大化(Maximizing Talent Density)

タレント密度、すなわち高いスキルを持つ人材の集中度は、ソフトウェアエンジニアリング組織の競争力の決め手となっています。適切な文化と技術戦略を伴えば、タレント密度の高いチームは効率性と適応力に優れ、顧客価値を高めることが可能です。従来の採用活動だけではなく、継続的な学習や協働を促す文化の醸成が重要です。進化するビジネスニーズに柔軟に対応できる人材を引きつけ、育成し続けることが求められています。

オープンGenAIモデルとエコシステム(Growth of Open GenAI Models and Ecosystem)

オープンGenAIモデルの普及は、企業のAI活用における柔軟性向上とコスト削減、ベンダーロックインの回避に貢献しています。オープンモデルは、組織が自社のニーズに合わせたカスタマイズやチューニングを行い、オンプレミスやクラウド上に展開することを可能にします。Gartnerは、2028年までに企業の生成AI関連支出の30%が、ドメイン特化型のオープンGenAIモデルに向けられると見込んでいます。これにより、より多様なチームや用途で高度なAIの利用が進むと期待されています。

グリーンソフトウェアエンジニアリング(Green Software Engineering)

グリーンソフトウェアエンジニアリングは、ソフトウェアの環境負荷を計画段階から意識し、持続可能性を重視する開発の実践です。生成AIを用いたインテリジェントアプリケーションの構築は膨大なエネルギーを消費するため、環境目標と矛盾しかねません。カーボン効率やカーボン認識を組み込んだソフトウェア設計が、これからの企業に必要です。持続可能性を実現するため、計画から運用まで一貫した環境配慮型の開発が求められています。

今後の展望

2025年以降のソフトウェアエンジニアリングは、AIの力を最大限に引き出し、持続可能性と柔軟性を備えた新たな開発の時代へと進んでいくでしょう。AIコードアシスタントやLLM、オープンGenAIモデルの活用は、企業の競争力を左右する大きな鍵となります。同時に、環境配慮やタレント育成といった視点を組織戦略に統合する必要があります。Gartnerが示した6つの潮流は、ソフトウェアエンジニアリングの未来を切り拓くための、重要なアプローチとなっていくでしょう。

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