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クラウド・エコシステム(8)クラウド・エコノミクスの視点

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第一回はクラウド・エコシステムの概要、第二回は登場の背景、第三回は注目される6つの理由、第四回はSIビジネスの今後、第五回はコミュニティの存在、第六回はクラウドを推進する団体、そして第七回ではオープンクラウドについて整理をしてきました。

今回は、クラウド・エコシステムを形成する上での経済的な視点、クラウド・エコノミクスの視点で整理をしてみたいと思います。

クラウドはテクノロジーから経済の視点へ

クラウド関連技術は、様々なレイヤの技術が成熟し、構想やビジネスモデルの具体性を帯びてくると、クラウド・エコスシステムの環境構築と整備とともに、経済の視点、つまり、クラウド・エコノミクスの視点が重要になってくると考えています。

Agilecatさんの「Open Compute が創りだす、新世代 Web のためのビジネス・モデルとは? 」の記事の中では、

5月 2日・3日に San Antonio の Rackspace HQ で開催された Open Compute Summit では、そこで実現されるテクノロジーやファシリティというより、経済とエコシステムの方が、議論の中心になっていたように感じました。 昨年10月に NY で開催されたサミットと比べて、Open Compute 構想が具体性を帯び、また、支持を集めていることの表れなのでしょう。

とあるように、テクノロジーから、経済とエコシステムが議論の中心になっていると感じていると指摘されています。

今後、クラウドが普及し、持続性のあるビジネスモデルを展開していくためには、クラウド・エコシステムを構築するとともに、クラウド・エコノミクスといった経済圏を形成し、事業者やユーザがそれぞれ持続的に恩恵を受けられ、かつ、産業の発展にもつながる事業構造や経済圏の形成が重要となってきます。

「クラウドエコノミクス」と「クラウドエコシステム」のブログでもご紹介をさせていただきましたが、3年以上前にクラウドコンピューティングが注目された時期は、ユーザへのソリューションやサービスを売り込むためのマーケティング用語として、多用するケースが多くみられました。

現在では、利用ユーザは、クラウドにマイグレーションし、事業を効率化し、収益に貢献できるか、ということが重要になっています。また、クラウド事業者は、中長期的に収益を得られるモデルを構築していく必要があります。

クラウドの場合は、ユーザ側は、従量制で最新の高機能なサービスが利用できるというメリットがありますが、事業者側は、データセンターへの投資、大規模なサーバ等の投資による規模の経済(スケールメリット)を働かせながら、コスト評価やROI(投資収益率)を見ていく必要があります。

通常のシステム構築などのソリューションビジネスは、比較的短期で投資の回収が見込めますが、クラウドビジネスの場合は、グローバルマーケットも視野にいれつつ、大規模な投資の中で、中長期的な視野で黒字化など収益の回収を見込んでいく必要があります。

クラウドビジネスで成功している事業者は、たとえば、AmazonのECサイトのように、他の事業で安定した収益を確保しつつ、クラウドビジネスに参入して全体の販売額比率は低いものの、急成長を遂げ収益を確保しようとしています。

クラウドビジネスへの参入は、こういった様々な事業環境を視野にいれるつつ、中長期的な事業の柱にしていくための、クラウド・エコシステムの構築と、経済圏をつくるための、中長期な視点が必要となり、経営的にも大きなチャレンジにもなると考えられます。

途中で経営陣が変わり、ビジネスの事業環境が変われば、クラウドビジネスに対して大きな方針変更を余儀なくされる可能性も否定できません。

以上のように、クラウドは、技術動向やサービス動向だけでなく、市場経済の動向を踏まえた上で、規模の経済や範囲の経済など、クラウド・エコノミクスという視点も重要となってきます。

クラウドビジネスの今後の普及に向けて、技術(テクノロジー)の視点だけでなく、クラウド・エコシステムのように事業者同士でWin-Winの関係を構築し、業界のイニシアティブをとり、さらに、人的なネットワークも重要となります。

そして、クラウド・エコシステムという視点を持ち、クラウドのテクノロジー動向を理解しつつ、ビジネスや経済の視点で事業を考え、ビジネスをリードできる会社、そして、それを支える人材が益々重要になっていくのかもしれません。

 

※担当キュレーター「わんとぴ

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