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クラウド・エコシステム(35)オープンクラウドを推進するOpenStack、CloudStackとは

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OpenStackとCloudStackを中心にオープンクラウドの動きについて整理をしたいと思います。 

フルオープンな開発スタイルと多数の事業者が参加する「OpenStack」プロジェクト

OpenStackプロジェクトは、2010年7月、RackspaceとNASAが中心となって開始しました。Dell、RightScale、インテル、AMD、NTT、NTTデータなどが参加し、すでに110社以上がプロジェクトに参加しています。

OpenStackのオープンソース化の狙いは、業界標準の推進、ベンダー・ロックインの回避、クラウド技術のイノベーションの促進などを目的としています。 

OpenStackは、アマゾンクラウドに相当するIaaS(Amazon EC2相当)やオブジェクトストレージ(Amazon S3相当)を構築できるオープンソースのクラウド基盤ソフトウェアで、OpenStack仕様に準拠したIaaSであれば、同じAPIによる管理が可能となります。また、Amazon EC2/EBS(Amazon Elastic Block Store)、Amazon S3互換APIを装備しています。 

OpenStackプロジェクトでは2012年4月5日、OpenStack の5回目となるメジャーリリースとなるOpenStackの最新版「OpenStack 2012.1」(コードネーム、Essex)を公開しています。ユーザーインタフェースであるDashboard(Horizon)と統合認証システムであるIdentity(Keystone)の2つがコアコンポーネントとして新たに追加され、150もの新機能や改善が行われています。 

2012年4月12日には、Rackspace 、AT&T、HP 、Red Hat、IBM など19社の企業や団体の参加による「OpenStack Foundation」が設立されています。

OpenStackプロジェクトは、開発やコミュニティの活動の緩やかな管理でしたが、今回の非営利団体でベンダー中立の立場をとる財団の「OpenStack Foundation」の設立により、ガバナンス体系をとり、技術や財務での支援を行うことで、より多くの企業がOpenStackを採用していくことが期待されています。 

OpenStackを採用する事業者も相次いでいます。米HPは2012年4月、OpenStackを採用したパブリッククラウド「HP Cloud」の公開ベータ開始を発表。日本国内においてもパブリッククラウドの「HP Cloud」を2012年5月から公開ベータを開始しています。 

今後もAT&Tやドイツテレコム、デルなどもOpenStackを採用したクラウドサービスやクラウドソリューションの提供を予定しており、2012年はOpenStackを商用サービスとして採用する事業者が一気に加速することが予想されます。

 

豊富な商用導入実績、Apache 2.0に寄贈した「CloudStack」プロジェクト 

OpenStackと人気を二分しているのがCloudStackです。当初はベンチャー企業のVMOps, Incから始まり、2010年5月にリリースされたバージョン2.0でのリリースをきっかけに、社名をCloud.com Incに変更しています。2011年7月12日には、Citrix Systems, IncがCloud.comを買収し、CloudStackのオープンソース化をしています。 

2012年4月3日にはCitrix Systemsが、CloudStackのApache Software Foundationへの寄贈を発表し、ライセンス形態はGPLv3からCloudStack3.01以降はApache 2.0 licenseに移行しています。Apache Software Foundationの能力主義的なガバナンスモデルのもとで、CloudStackはオープンソースから、開発の自由度の高いオープンコミュニティへの大きな前進を遂げています。 

CloudStackのApache Foundationへの寄贈に伴い、シトリックスが提供する商用版は、「Citrix CloudPlatform, powered by Apache CloudStack」(以下、Citrix CloudPlatform)に名称変更しています。 

CloudStackは、Ajaxベースのリッチで操作性の高いGUIを備え、機能性と拡張性に優れ、IaaSクラウド環境を構築するのに必要な機能と安定性を備えています。業界標準のCloudStack APIとAmazon EC2/S3 互換のAPIを備え、さらに、LoadBalancerやFirewallなどが標準装備など複数のネットワークモードを備え、機能拡張に優れた構成となっています。 

また、パブリッククラウド、プライベートクラウド双方で構築可能で、パブリッククラウド事業者、そしてプライベートクラウドを構築するSI事業者、そして、APIを経由してサードパーティーが参加するといったように、多種多様な事業者が、CloudStackのエコシステムに参加できるメリットもあります。 

CloudStackは、多くの商用導入実績があり、Apache 2.0への移行に伴い、開発の自由度が高まり、今後も採用する事業者はさらに増加することが予想されます。 

事例では、国内では、NTTコミュニケーションズの「Bizホスティング Cloudn」やIDCフロンティアがパブリッククラウドサービスとして提供しており、北海道大学でのアカデミッククラウド、そして、SCSKやユニアデックスなどのSIベンダーによるプライベートクラウドの提供など、多くの採用実績があります。 

海外では、タタコミュニケーションズやKT(コリアテレコム)、ゴーダディ(Go Daddy)などの事業者がCloudStackを採用しており、今後もグローバル規模でCloudStackの採用が増加していくことが予想されます。 

こういった状況の中、シトリックスは、2012年7月20日(金)に「CloudStack Ecosystem Day」の開催を予定しています。「Citrix XenServer」、「Citrix NetScaler」、「Citrix CloudPlatform powered by CloudStack」などの自社のソリューション紹介のほか、S3API準拠クラウドストレージ「Cloudian」やUShareSoft、サーバー構成管理ツール「Chef」、クラウドセキュリティプラットフォーム「enStratus」、PaaSソリューションのEngine Yardなど、多数のサードパーティーが参加するイベントを用意し、CloudStackを中心としたクラウド・エコシステムの展開を進めています。 

翌日の7月21日(土)には、「CloudStack Developer Day」を開催し、開発者向けにCloudStackの詳細アーキテクチャーの解説、CloudStack APIの使用方法、CloudStackコミュニティーでのコントリビューション方法(開発環境のセットアップから、パッチの作成、UIのカスタマイズ等)に関する説明などを実施する予定で、CloudStack上で開発できる人材育成を進めています。 

さらに、CloudPlatform、CloudPortal Business Managerを中核とした、クラウドサービスを提供する優れたパートナーを認定する「Citrix Cloud Advisor(CCA)プログラム」を設け、100社以上のパートナーを認定し、パートナーとの協業によるエコシステムを通じて、ユーザーにとっての利便性の高いクラウドサービスソリューションを提供する環境を整備しています。 

 

OpenStackとCloudStackを追いかけるオープンソースプロジェクト 

オープンソースのIaaS基盤ソフトウェアは、OpenStackとCloudStackだけではありません。カリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究プロジェクトとして誕生し、AWSと提携を発表し、プライベートクラウドでは世界で最も多くの導入実績がある「Eucalyptus」。2005年にスペインの大学で学術プロジェクトとして始まったソフトウェアで現在ではスペインC12G Labsのほかマイクロソフトの出資も受けている「OpenNebula」。そして、2009年4月に日本初のオープンソースのクラウド基盤ソフトウェアのプロジェクトとして始まった「Wakame」などがあります。 

 

OpenStackとCloudStack間の競争 

OpenStackとCloudStackは、オープンソースのクラウド基盤ソフトウェアにおいて人気を二分しています。AWSとのクラウド・エコシステムに対応する以前に、まずは、オープンソースのクラウド基盤ソフトウェアの領域において、テクノロジーリーダとなる必要があります。 

では、OpenStackとCloudStackがそれぞれどのような評価をされているのか、いくつか例をご紹介したいと思います。 

ブロガーのチン・ジャン(Qingye Jiang)氏は2012年4月1日、OpenStack、CloudStack、Eucalyptus、OpenNebula」に関して「コミュニティの活発さ」を分析する調査を行い、自身のブログで公開しています(関連記事)。 

コミュニティにおけるトピック数ではOpenStackが最多の250トピック、CloudStackが200と続いています。OpenStackに関しては、2012年4月5日のバージョンアップ(開発コード名:Essex)を控えて、開発者たちがコードのバグ修正に関する情報をやり取りしていた時期だったことを考慮すると、ほぼ拮抗していると考えられます。 

国内での評価例もご紹介しましょう。「オープンクラウド実証実験タスクフォース(OCDET)」は、2012年5月にオープン実証実験タスクフォースセミナーを開催し、オープンクラウドへの評価についてアンケートを実施しました。アンケート回答数62に対して、OpenStackとCloudStackへ関心があると応えたユーザは、37と同一の1位となっており、その他の評価を見ても優劣がつけられない状況となっています。 

しばらくは、多くのオープンソースのクラウドを支持する開発者は、OpenStack と CloudStack の双方のメリット、デメリットをじっくり見極めながら、どちらが抜け出してもキャッチアップできるようリスクヘッジをしておく必要があるでしょう。 

OpenStack と CloudStackのどちらが一歩前に抜け出すのか、この1,2年の動きが、今後のオープンクラウド、そしてクラウド業界の行方を左右するといっても過言ではないでしょう。


オープンクラウド入門 CloudStack、OpenStack、OpenFlow、激化するクラウドの覇権争い (Next Publishing(Cloudシリーズ))

 

 

※担当キュレーター「わんとぴ」 

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