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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

クラウド・エコシステム(17)教育クラウド

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第一回はクラウド・エコシステムの概要、第二回は登場の背景、第三回は注目される6つの理由、第四回はSIビジネスの今後、第五回はコミュニティの存在、第六回はクラウドを推進する団体、第七回はオープンクラウド、第八回はクラウド・エコノミクス、第九回はソーシャルキャピタル、第十回はグローバル市場、第十一回は組み合わせ型モデル、第十二回は産業構造の変化、第十三回は経営者の視点、第十四回はベンチャー企業の役割、第十五回は政府の役割、そして、第十六回では自治体クラウドについて整理をしてきました。

今回は、教育分野においても教育の情報化やクラウド活用のあり方の実証や導入が始まっている教育クラウドについて、これまでの取り組みを交えながら整理をしてみたいと思います。

フューチャースクール推進事業

総務省が2010年5月6日に公表した「原口ビジョンⅡ 」には、「2020年までに、フューチャースクールの全国展開を完了」という目標設定が掲げられています。 総務省と文部科学省では2010年度から、連携プロジェクト「フューチャースクール推進事業」実施し、タブレットPC、デジタル教材(電子教科書)等を活用し、児童・生徒が互いに学び合い、教え合う「協働教育」についてガイドライン化(2010~12年度)し、ガイドラインに基づき全国展開を計画的に推進するとしています。

総務省は、フューチャースクール推進事業を実施するにあたって、2010年5月24日、ICT環境の構築や授業での具体的なICTの利活用方法等について検討し、ICTを利活用した協働教育推進のためのガイドライン(手引書)を策定することを目的として「ICTを利活用した協働教育推進のための研究会」を設置しています。

フューチャースクール推進事業は、2010年は東日本と西日本の地域で公立小学校5校ずつが選ばれ、電子黒板や児童1人1台のタブレットPCが配られ、校内LANなどのICTやクラウド環境が整備された中で授業を行い、技術的課題などを検証した調査研究報告書を公表しました。

これらの検証結果をもとに、総務省は2011年4月8日、「教育分野におけるICT利活用推進のための情報通信技術面に関するガイドライン(手引書)2011」を公開し、ICT環境の導入から運用まで、学校におけるICT環境の整備と利活用にあたっての内容が網羅されています。フューチャースクール推進事業は、今後2年間継続される予定で、新たな実証校として中学校や特殊支援学校が追加され、全国普及に向けた実証やガイドライン作りが行われています。

文部科学省では、総務省でのフューチャースクール推進事業の実証の結果や、文部科学省が主催している「学校教育の情報化に関する懇談会」での検討などを踏まえ、2011年4月28日、学校教育の情報化に関する総合的な推進方策をまとめた「教育の情報化ビジョン」を公表。学校教育の情報化の着実な推進に向けては、ハードに偏重することなく、ソフト・ハード・ヒューマンの総合的な計画と推進体制を重視しています。

本ビジョンでは、クラウドの活用に関して、デジタル教科書・教材の利用にあたって、将来的には、クラウド技術を活用してデジタル教科書・教材を供給・配信するとし、校務の情報化においてもクラウド技術の活用について試行的な取組を行いつつ検証、全国ベースの管理運営体制の検討をするとしています。校務分野におけるクラウド活用においては、総務省が2010年10月、「校務分野におけるASP・SaaS事業者向けガイドライン」を策定し、校務のクラウド化に向けた支援をしています。

2012年4月10日には、平成23年度「フューチャースクール推進事業」の成果を踏まえ、教育分野におけるICT環境の構築や運用、利活用の際の情報通信技術面に関わるポイントや留意点について、教育関係者の具体的な取組の参考とするために、「教育分野におけるICT利活用推進のための情報通信技術面に関するガイドライン(手引書)2012」の策定を公表しました。

総務省は2012年5月31日、「フューチャースクール推進研究会」第4回会合を開催し、2011年度のフューチャースクール推進事業の成果を報告しました(関連記事)。

また、2012年度内の調査項目(小学校)では、主に「学習履歴の記録・活用」「予算制約下でのICT環境の段階的な構築と利活用」「紙とデジタルの連携」「ICT機器及びネットワーク環境に関する要件」の4つの項目の調査を予定しています。

ジャパン・クラウド・コンソーシアム(JCC)での教育クラウドWGの取り組み

ジャパン・クラウド・コンソーシアムでは2011年4月22日、第一回教育WGを開催し、今後の活動計画を示している。本WGでの目標は、2010年5月22日に公表された「スマート・クラウド戦略」での教育クラウド活用例をもとに、SaaSなどを通じた経費節減や負担軽減や教材やナレッジデータベースのクラウドを介した全国提供などの事例分析と検討課題に対する提言を行っていくとしています。

教育現場のICT利活用促進には、電子教科書・教材や情報機器の統合管理や、電子教科書・教材からクラウドの各種機能を利用するために必要なプラットフォームの標準化やコンテンツフォーマットの高度化などの実現に向けた整備が有効かつ急務の課題となっていると指摘しています。教育クラウドの普及には、これらの標準化やフォーマットの整備などの対応を急ぐ必要が考えられます。

デジタル教科書・教材協議会(DiTT)の設立

デジタル教科書・教材の普及に向けて、産学官により2010年7月「デジタル教科書・教材協議会(DiTT) 」が設立されました。本協議会では、デジタル教科書・教材の開発と普及を目的に、課題整理、政策提言、ハード・ソフト開発、実証実験及び普及啓発を推進しています。DiTTは2011年4月25日、「DiTT第一次提言書」を公表し、クラウドでは、教育クラウドの早期導入を目指し、政府と民間は、教育クラウドの標準化・普及を推進する戦略を協議・立案することを提言しています。

また、2012年6月5日、デジタル教科書に関するシンポジウムにて、ジタル教科書を正規の教科書として認めることなどを盛り込んだ「デジタル教科書法案」を発表しています。

本提言で触れられているように教育クラウドの導入によるメリットは、自治体や学校における運用コストの削減や校務の効率化に加えて、膨大な情報や知識を収集し、共有することができます。また、教科書や教材の配信や、学習履歴の集積や共有、そして解析ができ、教育分野において親和性の高い知識社会基盤を構築することが可能となります。

また、学校などの教育機関は、入学式や夏休みなど、サービスの使われ方に季節性があり、クラウドのような柔軟なコンピュータリソースを使えるような形態のほうが、メリットが高いといえるでしょう。

教育クラウドの導入が始まる

実際に、教育クラウドの導入も始まっています。教育家庭新聞の記事では、校務システムを中心に、横浜市、広島市、東広島市、高松市、北海道などの事例が紹介されています。たとえば、横浜市では市内小学校の教育基盤をクラウド化し、本年度から全小学校で成績処理システムが稼働を開始しています。また、中学校では、2013年度から名簿や通知表の作成、管理を一元化する校務支援システムの利用をスタートできるよう対応を進めています。

また、大阪市教育委員会は2012年6月2日、市立小中学校での情ICT教育充実のため、児童・生徒に授業用のタブレットを配布する方針を決めています。2013年度から7校のモデル校で始め、15年度以降に全市約430校で実施する予定です(関連記事)。全校で導入すると毎年約50億円が必要となり、公立の全小中学校に配布するのは全国でも異例となっています。タブレットの配布になれば、クラウドとの連携も重要となるでしょう。

教育クラウドの今後の展開

教育クラウドは、JCCの教育クラウドWGやDiTTでも指摘されているように、学習用プラットフォームやフォーマットの標準化や、児童の学習レベルへの対応や障害にも対応できるユーザビリティの向上など、標準化とユーザの利便性の対応が必要となります。

また、配信方法や端末の管理、そして情報教育のあり方などの課題も山積しており、子どもたちの視点にたって環境を整えていく必要があります。

文部科学省の「教育情報化ビジョン」では、21世紀にふさわしい学び・学校と教育の情報化の果たす役割として、ICTを活用して、一斉指導による学びに加え、子どもたち一人一人の能力や特性に応じた学び(個別学習)、子どもたち同士が教え合い学び合う協働的な学び(協働学習)を推進していくことがあげられており、ソフト・ハード・ヒューマン一体となって総合的な推進が求められています。

教育クラウドの環境においては、教育クラウド上にオープンなAPI(Application Program Interface)やSDK(Software Development Kit)を公開し、教科書会社や教材会社などの民間事業者が容易に参入できる環境を整え、教育クラウド上のエコシステムを形成することが期待されます

そして、児童の学習用の端末は、iPadやAndroidOS搭載のタブレット端末など、マルチデバイス化することが予想されるため、これらに対応した教育クラウド環境を構築することが必要となるでしょう。

教育クラウド・エコシステムを構築することで、教科書・教材コンテンツが充実し、児童・生徒の学力の向上に寄与するとともに、学校や保護者、そしてサービス事業者にとってもメリットの高いものとなり、一気に普及につながり、本当に子どもたちが使いやすく学力向上につながる環境が整備されることが期待されるところです。

 

※担当キュレーター「わんとぴ

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