2030年に実現するAIロボットの未来技術
内閣府は2024年6月3日、「総合科学技術・イノベーション会議(第73回)」を開催し、ムーンショット型研究開発などに関する議論・検討を行っています。
ムーンショット型研究開発制度は、日本が2050年を見据えて推進する未来志向の研究開発プロジェクトです。
本制度では、特にAIとロボットの共進化を中心に据え、人間と共生するロボットの実現を目指しています。
今回は、「目標1:身体・脳・空間・時間の制約から解放された社会の実現」と「目標3:AIとロボットの共進化による共生社会の実現」に焦点をあて、プそのロジェクト概要と未来技術について解説します。
目標1:身体・脳・空間・時間の制約から解放された社会の実現
目標1では、遠隔操作技術とアバターロボットが中心的な役割を果たし、誰もが遠隔地から複数のアバターロボットを操作し、生産性を向上させ、豊かな社会の実現を目指しており、以下のような技術を挙げています。
- 遠隔操作アバター技術
世界中のどこにいても、自分のアバターを通じてさまざまな活動に参加。高齢者や障害を持つ人々も、自宅から出ることなく仕事や社会活動に従事できるように - 非侵襲での脳波計測と操作技術
ヘッドフォン型デバイスで脳波を計測し、「思っただけ」で複数のアバターを操作することが可能に。この技術は、高齢者や障害のある人々の社会参加を大幅に促進 - 体内状況の常時見守りアバター
体温やpHなどの体内環境情報を常時モニタリングし、異常値を示す場所を特定する技術を開発。これにより、誰もが自分の健康状態をリアルタイムで監視し、必要な対応を迅速に行えるように
目標3:AIとロボットの共進化による共生社会の実現
目標3では、AIとロボットが自ら学習し、人と共生する社会を目指しており、以下のような技術が開発され、日常生活や専門的な場面でのロボットの活躍を想定しています。
- 深層予測学習AIロボット
環境変化に対応できる汎用型AIロボットは、家事や介護などの日常生活をサポート。また、科学者と協力しながら自律的に科学探究や発見 - モジュラー型AIロボット
作業環境や目的に応じて自ら適応し、組み立て・変形するロボット。例えば、月面での拠点構築に貢献するために、月面へ輸送された小さなパーツが自律的に組み上がり、インフラ設備を構築 - 分散型AIを組み込んだ汎用型ロボット
視覚・触覚情報を取り込みながら、人と触れあう作業を高速・高信頼で実現。家事作業や医療・福祉分野での支援業務
2030年に実現されること
ムーンショット型研究開発制度では、2030年までに以下の技術の実現を目指しています。
- 脳波でのアバター操作
極低侵襲で脳波を計測し、「思っただけ」で複数のアバターを操作できる技術が開発され、高齢者や障害のある人々の社会参加が促進 - 体内状況のモニタリング
体内の状態を常時見守るアバター技術により、異常値を示す場所を特定できるようになり、誰でも自分の健康をモニタリングできる基盤が構築 - 予測AI技術を組み込んだ汎用型AIロボット
視覚・触覚情報を取り込みながら、人と触れあう作業を高速・高信頼で実現するAI技術が組み込まれた汎用型AIロボットが開発され、家事作業や医療・福祉分野の支援業務を実証 - モジュラー型AIロボット技術
分散型AIを組み込んだパーツが自ら組み上がり、変形するモジュラー型AIロボットが開発され、月面でのインフラ設備構築が自律的に行われることを実証
今後の展望
目標1と目標3の連携により、異なるアプリケーション間で動くソフトウェアの国際標準化を進め、共通のプラットフォームが実現されれば、多様な分野での技術の相互運用性が高まり、さらなる技術革新が促進されます。
ムーンショット型研究開発制度は、これらの先端技術の研究開発を通じて、2050年に向けた持続可能で豊かな社会の実現を目指しています。
未来のテクノロジーがどのように人々の生活を変革し、より良い社会を創り出すのか、もしくは戦争のマイナスに作用してしまうのか、さまざまな可能性が想定されますが、未来を創造しながら、動向を注視していきたいと思います。