オープンデータ社会（１０３）鉄道分野におけるオープンデータ化の動き

» 2013/09/26

昨今、鉄道での脱線事故などが問題となっていますが、鉄道分野のオープン化の動きが出てきており、事故や運行状況の可視化、サービス連携などさまざまな活用シーンが生まれてくると期待されています。

鉄道など公共交通分野におけるオープンデータ活用のための標準APIに向けた取り組み

「情報流通連携基盤の公共交通分野における実証実験」は、2013年3月1日から3月29日まで行われた。鉄道やバスなどの運行情報や、駅・停留所などの複数の公共交通施設の標準API規格や共通のデータフォーマットによるオープンなプラットフォームとなる情報流通連携基盤システム上で相互に利用し、情報流通基盤の適用性の検証や、都市における公共交通の状況の可視化につなげることを目的として実証が行われました。

本実証では、横須賀テレコムリサーチパークが実証主体となり、JR東日本、東京都交通局、東京都地下鉄などが実験に協力しました。

本実証では、列車の在線情報と運行情報から列車の位置や運行状況を提示する「公共交通運行情報サービス（ドコシル）」、駅構内の施設情報を提供する「次世代交通支援情報サービス（ココシル東京駅）」、音声ガイドによる資格視聴者に運行情報を提供する「交通弱者支援情報サービス」の３つを中心に、APIを用いたパイロットサービスを開発し検証を行ないました。

「公共交通運行情報サービス（ドコシル）」は、東京23区内の都営バスや鉄道のリアルタイムな運行情報を情報流通連携基盤のAPIを利用して取得し表示することで、電車やバスの位置、遅延などの運行情報を地図上で可視化しました。

駅のリアルタイムな情報では、JR 東京駅に乗り入れているJRと東京メトロと都営地下鉄全線の列車運行情報を提供し、列車運行情報の変化に応じて、スマートフォンに Push 配信ができ、リアルタイムに運行状況を確認することができました。

これらのサービス提供にあたって、データ整備を行い、路線・駅・バス停・改札口などの情報を記述するために、103のボキャブラリを定義しています。また、外部仕様書に基づくAPIを実装し、時刻表情報・路線情報・施設情報・運行情報などを配信できるよう環境を構築しています。

開発者向けのサイトを整備し、APIや提供するデータに関する情報、FAQを公開しました。開発者向けには、開発向けサイト（Developer's Site）を公開し、オープンデータを活用した公共交通情報アプリ開発の提案受付を行い、開発者向けのサイトを経由して情報連携基盤APIやデータを提供しました。

開発者向けに公開したオープンデータは、全国の鉄道およびバス路線情報や時刻表などの「静的な運行情報」とJR各線や東京メトロ・地下鉄や都営バスの「リアルアイムな運行情報」、東京駅構内に10箇所設置したセンサー値（湿度・温度・花粉量）のデータを公開しました。他サービスとのマッシュアップやコレクションゲーム、乗り換え案内、降車案内など16のアプリも構築されました。

公共交通オープンデータ研究会の発足

総務省の今回の実証事業をもとに、2013年8月19日、小田急電鉄㈱、京王電鉄㈱、京成電鉄㈱、京浜急行電鉄㈱、首都圏新都市鉄道㈱、西武鉄道㈱、東京急行電鉄㈱、東京地下鉄㈱、東京都交通局、東京臨海高速鉄道㈱、東武鉄道㈱、東日本旅客鉄道㈱、㈱ゆりかもめの13の公共交通事業者と日本空港ビルデング㈱、YRP ユビキタス・ネットワーキング研究所、東京大学の参加による「公共交通オープンデータ研究会」の発足を発表しました。総務省、国土交通省、東京都はオブザーバーとして参加し、2013年9月より本格稼働を開始しています。

http://odpt.org/

研究会では、公共交通情報のオープンデータの実用化に向けて、データフォーマットやAPIなの提供により開発者が情報サービスを容易に提供できる環境を整備し、効率的かつ効果的な公共交通情報サービスモデルやビジネスモデルの実現に向けて検討をすすめ、2013年中に現実の運行状況に即したリアルタイム型の運行情報の試行サービス実験の実施を予定しています。

駅すぱあとが「駅情報」や「路線情報」をオープンデータ化

民間企業による鉄道関連情報のオープンデータ化も進んでいます。株式会社ヴァル研究所は、交通の乗り換え案内サービス「駅すぱあとWebサービス」において鉄道関連情報を取得するためのAPI群を無償で公開することを公表しました（ニュースリリース）。

http://webservice.ekispert.com/free_provision/

「駅すぱあとWebサービス」は、「駅すぱあと」の乗換検索（条件付き）や公共交通機関データの取得をAPIとして公開してオープンデータ化し、XMLまたはJSONで取得できます。これにより、企業内でのポータルサイトやスマホ向けのアプリに「駅すぱあと」の機能をAPIとして組み込むことができます。また、経路検索は「Roote」連携で実現します。

無償提供APIでは、「会社情報」「路線情報」「駅情報」「駅付加情報」などの機能を利用でき、以下の図は「会社情報」から「駅付加情報」までの取得例です。

http://webservice.ekispert.com/free_provision/

無償提供APIを通じて「路線情報」と「駅情報」を利用すれば、「都道府県」や「路線名」、「鉄道会社名」から「駅」を絞り込むことができ、たとえば、不動産ポータルや人材派遣サイトなどでの利用が想定されています。

さらに、「駅の緯度経度」も取得内容に含まれているため、地図と連携しての利用もできます。

http://webservice.ekispert.com/free_provision/

2020年には世界から多くの人が訪れることになります。オリンピック会場の多くはオリンピック選手村から8km圏内の近距離にあり、選手や観光客などは鉄道で移動するケースが多くなると想定されます。そのため、これらの鉄道分野のオープンデータを日本だけでなく海外の事業者も利用し、さまざまなシーンでの利用やマネタイズモデルが生まれてくることが期待されるところです。

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