クラウド・エコシステム(13)経営者の視点
第一回はクラウド・エコシステムの概要、第二回は登場の背景、第三回は注目される6つの理由、第四回はSIビジネスの今後、第五回はコミュニティの存在、第六回はクラウドを推進する団体、第七回はオープンクラウド、第八回はクラウド・エコノミクス、第九回はソーシャルキャピタル、第十回はグローバル市場、、第十一回は組み合わせ型モデル、そして第十二回では産業構造の変化について整理をしました。
今回は、クラウド・エコシステムにおける経営者の視点で整理をしてみたいと思います。
クラウドコンピューティングの進展とコモディティ化に伴い、クラウドのテクノロジーそのものよりも、ビジネスの視点や、グローバルなクラウド・エコシステムを企業戦略としてどのように展開していくか、という経営者視点による対応が重要となってきます。
クラウドの管理を技術者まかせにしてはいけない : それは 経営者の務めである
の記事には、
クラウド・マネジメントとは、それぞれの企業における方向性と政策を効果的に表明する能力を、そのオーナーに与えるためのプラットフォームである。さらに言えば、それらの企業が抱える無数のテクノロジー・ソリューションを、国境をまたいで安全に展開するためのプラットフォームでもある。
と書かれています。この記事で指摘されているクラウド・マネジメントは、クラウド・エコシステムにも置き換えることができ、国境をまたぐ、複数の事業者との連携によるクラウド・プラットフォームを構築することで、その企業の事業の方向性と政策を対外的に表明し、エコシステムとしてのプレゼンスを高めていくことがポイントとなるでしょう。
本記事のクラウド・マネジメント・プラットフォームが行うべき事柄として、
・多様なクラウドを管理していく能力
・複数のクラウドをまたいでポリシーを管理
・作成から廃棄までの全ライフサイクルの把握
・運用プラットフォームの統合 (monitoring, billing, etc.)
・共通のツールとスクリプト言語に対応する API の実現
これらの重要な要因には、クラウド・マネジメント・プラットフォームが、IT の構成を捉えるための方式と、新しい方向に舵を切らせるための思考が、含まれているはずであると指摘されています。
つまり、多様なクラウドを管理し、全体のポリシーによる全体最適化、と全ライフサイクルを管理し、API提供による第三者の事業者との連携により、クラウド・エコシステムを請求処理から運用まで全体を統合する運用プラットフォームとして稼働させ、エコシステムの事業ドメインの拡大とともに、持続性を高めていくという営みが重要となってきます。
クラウド・エコシステムの構築と展開には、組織のスクラップ&ビルドも必要となり、経営者の力量が問われているといえます。本記事では、
CIO は、組織の構築と再編について考える必要がある。 具体的には、どのように IT サービスを提供するかであり、また、組織の機能とエンドユーザーのレベルに合わせて、ビジネスを統合していくことである。 そして、クラウド・マネージメント・プラットフォームを導入するための、要件に優先順位を付けていくプロセスにおいて、組織的な変化が重要なファクタになるとは考えていなかったことを、認めなければならない。
とあるように、サービス提供の形態や、ユーザニーズにあわせたビジネスの統合、クラウド・マネージメント・プラットフォームを導入するための優先順位づけ、それに伴う組織の構築と再編の必要性が指摘されています。
クラウドにおける議論は、これまでテクノロジーに関する議論が中心でした。しかし、テクノロジーがコモディティ化することで、組合せ型モデルであるクラウド・エコシステムが重要となっています。それらを実現するためには、テクノロジーの選択肢のみならず、サービスの組み合わせや、持続的に成長するモデル創造、そして、投資判断や組織の再設計など、経営者が率先的に取り組むべきテーマが多くを占めています。
クラウド・エコシステムが進む中で、経営者がクラウド・エコシステムについて理解を深め、それを企業戦略として事業を展開するための経営力が問われているのかもしれません。
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※担当キュレーター「わんとぴ」
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