2001年の「上海経済ツアー」:エピローグ
麻辣湯。すばらしい。字面も。「麻」には痺れるという意味があるらしいですね、舌が痺れるのと辛いのとで満足度200%。
麻辣湯はたぶん東京では食べられないと思うのですが、上海にまた行く機会があったらぜひとも食べたい。基本的には冬の食べ物ですね。
---------------
■■エピローグ 漕渓路の麻辣湯
漕渓路の部屋のそばに「麻辣湯」という看板を掲げた食堂風の店があり、前を通る度に気になっていた。タイ料理が好きであるから辛いものには目がない。店のまん前にガラスの冷蔵ケースがあり、その中にはつくねやイカの類が入っている。その脇にスーパーマーケットの野菜陳列棚を小さくしたようなやつがあり、ほうれん草、ねぎ、その他上海で手に入る葉物の野菜が並べてある。プラスチック製のカラフルなざるが用意してあって、食材の中から好きなのを選ぶシステムになっているらしい。
帰国前日の昼に2時間ほど時間ができたので、意を決して入店してみた。適当に具を選んで、おばさんに渡すと、筆者のざるは10枚ほども積み重ねられた一番下に入れられた。そうして番号札を渡された。先着順で煮てくれるわけだ。値段は17元。この手の店にしては高いが、具を欲張ったためだろう。
調理担当の女の子がぐつぐつ煮立った大鍋の前にいて、客が渡したプラスチックざるの中身を柄の付いた円筒形の金属ざるに空け、白濁したスープの中に浸す。柄付き金属ざるが大鍋の周囲にいくつもぶらさがっていく。日本のラーメン屋が何人前かの麺をゆでるのと同じ手順だ。
平日の昼時で、20人も座ればいっぱいになる長テーブルが2つしかない店内はぎゅうぎゅう。とりあえず、1つだけ空いた席を見つけて座る。母と娘、買い物帰りのおばさんたち、やや不良系に見える男の子4人グループなど、みんな一心不乱に丼の中の具とスープを啜っている。丼は発泡スチロール製の白いふにゃふにゃのやつ。れんげもポリエチレン製でちびていて薄い。箸は上海の食堂でよく見かけるビニールパックに入った竹製。
白濁スープが煮詰まったのか、女店主がポリバケツに入ったベースを持ってきて、大鍋にざざっと空ける。豪快この上なし。
近所のOLらしいちょっとおシャレな三人組がやってきて、斜め向かいに座った。やはり音をたてて啜っている。相当にうまいらしい。
10分ほども待った後で、筆者の丼がやってきた。スープが縁までいっぱいに入っている上に、具がてんこもり状態なので、ウェイターの男の子がテーブルに置く際に汁がかなりこぼれた。とりあえず、近くにあったロールペーパーをちぎって拭く。そうしてスープを味見してみる。すごい。
結論から言うと、これまでに食べたことのあるラーメン、鍋料理、タイすき、中国火鍋、ブイヤベース、そしてトムヤムクンのどれよりも、深くてうまくて辛くておいしい、とにかくおいしい「湯」<とん>だった。まだ寒い時分だったので、鼻水は出るわ、辛くて涙は出るわで、とてもビューティフルな食べ方はかなわないが、実際、最高だった。おなかがいっぱいになった。満足した。これを食べるためだけに上海に行っても損はないと思う。
漕渓路の上海体育館駅そば、徐家匯に向かって左側のファストフード屋が立ち並んでいるあたりにある。(了)
参考リンク:
2001年の「上海経済ツアー」:プロローグ
2001年の「上海経済ツアー」:第一章 上海で誰に会うか
2001年の「上海経済ツアー」:第二章 都市計画が作り上げる街”上海”
2001年の「上海経済ツアー」:第三章 上海で暮らす
2001年の「上海経済ツアー」:第四章 上海B株企業を取材してみた
2001年の「上海経済ツアー」:第五章 彼と彼女は日本が好き?
2001年の「上海経済ツアー」:第六章 親の世代と子の世代
2001年の「上海経済ツアー」:第七章 上海リッチピープル
2001年の「上海経済ツアー」:第八章 “彼ら“ならうまくやれる