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AIOps市場、2029年に200億円突破へ 生成AIとの融合が進展

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株式会社アイ・ティ・アール(ITR)は2025年7月10日、「国内のAIOps/運用自動化市場に関する最新の市場規模予測」を発表しました。発表によると、同市場は2024年度に前年比19.8%増となる86億4,800万円に達し、今後も年平均成長率(CAGR)20.4%という高い成長が見込まれています。

急成長の背景には、企業ITシステムの複雑化と、それに伴う運用負荷の深刻化があります。限られた人員で安定したシステム運用を維持するための解決策として、AIを活用した自動化技術が改めて注目されています。

今回は、AIOps/運用自動化の市場動向、提供形態別の成長の違い、今後の展望について取り上げたいと思います。

効率化と予防のニーズが市場を牽引

2024年度のAIOps/運用自動化市場は、前年比で19.8%の成長を記録しました。ITシステムの大規模・複雑化にともない、運用の効率化や障害の未然防止といったニーズが一層高まったことによるものです。AIOps(Artificial Intelligence for IT Operations)は、AIや機械学習を用いてログやメトリクスなどの膨大な運用データを分析し、障害の兆候を早期に察知することで、プロアクティブな対応を可能にします。

AIOpsは、従来の人手中心の運用では困難だった「予防型保守」への転換を実現。また、システム障害時に迅速な原因特定を可能とすることで、ビジネスへの影響を最小限に抑えることができます。これらの価値が認識される中、AIOps/運用自動化の導入は今後も拡大していくと見込まれています。

SaaS型ソリューションの急成長が加速

市場の提供形態を見ると、SaaS(Software as a Service)型のソリューションが急速に拡大しています。2024年度のSaaS市場は前年比28.2%増と高成長を遂げ、約42億円に達しました。2025年度には、ついに従来のパッケージ型市場を上回ると予測されています。

背景には、初期投資を抑えて迅速に導入できる利点に加え、クラウド基盤によるスケーラビリティや継続的な機能アップデートへの期待があります。加えて、生成AIの進化によって、運用ナレッジの蓄積・共有といった高度な活用もSaaS上で実現可能になっており、パッケージ型よりも付加価値の高いサービスとして企業に受け入れられています。

市場予測によれば、2029年度にはSaaS市場が130億円に到達し、全体市場の過半を占める見通しです。SaaS型の年平均成長率は25.5%と、パッケージ型(14.6%)を大きく上回っています。

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出典:アイ・ティ・アール 2025.7.10

現場の三重苦を解決する「戦略的自動化」

ITRのシニア・アナリストである入谷光浩氏は、AIOpsがもたらす効果について

運用現場が長年抱えてきた業務負担の増加、コスト上昇、属人化という三重苦を根本から解決するソリューション

と指摘しています。

今後は、生成AIとAIOpsの連携によって、運用ナレッジの自動収集や活用の高度化が進むとみられています。具体的には、過去の障害対応データをもとに類似ケースを推論する仕組みや、運用オペレーションの自動文書化といった技術が実用化されつつあります。

これにより、ベテラン運用担当者に頼らざるを得なかった属人的な対応を、標準化・自動化することが可能になります。組織全体の運用スキルの底上げや、人材不足への対応にもつながると期待されています。

今後の展望:生成AIとの融合で新たな進化へ

今後、AIOps/運用自動化市場は、生成AIとの融合を軸にさらなる高度化が進んでいくと見込まれます。これまで主に「検知・通知」や「自動実行」を担っていたAIOpsは、生成AIの導入により「分析・助言」や「ナレッジ蓄積・共有」まで対応可能な統合基盤へと進化していく可能性があります。

一方で、導入にあたっては現場の業務プロセスとの整合性、セキュリティ確保、データの整備といった課題も依然として残ります。IT部門は、単なるツール導入にとどまらず、戦略的に業務全体の最適化を視野に入れた体制づくりが求められています。

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