クラウド・エコシステム(40)PaaSレイヤのエコシステム
PaaSレイヤにおいても重要になるのが、エコシステムです。
PaaSサービスのビジネスモデルは、コアとなるPaaSアーキテクチャを基盤として、オープンなプログラミング言語や開発フレームワークを無償で提供しつつ、データベースや他のアドオンサービスを有償で提供し、収益を獲得するモデルが進んでいます。
自社で付加サービスを提供するだけでなく、開発者が魅力を感じるPaaSのエコシステムを、サードパーティーを巻き込みながら形成することが重要になりつつあります。例えば、あるPaaSサービスの場合は、従量課金を行いながら、サードパーティーによるアドオンサービスを多数そろえ、開発者が自由にこれらのサービスを利用できるようになっています。
最近では、ソーシャルネットワーク向けのアプリケーションやスマートフォン向けアプリの台頭が著しく、独自SDK(ソフトウェア開発キット)の無料提供によってクラウドサービスとの連携を容易にし、さらに、マルチプラットフォームに対応したアプリ開発環境が人気を集めています。
Salesforce.comが2010年12月に買収したPaaSサービスのHerokuの場合は、Heroku上でWebアプリケーションを開発し、すぐにリリースや更新が行えるのが特徴です。作成したアプリケーションは、さまざまなモバイルデバイスに対応し、Facebookなどのソーシャルネットワーク上で実行可能となっています。買収当時はRuby専用のPaaSでしたが、Javaなど多言語対応するなど、マルチ言語への対応も強化しています。
PaaSレイヤのエコシステムは、オープンソースベースのパブリックPaaSを通じて、スマートフォンなどのモバイル向けのアプリ開発ツールとしての利用が中心となるでしょう。さらに、ソーシャル認証や連携機能、課金・決済手段との連携などにより、アドオン・エコシステムを拡大させ、サービスのスケールの選択肢を増やしていくことが予想されます。
これらのPaaSのエコシステムは、次第に収益モデルを確立させ、中長期的には、エンタープライズ分野でのエンタープライズPaaS、さらには公共分野のPaaSなどを通じてのエコシステムを展開していくことが期待されます。
PaaSレイヤのエコシステムは、アプリケーションをはじめ、上位レイヤとの連携が多岐にわたるため、多くの分野でPaaSのエコシステムが形成されることになるでしょう。
PaaSレイヤの市場は、まだマーケットリーダが存在せず、成長が見込まれる中においても市場が混沌としている状況です。クラウド事業者は、PaaSレイヤまで事業範囲を拡大させ、競争優位に立つための独自機能による差別化戦略とオープン化を推進しつつ、サードパーティとの連携によるエコシステムを形成することで、安定した収益を生み出すためのサービスモデルを構築していくことが重要になっていくでしょう。
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※担当キュレーター「わんとぴ」
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