国内デジタルビジネス支援市場、AI適応とモダナイゼーションで急成長
IDC Japanは2025年6月5日、「2025年 国内デジタルビジネスプロフェッショナルサービス市場予測」を発表しました。
IDCによると、市場は2024年に前年比27.8%増の1兆5,083億円に達し、引き続き高成長を続けていくと予測しています。AIの技術進化を背景に、企業のデジタルビジネス化や基幹システムのモダナイゼーションが進み、市場拡大を後押ししています。
今回は、国内市場の現状、成長を支える構造、サービス提供側の課題、そして今後の展望について取り上げたいと思います。
デジタルビジネス支援市場の急拡大と背景
国内のデジタルビジネスプロフェッショナルサービス市場は、AIの進化と企業の業務変革需要に支えられ、急速に規模を拡大しています。
IDCの定義によると、この市場はビジネスコンサルティング、ITコンサルティング、カスタムアプリケーション開発、システムインテグレーション、ネットワークコンサルティング&インテグレーションの5分野のサービスを含み、いずれもデジタルビジネスに特化したプロジェクトベースで提供されています。
2024年の市場規模は1兆5,083億円と、前年比で約28%の成長を記録しました。背景には、企業がAIの適応を本格化させる中で、ビジネスプロセスの再定義や基幹系システムの刷新に向けた投資が活発化していることがあります。特に大企業においては、業務変革を伴うITモダナイゼーションの取り組みが主流となり、こうした需要が市場全体の成長を強く押し上げています。
市場を支えるビジネスモダナイゼーションとAI適応
市場成長の原動力のひとつが、ビジネスモダナイゼーションとITモダナイゼーションの連動です。企業は、単なるシステムの刷新にとどまらず、業務の在り方自体を見直すことに取り組んでいます。この変革の前提として、ビジネスコンサルティング分野では、AIの適応や業務プロセスの再構築、戦略立案といったプロジェクトが急増しました。
また、ITプロフェッショナルサービスでは、基幹システムを含むモダナイゼーションに向けた支出が大きく伸びています。こうした動きは、AIを活用した業務効率化や新たな価値創出を目指す企業の意図を反映したものです。AI適応の成熟度向上に伴い、ITインフラやデータ基盤、アプリケーション開発基盤、自動化といった広範なテクノロジースタックでの支援需要が拡大していることも注目すべき点です。
サービスベンダーに求められる新たな提供モデル
IDC Japanの植村卓弥氏は、今回の発表の中で
市場成長を牽引する需要を的確に捉えつつ、サービスベンダーはプロフェッショナルサービスの提供モデルやビジネスモデルの再構築が必要である
と指摘しています。AI適応やモダナイゼーションのニーズに応えるだけでなく、長期的には顧客企業の事業戦略と一体化する形での支援の在り方が求められています。
実際、顧客企業の期待は、単なるシステム導入支援から、事業変革の実現に向けた伴走型の支援へとシフトしています。ベンダー側も、業界特化型ソリューションの提供、生成AIなどの新技術を活用したサービスモデルの構築、アジャイル型の開発・導入支援など、自社の競争力を高める取り組みが不可欠になっています。
市場の成長シナリオと残る課題
IDCは、2024年から2029年にかけて国内デジタルビジネスプロフェッショナルサービス市場が年平均18.4%で成長し、2029年には3兆5,350億円規模に達すると予測しています。この成長の背景には、デジタルビジネスへの構造的な転換の流れとAI技術の高度化があります。さらに、産業特化型AIユースケースの広がりや新たな価値創造に向けたプロジェクトが市場拡大に寄与するとみられます。
一方で、国内景気の不透明感が投資の抑制要因になる懸念もあります。また、AI適応やモダナイゼーションを進める中で、企業側のIT人材不足、ベンダー側の技術・ノウハウの高度化といった課題が顕在化しています。これらの課題への対応が、持続的な市場成長のカギとなります。
今後の展望
今後、国内デジタルビジネスプロフェッショナルサービス市場は、AIの適応とデジタルビジネスへの転換支援を軸に拡大を続けると見込まれます。企業のAI活用が高度化する中で、単なるテクノロジーの導入支援ではなく、事業戦略や業務変革、データ活用までを包括する支援が求められます。また、サービスベンダー側は、プロフェッショナルサービスの標準化・自動化や、新技術を取り込んだ柔軟なビジネスモデルへの転換が必要となります。
生成AIや産業特化型AIのユースケースが発展することで、新たな市場機会も広がります。持続的な市場成長を実現するためには、サービスベンダー、顧客企業、そして政策側が連携し、日本全体としてのデジタル競争力を高めていくことが重要となっています。
出典:IDC Japan 2025.6