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クラウド・エコシステム(26)電子書籍ビジネス<後編>

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電子書籍ビジネス<前編>に続いて、後編です。

乱立する電子書籍のプラットフォーム

現在、日本国内における電子書籍市場では、電子書籍ストアが多く乱立しており、電子書籍ストアでは、各ストアとも3万~5万点が中心となっており、アマゾンの100万点と比べると大きく見劣りしているのが現状です。

日本における電子書籍ストアは、ソニーやシャープなどのメーカーや印刷時業者、通信事業者からベンチャー企業まだ様々な事業者が参入し、市場は混沌としており、なかなか市場が立ち上がらない要因ともなっています。

こういった電子書籍ストアの乱立は、価格や品揃え、対応機種や最ダウンロードの有無、フォーマット形式、課金体系など、ユーザにとっては利便性を損なう懸念が指摘されており、書店と比べて安心して電子書籍を購入するハードルが高い状況にあります。

政府が整備を進める電子書籍普及のための制度改正など

これまで、政府では、総務省、文部科学省、経済産業省の3省が2010年3月から電子書籍の規格統一を進めるため「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」を開催し、2010年6月28日には報告書を公表しました。この報告書の中では、日本語の電子書籍フォーマットについて、多様な端末で閲覧可能にするための中間フォーマットの策定などを盛り込まれています(関連記事)。

また、政府の知的財産戦略本部は2012年5月29日、日本の国際競争力を高めるための知財戦略となる「知財推進計画2012」を公表し、電子書籍で読める作品の数を増やすため、出版社に著作権に準じた権利「著作隣接権」を与える方針を示しています。著作権使用料という新たな収入源が確保できることになれば、出版社にとっても電子化を進めやすい環境となるでしょう。

また、出版社や作家、超党派の国会議員などでつくる「印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会」(座長・中川正春・内閣府特命担当相)では、2012年6月20日、著作隣接権を付与することが望ましいとする中間まとめ案を取りまとめています(関連記事)。

2012年6月15日には、電子書籍などオンライン資料を国立国会図書館への納入を義務付け出版物に加える「改正国立国会図書館法」が参院本会議で全会一致で可決、成立し、施工は来年の2013年7月に予定されています。

 

政府が後押しする電子書籍ビジネス

一方、電子書籍ビジネスがグローバルで進み、電子書籍ストアが乱立し電子化された書籍が少ない状況の中、日本国内においても出版物の電子化を進めるために、大手印刷会社などからの20億円の出資、そして官民ファンドの産業革新機構から150億円の出資により、2012年4月2日に「出版デジタル機構」が設立されています。

本機構では、経済産業省の「コンテンツ緊急電子化事業」(緊デジ事業)と連携し、今年度中に書籍約6万タイトルを電子化し、5年後に100万点の電子化を目指し、国内における電子書籍市場を2,000~3,000億円規模へと成長させるための支援を行っています。

この100万タイトルを持つ電子書籍プラットフォームを機構を中心にどのように構築し、電子書籍データをどのように保有し、どのような収益構造の中で、どのように販売していくのか、産官学による電子書籍のビジネスモデルの行方が注目されます。

電子書籍のエコシステムを

電子書籍ビジネスの展開においてもアマゾンやコボなどが、端末からプラットフォームとしてコンテンツまでの独自の垂直型のビジネスモデルを展開しています。 楽天は自社端末として「コボタッチ」を7月にも新たに市場投入することが明らかになっており、アマゾンも年内での投入など、電子書籍市場の本格的な展開が予想されます。

電子書籍ビジネスが今後本格的に成長していくためには、書店、電子書籍端末だけでなく、出版社そのものが、電子書籍ビジネスに本腰をいれていくことが重要となります。書き手が書籍と同等もしくはそれ以上の対価を得られるような環境をつくり、コンテンツを充実させていくことで、出版社や、電子書籍端末メーカなどが、電子書籍を一つのビジネスとして収益を確保できるビジネスモデルを構築していく必要があります。

これらのビジネスモデルを確立させていくための重要な要素として、電子書籍を単なる読み捨てにするのではなく、蔵書として長く利用できるための、多くの出版社が参加でき、マルチデバイスで電子書籍サービスを利用できるクラウド型の電子書籍ストアが重要になると考えています。

つまり、電子書籍ビジネスの展開において、コアとなるプラットフォーム(電子書籍のコンテンツストア)と認証やコンテンツ管理機能などを取り込み、出版社が容易に参加できるクラウドエコシステムの環境整備は、今後の電子書籍ビジネスの展開において、大きな差別化要因となっていくでしょう。

日本において、アマゾンなどのグローバルな電子書籍事業者へ対抗、もしくは共存できるエコシステムが構築できるのか、今後の電子書籍ビジネスを占う上でも、注目されるところです。

 

※担当キュレーター「わんとぴ

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