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クラウド・エコシステム(44)Open Compute Project

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Open Compute Projectとは

米フェイスブックは2011年4月7日、オレゴン州プラインビルに建設した自社データセンターを公開し、同データセンターで採用しているエネルギー利用効率の高いサーバーとデータセンターの仕様やベストプラクティスを業界全体で共有するための取り組みである「Open Compute Project」を発表しました。

「Facebook」のサービスの提供するために独自設計をし、既存のデータセンターと比べエネルギー効率を38%向上、費用を24%削減、そして、電力効率の指数のPUEは1.07と非常に効率の高い数値を示しています。

「Open Compute Project」では、オープンソースソフトのように多くの人が実際に構築運用で使うことで改善が図られ、大量に同じ使用のサーバーの製造や調達が可能となり、業界の標準化も進むとともに大規模データセンター構築が容易になります。

今回のプロジェクトの最初の取り組みとしては、今回のデータセンターで使用しているサーバーのマザーボードや電源、筐体、サーバーラック、データセンターの設計に関する仕様やCADファイルなどをGitHubで公開しています。

今回のプロジェクトでのデータセンターの建設にあたっては、米AMD、米Dell、米Hewlett-Packard、Intel、そして、SkypeやZyngaなどが参加しています。今後はこれらの事業者が、プロジェクトの仕様に基づいたサーバの製造などを行っています。

フェイスブックが「Open Compute Project」を推進する背景

フェイスブックは、「Open Compute Project」を推進する理由は、「Facebook」の9億人以上のユーザを抱え、Facebook は毎月数千億を超えるメッセージを処理していくために、大規模データセンターを構築し、サービス用に標準化された大量のサーバを安価に調達することが必要となっているためです。データセンターへの投資は大規模であるため、調達コストと構築コストは事業の収益を大きく左右します。

フェイスブックはこれまで、2011年4月にオレゴン州プラインビルに「Open Compute Project」の最初の取り組みとなるデータセンターを開設、ノースカロライナ州フォレストシティに、世界有数のエネルギー効率を誇るデータセンターを開設しています。「Open Compute Project」バージョン2のウェブサーバが大規模に配備されるケースとしては、フォレストシティが初めてとなります。

フェイスブックは、「Open Compute Project」によりデータセンターのオープンソース化を推進することで、様々な事業者が参加し、本仕様に適合させていくこおで、フェイスブックが主導するプロジェクトとなり、より大規模なデータセンターを規模の経済を生かし低コストで構築する環境を整えることができるようになります。

また、こういった活動は、質の高いエンジニアにとってイメージ向上につながり、優秀なエンジニアの確保にもつながると考えられます。

「Open Compute Project Foundation」の発足

フェイスブックは、さらにフェイスブックが中心となり2011年10月27日、「Open Compute Project」を推進するための非営利組織「Open Compute Project Foundation」を発足しています。

Open Compute Project Foundationの公式メンバーにはFacebookのほか、米Intel、台湾ASUSTeK Computer(ASUS)、米Dell、中国Huawei Technologies(華為技術)、米Red Hat、米Cloudera、中国Baidu(百度)、米Mozilla、米Rackspace Hosting、米Netflix、米Goldman Sachs、NTTデータなどが参加しています。

本Foundationの活動の方針については、BYLAWS OF OPEN COMPUTE PROJECT FOUNDATION(PDF)」から確認することできます。

「Open Compute Project Foundation」の活動は、フェイスブックの設計図をオープンソース化して公開するだけでなく、大規模データセンター事業者が集まり、データセンターに最適なハードウエア仕様を協議し、実際の普及を推進する団体として、取り組みが進んでいます。

「OCPソリューション・プロバイダー・プログラム」でハードウェアの調達構造が変化

「Open Compute Project Foundation」は2012年5月2~3日、米テキサス州サンアントニオで「Open Compute Summit」を開催しました。

本Summitでは、ストレージやマザーボードに関する新施策や、「Open Compute Project」仕様の「Open Rack」に関する詳細、そして各社の「Open Rack」への対応などが発表されています。

ここで注目されるのは、「Open Compute Project」仕様のサーバーをデータセンター事業者に納入する「OCPソリューション・プロバイダー・プログラム」です。

本プログラムは、「Open Compute Project」仕様のサーバーなどを製造する企業を「Open Compute Project」が斡旋するという取り組みです。 このプログラムの中心に参加しているのが、台湾のクアンタ・コンピュータ(Quanta)やウィストロン(Wistron)などのODM(相手先ブランドによる設計製造)事業者です。

ODM事業者は、本プログラムに参加することよって、データセンター事業者から直接サーバーの製造などを請け負うことができるようになります。つまり、大手ベンダーを介さずに、ビジネスができるようになり、これまでのサーバーなどのハードウェア調達のサプライチェーンの構造が大きく変わることになります。

「Open Compute Project」から始まる新たなエコシステム

「Open Compute Project」によりデータセンターのオープンソース化を推進することで、様々な事業者が参加し、プロジェクトのガイドラインに合わせた、それぞれのビジネスを構築し、データセンターレイヤのエコシステムを形成が進んでいくと考えられます。

このエコシステムによって、フェイスブックは自社に有利な仕様で安価にデータセンターを構築でき、多くの事業者はフェイスブックのデータセンター建設にあたっての大量納品が可能となり、双方にとってメリットの高いものとなるでしょう。

つまり、これまでのハードウェアを販売する事業者が主導するモデルから、オープンソース化により、データセンター運営事業者が主導するモデルへと大きく方向転換する動きが出てきているといえるでしょう。

この流れは、爆発的にWeb スケールでの進化し、クラウドが急速に成長する中において、これまで紹介してきたオープンソースのクラウド基盤ソフトウェアである「オープンクラウド」がプロプライエタリ中心だったクラウドビジネスのモデルを大きく変えようとしたように、データセンター事業者がエコシステムのハブとなり、クラウドインフラを支え、大きなイノベーションを生み出す時代に変化していくのかもしれません。

かってな推測ですが、グーグルが「Google Compute Engine」の提供を発表したように、フェイスブックも大規模なデータセンターと豊富なコンピューティングリソースを駆使しIaaS市場に参入する日も、そう遠くはないのかもしれません。

 

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