オルタナティブ・ブログ > 『ビジネス2.0』の視点 >

ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

国内IT運用担当者の不満・不安が浮き彫りに、待遇・スキル獲得機会の改革が急務

»

ガートナージャパン株式会社(以下、Gartner)は2025年7月1日、国内のIT運用担当者のキャリアに関する不満や不安の実態を明らかにする調査結果を発表しました。本調査は、2025年4月に日本国内の企業に勤務するIT運用担当者を対象に実施されたものです。

背景には、クラウドネイティブ化やDevOps推進といったIT基盤の急速な進化があり、従来の運用業務の在り方が問われる時代を迎えていることがあります。にもかかわらず、IT運用に携わる担当者は、待遇面での不公平感や、最新技術に触れる機会の不足といった課題を抱え続けています。これにより、モチベーションの維持やキャリア形成に不安を感じ、離職や異動を検討する担当者が少なくない状況です。

今回は、Gartnerの調査結果をもとに、国内IT運用担当者が直面する課題の実態、求められる職場環境の変革、新技術への取り組みの必要性、そして今後の展望について取り上げたいと思います。

IT運用担当者が直面する根深い不満と不安

Gartnerの調査によると、IT運用担当者がキャリア形成において不安や不満を感じる理由の上位には、「他のIT部門に比べて昇給・昇進が遅い」(62.7%)、「新しい技術に触れる機会がない」(62.3%)、「重責であるにもかかわらず待遇や評価が不十分」(50.2%)といった項目が並びました。

さらに、「オンコール対応や残業が多く、長期的な勤務継続が難しい」(42.6%)も課題として挙げられています。これらの理由から、IT運用担当者は待遇面だけでなく、将来のキャリアやワークライフバランスに強い不安を抱えていることが浮き彫りとなりました。

図1. IT運用担当者がキャリア・パスに不安を抱く理由
スクリーンショット 2025-07-05 10.17.42.png

出典:国内IT運用担当者のキャリア不安理由を示すGartnerの調査グラフ(2025年7月発表)

この状況について、Gartnerの米田英央シニア ディレクター アナリストは、「作業負荷は高いものの付加価値が高くない仕事を強いられ、それが将来の待遇への不安につながっている」と指摘しています。

求められる職場環境の変革とリーダーの役割

Gartnerは、IT運用を担う人材が評価される職場を実現するには、インフラ自動化ツールの導入や、ビジネス価値の低い業務プロセスの廃止といった改革が必要だと提言しています。こうした取り組みにより、担当者の作業負荷を軽減し、より付加価値の高い業務へシフトすることが求められています。

I&Oリーダーには、単なる効率化だけでなく、社内で「評価される仕事」の創出が求められます。具体的には、ビジネスに直結する新規インフラ設計や、セキュリティ強化のための運用プロセス改善といった取り組みです。これにより、運用担当者の職務が他部門からも評価されるものとなり、適正な待遇やキャリア形成への道が開けます。

技術力向上への期待と現実のギャップ

本調査では、「IT部門でありながらエンジニアとしての専門性が身に付かない」(45.6%)という声も多く、技術習得機会の不足が深刻な課題であることが確認されました。「DevOps、クラウド、SRE、コンテナ、プラットフォームエンジニアリング」などの新技術は、今やIT運用の現場で不可欠ですが、現場での習得機会は限られています。

米田氏は、「現職を辞めて新天地で技術力を磨こうと考える担当者が増えても不思議ではない」と述べ、現職場での学びの機会を整備する必要性を強調しています。日常業務の中で新技術に触れ、スキルを向上できる環境づくりが、運用部門の持続的成長には不可欠です。

今後の展望:持続可能なIT運用部門への転換

Gartnerの調査は、国内IT運用部門が抱える構造的課題を浮き彫りにしました。今後の展望として、運用業務の自動化・省力化とともに、担当者が成長を実感できるキャリアパスの提示が必要です。リーダー層は、以下のような取り組みを進める必要があります。

・インフラ自動化や運用高度化ツールの導入による作業負荷の軽減
・DevOpsやクラウドネイティブなどの新技術習得プログラムの内製化
・成果に応じた評価体系の見直しと昇進・昇給の透明化

特に、運用担当者が自部門にとどまって成長を続けたいと思える環境づくりが、企業の持続的な競争力強化にも直結します。今後は、技術基盤の変革と人材戦略の統合的な推進が、I&Oリーダーに強く求められています。

Comment(0)