オルタナティブ・ブログ > 『ビジネス2.0』の視点 >

ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

データマネジメント市場成長の原動力はAIとクラウド最適化

»

IDCは2025年6月18日、「Worldwide Semiannual Software Tracker(2024年後半期)」に基づくアジア太平洋地域(日本・中国を除く、以下APeJC)のデータ管理ソフトウェア市場の実績と予測を発表しました。

IDC: AI-Driven Automation and Cloud Modernization Fuel 15.7% CAGR Growth of Data Management Software in Asia/Pacific*, Reaching $13.7B by 2029

IDCによると、日本と中国を除くアジア太平洋地域(APeJC)のデータマネジメントソフトウェア市場は、2024年に前年比10.0%成長し、2029年までの年平均成長率(CAGR)は15.7%と高水準で推移し、2029年には市場規模が137億ドルに達すると予測されています。

背景には、生成AIやAIによる業務自動化の進展、クラウド基盤のモダナイゼーション、そしてデータガバナンス強化を求める規制の厳格化といった複合的な要因があります。企業がデータドリブン経営やリアルタイム分析を推進する中、データ管理基盤の刷新が不可欠となりつつあります。

今回は、この市場拡大の要因、地域ごとの動向、そして今後の課題と展望について考察します。

データマネジメント市場成長の原動力はAIとクラウド最適化

APeJC地域におけるデータマネジメントソフト市場の急成長の主因は、AIや生成AIを組み込んだ業務プロセスの増加です。企業はリアルタイムデータ処理や高度な分析を実現するため、スケーラブルなデータパイプラインやメタデータ駆動型の統合ツールへの投資を強化しています。さらに、クラウドネイティブプラットフォームの導入が進み、データサイロを解消し全社的なデータ統合を目指す動きが広がっています。

これに加えて、各国・地域でのデータ保護やガバナンスに関する規制強化が、企業の対応を加速させています。IDCは、パブリッククラウドの導入が今後31.1%のCAGRで成長すると見込む一方、オンプレミス環境の成長は限定的と指摘しています。ただし、銀行、政府、製造業などの一部業種では、法規制や運用管理上の理由からオンプレミス投資も根強く残るとされています。

地域別にみる市場動向と特徴

APeJC地域内でも、各国・地域の事情や産業構造に応じた市場の成長パターンが見られます。

オーストラリア・ニュージーランドでは、レガシーRDBから分散型NoSQLやデータレイクハウスへの移行が進み、ESGデータ追跡やデータ品質管理が求められています。インドはAIプラットフォーム開発のハブとして存在感を強め、データローカライゼーションやデジタル公共基盤の推進がデータ統合・ガバナンス需要を押し上げています。

韓国はハイブリッドDBMSやインメモリDBの活用が進み、IoTやAIオペレーションに対応した高度なデータレプリケーションやマスキング技術が求められています。東南アジアでは、スマートシティや中小企業のデジタル化により、SaaS型統合ツールやローコードDBMSの導入が急速に拡大しています。香港・台湾も、それぞれ規制対応や製造業の高度化に応じたデータ管理強化が進んでいます。

市場成長を阻む課題と求められる対応策

成長の一方で、データマネジメント市場の拡大を妨げる要因も存在します。とりわけ深刻なのは、データエンジニアやアーキテクト、プラットフォーム管理者といった専門人材の不足です。新興市場ではこの傾向が顕著であり、企業のデータ管理能力に格差が生じるリスクがあります。

また、大手企業の多くがレガシーシステムやサイロ化したデータ基盤を抱えており、移行や統合には高コストと時間を要します。生成AIや高度なメタデータ管理、データ品質ソリューションの導入は、コスト面での課題もあり、中小企業や新興市場での普及が鈍化する可能性も指摘されています。

今後の展望

IDCは、APeJC地域におけるデータマネジメント市場の今後を「インテリジェントかつ自動化され、クラウド最適化されたデータ基盤が主流になる」と見ています。企業は、クラウドとオンプレミスを組み合わせたハイブリッド構成で、データ主権やコンプライアンスへの対応を図りつつ、異なるプラットフォーム間の相互運用性や外部連携を確保していく必要があるでしょう。

スクリーンショット 2025-06-19 12.51.45.png

出典:IDC 2025.6

Comment(0)