クラウド・エコシステム(28)スマートテレビ市場をリードするのは?
スマートテレビの展開に向けて各社対応を急いでいます。「スマートテレビの台頭」に続いて、今回はGoogle TVなど、スマートテレビの市場をリードする事業者の取り組みについてご紹介をしたいと思います。
スマートテレビで市場をリードする?「Google TV」
中でも注目されるのが、グーグルが提供する「Google TV」です。
出所:「Google TV」 トップページ
グーグルは2010年5月、グーグル開発者会議にて「Google TV」を初めて公開しました。「Google TV」はテレビ向けにカスタマイズしたAndroid OSを搭載しています。グーグルはAndroid OS をテレビにも提供することで、オープン化を進め、エコシステムの強化を急いでいます。
Google TVの主な機能には、Chromeブラウザーによるウェブサイト閲覧、総合サーチエンジン機能、アンドロイドアプリの動作、Amazon VODやNetflixなどのオンデマンド映画視聴、YouTube動画、Napsterなどの音楽サービス機能などがあります。
「Google TV」の最も採用が早かったのが、ソニーです。ソニーは2010年10月にソニーのTVにGoogle TVを搭載しアメリカで販売しています。また、ソニーは、タッチパッドとキーボードを搭載した新リモコンを採用したプレーヤー2機種を、今年初夏から北米・欧州を皮切りに順次発売すると発表しています(リリース記事)。
Google TV from Sony Arrives in Store July 2012
そして、グーグルは2012年6月24日、これまで米国のみの販売だったものをSony Europeが、英国を皮切りに、オーストラリアとブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、メキシコ、オランダでも展開する計画を公表しました(関連記事)。
Google TV Demo Video - International
中国市場へのスマートテレビの動きも注目です。パソコンメーカーのレノボは、Android 4.0搭載のスマートテレビ「Kシリーズ」を中国で販売していまします(関連記事)。
「Kシリーズ」には、30種類のコンソールレベル型のゲームがプリインストールされており、中国の大手メディアグループSMGとのジョイントベンチャーISmartvでVODサービスを提供。さらに、独自のアプリストアLe StoreでゲームやSNSアプリを提供しています。
レノボは中国において強いブランド力を持つため、Androidを搭載した安価なテレビを導入することで、市場シェアの確保を急いでいます。
しかしながら、「Google TV」が順調に普及しているとは言い難い状況です。
2011年の末に、グーグル会長のエリック・シュミット氏は
2012年の夏までには、店頭に並ぶテレビの大半にGoogle TV機能が組み込まれる
とコメントされていますが、現時点では、そこまでのシェアには至っていないのが現状です。
Googleは、今週開催する開発者向けのイベントである「Google I/O」において、パートナー企業によるGoogle TVの最新活用事例を紹介するとしており、今後のパートナー企業との連携によるシェア拡大の取り組みが注目されるところです。
スマートテレビ市場を牽引する韓国サムスン電子、LG電子
早くからスマートテレビ事業に力をいれているのが、サムスン電子とLG電子の韓国勢です。2010年ごろからスマートテレビのキーワードを使いはじめ、2011年のCESからは、大々的にキャッチフレーズとして利用し、日本メーカーに先駆けて方針を示し、マーケティングを展開することによって、市場をリードしようとしています。
北米市場でのテレビシェア1位を獲得している韓国のサムスン電子は、2010年7月には世界初のテレビ専用アプリストア「Samsung Apps」を提供開始し、2012年1月時点で、「Samsung Apps」には1,400のアプリが用意されており、世界中で毎日5万件がダウンロードされているといいます(関連記事)。
出所:「Samsung Apps」トップページ
サムスン電子はスマートテレビのエコシステムの展開において、スマートテレビ向けのコンテンツの充実に獲得に力をいれ、アメリカケーブルTV で強みを持っているComcast、Time Warner Cable、Huluなどと提携を結んでいます。
2012年中には、人気ゲーム「Angry Birds」や「AOL HD」「CNBC Real-Time」「Hulu Plus」「MLB.TV」「Netflix」「Wall Street Journal Live」などの人気アプリが随時追加されていく予定です(関連記事)。
また、サムスンは、スマートテレビのグローバル展開向けて、各国のローカルコンテンツ獲得にも力をいれています。
さらに、サムスン電子は2012年6月5日には、クラウドベースのオンラインゲームプラットフォームを手がける米Gaikaiとの提携によりクラウド型のゲーム配信サービス「Samsung Cloud Gaming」を発表しました。
出所:「Samsung Cloud Gaming」
サムスン製の高画質LEDテレビを搭載した一部のスマートテレビに対応しており、「Smart Hub」メニューからアクセスしゲームを試してから購入することができます(関連記事)。
一方、LG電子は、2012年6月からはLinuxをベースにした同社独自のプラットフォームによる「LG Smart TV」を日本市場から発売しています(関連記事)。LG電子は、日本では2014年までにシェアを5%獲得を目指しています。
LG電子の「LG Smart TV」には、現在205本のアプリが用意され、専用のアプリストアからダウンロードして利用できる予定で、今後もアプリを充実させていいく予定です(関連記事)。
アップルのスマートテレビは?
アップルは2007年3月、iTunesと連係するセットトップボックス型テレビの販売を開始し、2010年9月にはサイズを1/4に、価格を 1/3に抑えた第二世代のセットトップボックス型Apple TVを販売してきました。
アップルの元CEOのスティーブ・ジョブズ氏の評伝「スティーブ・ジョブズⅡ 第40章」には、
とっても使いやすいテレビを作りたいと思っているんだ。ほかの機器やiCloudとシームレスに同期してくれるテレビをね」そうすれば、DVDプレイヤーやケーブルテレビのややこしいリモコンで苦労することもなくなる。
と、ジョブスのクラウドとシームレスにつながるテレビへの強い思いがこめられています。
アップルは2012年3月16日、新型「Apple TV」を8,800円で発売しました。
出所:「Apple TV」トップページ
しかし、あまり大規模なアップデートにはなっておらず、iPhoneやiPadと比べるとあまり大きな話題とはなっていません。
各種メディアでは、「iCloud」が利用でき、「Siri」インターフェースアップル製のスマートテレビ「iTV」の発売が絶えずうわさされています(関連記事)。iPhoneやiPadで形成した膨大なコンテンツエコシステムをバックに、「iTV」が発売されば、スマートテレビ市場において一気に主役に躍り出ることでしょう。
日本勢は?
スマートフォンやタブレットなどと同様に、Android OSを搭載したスマートテレビやApple TVがスマートテレビのプラットフォームの覇権を握る可能性が十分に考えられる一方、日本勢もスマートテレビにおいて追い上げを見せています。
パナソニックのスマートテレビの「スマートビエラ」は、「ビエラ・コネクト」というアプリの機能がまとめられた機能を提供しています。
出所:「ビエラ・コネクト」トップページ
VODや電子書籍、ソーシャルメディア、ゲームなどが利用できるようになっており、「ビエラ・コネクト マーケット」から追加することができます。パナソニックは家電メーカーの強みを生かして、スマートフォンや別の部屋ビエラからもWi-Fi経由で見られるなどの機能を充実させています(関連記事)。
日本勢の取り組みについては、折を見てもう少し整理をしてみたいと思います。
次回はスマートテレビにおけるプラットフォーム争いについて、整理をしてみたいと思います。
- (1)クラウド・エコシステムとは何か? (2012.5.14)
- (2)登場の背景 (2012.5.15)
- (3)注目される6つの理由 (2012.5.16)
- (4)SIビジネスの行方 (2012.5.17)
- (5)コミュニティの存在感 (2012.5.20)
- (6)クラウドを推進する団体 (2012.5.21)
- (7)オープンクラウドの展開 (2012.5.23)
- (8)クラウド・エコノミクスの視点 (2012.5.24)
- (9)エコシステムにおけるソーシャル・キャピタルの役割 (2012.5.25)
- (10)グローバル市場へ (2012.5.28)
- (11)全体最適化志向の「組み合わせ型」モデルへ (2012.5.29)
- (12)産業構造の変化と新規ビジネスの創出 (2012.5.30)
- (13)経営者の視点 (2012.5.31)
- (14)ベンチャー企業の役割 (2012.6.1)
- (15)政府の役割 (2012.6.4)
- (16)自治体クラウド (2012.6.5)
- (17)教育クラウド (2012.6.7)
- (18)医療クラウド (2012.6.8)
- (19)コネクテッド・エコノミー (2012.6.11)
- (20)ユーザドリブン (2012.6.12)
- (21)クラウド・イノベーションによる新たな価値創造 (2012.6.14)
- (22)ベンチャー企業とベンチャーキャピタル (2012.6.15)
- (23)ソーシャルゲームビジネス<前編>(2012.6.19)
- (24)ソーシャルゲームビジネス<後編>(2012.6.20)
- (25)電子書籍ビジネス<前編>(2012.6.20)
- (26)電子書籍ビジネス<後編>(2012.6.21)
- (27)スマートテレビの台頭(2012.6.25)
- (28)スマートテレビ市場をリードするのは?(2012.6.26)
- 「クラウド・ビジネス」入門 電子書籍版 (iTune Store)
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