クラウド・エコシステム(14)ベンチャー企業の役割
第一回はクラウド・エコシステムの概要、第二回は登場の背景、第三回は注目される6つの理由、第四回はSIビジネスの今後、第五回はコミュニティの存在、第六回はクラウドを推進する団体、第七回はオープンクラウド、第八回はクラウド・エコノミクス、第九回はソーシャルキャピタル、第十回はグローバル市場、第十一回は組み合わせ型モデル、第十二回は産業構造の変化、そして、第十三回では経営者の視点で整理をしました。
今回は、ベンチャー企業の視点で整理をしてみたいと思います。
クラウドの進展は、必要な時に必要な分だけリソースを使えることで、ベンチャー企業にとっても、事業を立ち上げる上で有効なツールといえます。
クラウド事業者の多くは、ベンチャー企業を支援するために開発者向けのコンテスト等を開催し、優秀な開発者には、開発支援や投資支援、コワーキングスペースの提供、そして、クラウド環境の提供を行うなど、将来の成長が見込まれる顧客に対しての支援を行っています。
たとえば、AWSではAWSクラウドを使ったビジネスの革新性を競う起業家向けコンテスト「AWSスタートアップチャレンジ」を開催し、世界各地域からファイナリスト15社を選抜後、1社をグランプリとして表彰しています。
その他にも、KVHが「東北応援アプリケーション開発コンテスト」やGMOクラウドやマイクロソフト、NTTコミュニケーションズのオープンラボ等、様々なクラウド事業者が、開発者向けのコンテストや支援プログラムを実施し、ベンチャー企業の起業や成長を支援しています。
最近ではAWSが2012年4月6日に「アマゾン リーンクラウド エボリューションセミナー」を開催しています。本セミナーでは、"リーンクラウド (Lean Cloud)" をテーマにスタートアップ企業、インキュベーター、VCといった起業や、新規事業をする大企業などに対して、事業の立ち上げからクラウドとリーン・スタートアップがどのように寄与するのかを理解を深めるためのイベントで、国内においてもリーン・スタートアップが一躍話題となりました。
リーンス・タートアップとは、「リーン・スタートアップ」は起業家だけでなく大企業にも有効から引用すると、
短期間で仮説の検証とピボット(小さな方向転換)を繰り返し、繰り返しが可能なビジネスモデルを発見するプロセス。
となっています。つまり、新規事業を立ち上げるにあたって、設計に時間をかけるのではなく、アイデアをすぐに小さい段階で実践に移し、ユーザからの声で方向転換したり事業を加速させていくというモデルになります。
リーン・スタートアップとクラウドとは親和性が高く、企業の成長や事業拡大にあわせてコンピューティングリソースの増減が可能となり、より効率的なリソース環境でサービス開発ができ、自社のシステムの運用構築などに稼働から解放され、自社のコア業務や顧客の利益になる業務に集中することができます。
サービス自体がユーザにとって利用価値の高いものであれば、企業規模に関係なく、リソースを増やしていくことで事業の拡大ができます。さらに、Animotoがフェイスブックの連携により急速に事業を拡大していった事例のように、クラウド・エコシステムに組み込まれていれば、巨大なプラットフォームの恩恵を受け、グローバルにサービスを提供し、事業を拡大していくことが可能となります。
クラウド・エコシステムの進展と、リーン・スタートアップにより、ベンチャー企業にとっては起業する上で追い風となっています。
一方、クラウド事業者にとっては、斬新なアイデアを持ち開発力を持つベンチャー企業を自社のクラウド・エコシステムに取り込んでいくことが、クラウドビジネスの持続的な成長を支える上で、益々重要な取組みとして位置付けられていくでしょう。
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※担当キュレーター「わんとぴ」
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