国内データプラットフォーム市場、2029年には9,900億円規模に
IDC Japanは2025年6月17日、「国内データプラットフォーム市場の最新予測」を公表しました。
IDCの調査によると、2025年の国内データプラットフォーム市場のソフトウェア売上規模は7,371億円に達し、前年比成長率は7.7%となる見通しです。データドリブン経営の定着とAIをはじめとする先進技術の進展を背景に、企業によるデータ基盤への投資が拡大を続けています。一方で、膨大なデータ量の増加に伴うリスク管理やガバナンスの必要性も急速に高まっており、ベンダー各社は高度な監視機能やコンプライアンス支援機能を強化しています。
今回は、国内市場の成長の要因、AIや生成AIが果たす役割、そしてリスク管理の新たな課題と今後の展望について取り上げたいと思います。
データドリブン経営と市場拡大の背景
近年、国内企業の間でデータドリブン経営の重要性が広く認識されるようになり、あらゆる業界でデータ活用を前提とした意思決定が一般化しています。この流れを支えるのがデータプラットフォームです。IDCの調査によると、2025年の市場規模は7,371億円、2029年には9,934億円へと成長し、2024年から2029年の年間平均成長率は7.7%と予測されています。従来、データベースやデータセキュリティといった分野は成熟市場と見なされてきましたが、AIを核とする技術革新によって再び成長の軌道に乗りつつあります。
背景には、生成AIをはじめとする要素技術の進展があります。AIエージェントやマルチエージェントシステムの発達により、従来は人手に頼っていた業務や分析領域が自動化・高度化し、データプラットフォームへの期待と役割が急速に拡大しています。企業は単なるデータの蓄積だけでなく、予測、シナリオ分析、意思決定支援といった高度な活用を目指し、プラットフォームの刷新や機能強化を積極的に進めています。
AI・生成AIがもたらす変革とデータ基盤の進化
生成AIの進化は、企業のデータ基盤戦略に大きな影響を及ぼしています。生成AIは自然言語処理や画像生成などの分野で注目を集めていますが、業務プロセス自動化や顧客対応、製品設計支援など企業活動の多岐にわたる領域に浸透しつつあります。これに伴い、リアルタイムで膨大なデータを処理・統合・管理できる堅牢な基盤が必要となっています。
IDC Japanの鈴木康介リサーチマネージャーが指摘する通り、AIによる業務自動化の効果を最大化するためには、データ運用そのものの改革が求められています。データの品質確保、利用の一貫性、リアルタイム性の強化といった課題に向け、データプラットフォームベンダーはAI内蔵型のデータ品質管理機能や、コンテキスト認識による高度な監視・アドバイザリー機能の提供を進めています。
リスク管理とガバナンス強化の新たな課題
データ活用の加速と表裏一体で、リスク管理やガバナンスの重要性も一層高まっています。膨大なデータ量の急増は、保存・廃棄・アーカイブといったデータライフサイクル全体の管理を複雑化させています。また、生成AIの利用拡大に伴う新たなリスク、たとえば学習データの偏りや出力内容の適正性確保といった課題にも対処する必要があります。
さらに、国際的なデータ保護規制やAI規制への対応も不可避です。欧州のGDPR、中国のデータ安全法など、各国で進む規制動向は、日本企業のデータ運用に直接的な影響を与えています。データプラットフォームベンダーは、規制対応を支援する監査証跡機能や、リスク検知・是正機能を強化し、企業のコンプライアンス対応を後押ししています。機械学習を活用した異常検知や、国境を越えたデータ移転リスクの自動評価ツールなども、今後の普及が期待されています。
今後の展望
国内のデータプラットフォーム市場は、データドリブン経営の深化、AI・生成AIの普及、そして規制対応やリスク管理需要の高まりを背景に、今後も堅調な成長が見込まれます。しかし、企業がこの潮流を真の競争力強化に結びつけるためには、単なるツール導入にとどまらず、データ運用そのものの戦略的見直しが必要となるでしょう。
ITサプライヤーには、ユーザー企業のデータ運用変革を長期にわたり支援する役割が期待されています。たとえば、クラウド基盤とオンプレミス基盤を組み合わせたハイブリッドデータ管理モデルの提案や、AI活用を前提としたデータガバナンスのベストプラクティス策定などが求められています。
出典:IDC Japan 2025.6