世界サーバー市場、3660億ドルへ急成長 GPUサーバーがけん引
米IDC(International Data Corporation)は2025年6月26日、世界サーバー市場に関する最新予測を発表しました。同社の「Worldwide Quarterly Server Tracker」によると、2025年の世界サーバー市場の規模は3660億ドルに達する見通しであり、これは2024年比で44.6%の大幅な成長を示しています。2025年第1四半期の市場規模は952億ドルと、前年同期比で134.1%増と過去最高の成長率を記録しました。
今回は、IDCが示す市場の現状、GPU搭載サーバーの拡大、地域別の動向、そして今後の展望について取り上げたいと思います。
GPU搭載サーバーが市場の主役に
世界のサーバー市場の成長をけん引しているのは、GPU(Graphics Processing Unit)を搭載したサーバーです。IDCの予測では、2025年のGPU搭載サーバーの市場規模は前年比46.7%増となり、サーバー市場全体の約半分を占めるとしています。生成AIや推論モデル、そして今後のAGI(汎用人工知能)を見据えた高性能インフラの需要が背景にあります。大規模ラック構成で提供されるARMベースサーバーも急成長しており、出荷台数の21.1%を占め、前年比70.0%増と勢いを増しています。
北米市場を中心に急拡大する地域別動向
地域別に見ると、サーバー市場の成長は北米が牽引しています。米国市場は2025年に前年比59.7%増を記録し、世界全体の売上の62%を占める見通しです。AIインフラ投資において「Stargateプロジェクト」など大規模計画が進行しており、AIや生成AIへのインフラ整備が需要を押し上げています。中国市場も前年比39.5%増と高成長を維持しており、世界売上の21%超を占める重要市場となっています。日本市場も33.9%増と二桁成長を示し、データセンター強化やクラウド事業の拡大が寄与しています。一方、カナダは2024年の大型案件の反動でマイナス成長が見込まれています。
AGIを見据えたインフラ投資の課題と可能性
市場成長の背景には、AI技術の進化があります。IDCは、単なるチャットボットから推論モデル、そして自律的な「エージェントAI」への進化に伴い、膨大な計算能力が必要になると指摘しています。Stargateプロジェクトのような大規模投資が進む一方で、効率的なモデル構築への期待も高まっています。
効率的なAIモデルは、リソース消費を抑えつつ複数ユーザー環境でのスケーラビリティを高め、高度な推論やAGIの実現に向けた基盤となる可能性があります。しかし、膨大な電力需要や持続可能性、そして過剰投資への懸念といった課題も指摘されており、企業や政府には戦略的な投資判断が求められています。
今後の展望
サーバー市場は今後も高成長が続く見通しですが、その成長の質が問われる時代に入っています。生成AIや推論モデルの進化が需要を押し上げる一方で、エネルギー消費やコスト、環境負荷といった課題はさらに深刻化する可能性があります。企業は単なるインフラ増強ではなく、持続可能性とイノベーションの両立を追求する戦略が求められています。
出店:IDC 2025.6