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20年以上断続的にこのブログを書き継いできたインフラコモンズ代表の今泉大輔です。NVIDIAのフィジカルAIの世界が日本の上場企業多数に時価総額増大の事業機会を1つだけではなく複数与えることを確信してこの名前にしました。ネタは無限にあります。何卒よろしくお願い申し上げます。

自動車関税25%回避戦略:米国で10万人の雇用を創出する建設ワーカーヒューマノイド組立工場への450億ドル投資

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インフラコモンズ代表の今泉大輔です。
本稿は、トランプ大統領が設定した自動車関税25%を回避するために、日本政府がトランプ大統領に提案する「ディール」の「弾」として書いています。

僭越ながら、小職の過去のインフラ案件組成(発電所や海外LNGプラント)の経験と、日本を代表するトップ企業のCXOとエンゲージメントするためのThought Leadershipコンテンツ作成をシスコシステムズ(ダウ平均採用銘柄)で行った経験から、このようなものを記しております。

目的は、自動車関税25%によって大きな影響を受ける自動車メーカー各社、およびその下で生産活動を行っている多数の製造業各社を何とかしたいということと、それらの企業が拠点を置く地域の経済や雇用を守るためです。また、おそらくはお困り中であられる石破茂首相を助けたいという思いがあります。私は石破首相のお人柄が好きであります。

日本政府からトランプ大統領に渡す提案書のドラフト

前投稿の続きです。

政府関係者の方々へ:自動車関税25%を回避するトランプ大統領用ディール:日本が米ヒューマノイド産業に投資→雇用創出←部品供給は日本から

米国政府に対する提案書の英文と日本語のドラフトができました。共有のしやすさの関係から、noteに両方のドラフトを置いています。日本政府からトランプ大統領に向けた提案書という位置付けです。

Draft: JAPAN-US STRATEGIC MANUFACTURING INITIATIVE

ドラフト:日米戦略的製造業イニシアチブ(日本語)

過去にインドネシアのバイオマスエネルギー案件で政府系の方に英語でプロポーザルを書いたことがありますが、今回、ChatGPT、Grok、Claudeの3つでそれぞれに要件を言って書かせた所、Claudeが抜群の出来を示しました。ネットではClaudeの英文が最高だという評価がありましたが、やはりその通りでした。調査報告書はこれまでも何度もChatGPT + ディープリサーチで作成してきて、常にスタンフォード大MBA米国投資銀行勤務数年(年収5,000万円超)の実力を感じていました。しかしビューティフルな公式文書をビューティフルな内容で構成する能力という意味ではClaudeが数段上だと思いました。以下の要素を全て入れ込んで、大統領が読むとインパクト甚大だと思わせる美しい提案書になっています。

・日本政府が米国政府に提案するTesla Optimusアセンブリ工場の投資提案書である。アセンブリ工場はラストベルト各州に建設する。日本(JBIC)からの総投資額は450億ドル。
・1工場あたり1万人、10工場で10万人の雇用創出効果がある。
・製品としてのOptimusはTesla社のブランドでありつつ、アクチュエーターやセンサー等の精密部品は日本の製造業各社から供給することを本投資提案の条件とさせていただきたい。
・Optimusは年間50万人の人手不足があるとされる建設現場で働く建設ワーカーとして最適化させることを提案する。
・1工場で年間20万体、10工場で年間200万体生産できる。建設ワーカー需要を満たした後は世界各国の建設ワーカー需要を満たすヒューマノイドとして米国から輸出するシナリオとする。
・1工場当たり35億ドル〜50億ドルの経済効果をラストベルト各州にもたらす。全体で350億ドル〜500億ドルの経済効果を米国にもたらす。
・雇用創出が主目的であるため、工場の生産ラインは全自動化、無人化を志向せずに、人の力が最大限に生きるトヨタ生産方式を採用した生産ラインとする。

Tesla Optimus生産工場のディテール

昨晩はChatGPTと一緒に、今回の日本政府投資プロジェクトによって建設されるTesla Optimusヒューマノイドアセンブリ工場のディテールを検討しました。

なお、小職はインフラ投資ジャーナリスト時代に(本ブログにその頃の投稿が多数あります)、リアルな発電所複数の建設案件を組成したことがあります(案件概要設定、事業試算、用地選定、地元ステークホルダー交渉等)。東北地区における石炭火力発電所の組成や数々のバイオマス発電所の開業準備等です。従って今回のような土地を取得して工場を建設するという世界でも、具体化のために行うステップはほぼ見えています。さらに現在では、スタンフォードMBA年収5,000万円超のChatGPTが付いているので無敵です笑。

前の投稿にも書きましたが、タンザニアで天然ガスが出るのでそれをLNGにして日本に持って来れば良かろうと考え、タンザニアエネルギー省のガス高官と議論したり、ダルエスサラームのブリティッシュガス事務所を訪問して、意思決定権のあるダイレクターお二人と実現可能性について話し合ったり、それを日本に持って帰ってJBICの方にお会いしたり、東洋エンジニアリング、日揮、千代田化工に持ち込んだことがあります。これは数千億円レベルの案件でした。

そういうことを平気で行ってきた過去があります笑。従って、今回の日本政府による投資プロジェクトも、案件組成屋の小職としては、わりと、普通にできる話です。恐縮ですけれども。

Tesla Optimus組立工場の規模感

・個々の組立プラントはラストベルト各州に建設するものとし、1工場につき1万人の雇用を生む。10工場で10万人の雇用創出。
・出来上がる製品としてのヒューマノイドはTeslaブランドのOptimusだが、部品一切は日本の製造業各社からの供給に限定する。
・ChatGPT氏との議論と試算により、1つの工場あたりの投資額は45億ドル。(リアリティのある見積りがあります。別途公開予定)便宜的に土地代はゼロとしている。日本政府(JBIC)による総投資額は450億ドル。(別途10の量産工場を具現化するための小規模なプロトタイプ工場に6,000万ドル)
・1工場がフル稼働すると年産20万体のOptimusを生産できる。これを10工場。年産200万体。
・1つの工場が地域にもたらす経済インパクトは35億ドル〜50億ドル。10工場で350億ドル〜500億ドル。

年間200万体生産されるOptimusを何の用途で使うか?

年間200万体も米国でアセンブリされるTesla Optimus(同社ご指名であるのはトランプ大統領がイーロン・マスク氏を気に入っているということもありますが、イーロン自身がOptimus量産のビジョンを持っているからです。現在の所は年間数千体規模で準備中とされています。また米国を代表する製造業ブランドでもあります。トランプ大統領としてはTeslaを全面に打ち出すことで大いにこの提案を評価して下さると思います。MAKE AMERICA GREAT AGINの旗印にふさわしいブランドです)を何に使うかが問題です。

端的に米国の製造工場に工場ワーカーとして投入すると、トランプ大統領が強く主張しているラストベルト州における雇用創出に反します。ChatGPT氏と昨晩議論して見えてきたのは、米国における建設業の人手不足です。これを解消する戦力としてOptimusを使おうということになりました。

以下の建設業界誌の記事は、米国建設業界で約50万人の人手不足が発生していることを物語っています。Tesla Optimusのチューニングを建設ワーカーの用途で行って、建設ワーカー特化型Optimusとして生産販売すればいいわけです。そしてこれは米国内の需要を満たした後で、輸出に回せます。つまり米国のTeslaブランドの建設ワーカー特化型Optimus生産工場は、米国にとって願ってもない輸出の基地となるのです。これがもたらす直接的な貿易黒字額は膨大です。(まだ試算できていません)

US Construction Industry Needs 439K New Workers in 2025

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米国の新しい輸出産業にもなる

米国で10万人の雇用を創出する日本政府からの投資の提案であるだけでなく、上述のように、将来的には米国の貿易黒字を創出する可能性のある戦略的な投資提案ということになります。それに日本の製造業の総力を挙げて協力するのです。日米友好のランドマークとなるような戦略的投資提案であり、日本の部品製造業が新しい市場を見出すきっかけともなります。

年間200万体を生産する10の工場ができるので、輸出ポテンシャルは膨大です。実質的に米国が世界の建設ワーカーヒューマノイドを生産するための唯一の国ということになるでしょう。(中国が競合ですが、同社は後述するNVIDIA Omniverseのデジタルツインを動かすための最先端AI半導体を輸入できないため、競争力が劣後します。本件はAI案件でもあるのです)日本は米国を立てて、iPhoneに見られるように、部品製造業が繁栄すればいいと考えます。

これでMAKE AMERICA GREAT AGAINです。これを日本政府の提案によって支援するのです。ヒューマノイドの超精密な部品一式は全て日本の製造業各社からの輸出という条件付きです。

Tesla Optimus生産工場の地域社会に与える経済インパクト

類似の先端事例に基づいて(Teslaのギガファクトリー・テキサス/オースティン)試算したところ、1拠点あたりの直接的間接的な経済インパクトは約35〜50億ドルとなりました。10工場で350億ドル〜500億ドルの経済効果がもたらされます。これも極めて大きな数字です。

The Impact of Tesla's Gigafactory in Austin


1万人雇用ヒューマノイド組立工場の地方経済波及効果

1. 教育分野への波及
高卒・専門卒者向けの雇用機会創出(技能習得+収入安定)
地元高校・コミュニティカレッジとの連携による「ロボティクス基礎教育プログラム」設置
STEM教育の活性化+若年定着化(移住抑制)
退役軍人・シングルマザー・再就職者向けの訓練プログラム

2. 住宅・不動産分野への波及
1万人規模の定住人口増加による住宅需要(賃貸・新築)
地価・固定資産税収の上昇 → 地方財政の安定化
地元建設業・不動産業の活性化(雇用創出と所得増)
社員寮・トレーニング施設・保育インフラの整備促進

3. 交通・都市インフラへの波及
通勤・通学者向けの公共交通網の拡充(バス・道路)
郊外開発の促進と都市機能の再構築(コンパクトシティ化)
EV充電設備・通信インフラ(5G)整備による次世代型都市化
新たな商業集積(飲食・流通・教育・医療など)の促進

定量的効果(10年スパン、1工場あたり)
地域GDP貢献:35~50億ドル(直接+間接効果)
公共インフラ投資誘発額:5~10億ドル
地元中小企業との取引拡大:約500社程度(物流、警備、給食等)


NVIDIA Omniverse経済圏に日本の製造業が参画する意味

本プロジェクトでは、NVIDIAが提唱するOmniverse(デジタルツインのためのOS)のデジタルツイン技術を最大限に取り入れて、各工場のデジタルツインを作成し、それによって建設速度を早め、完工した後も工場内に設置された多数のセンサー群によりリアルタイムシミュレーションを行って生産効率の最適化を目指します。これはNVIDIAにとっても各国にプレゼンできるレファフェンスモデルになります。そのためNVIDIAから最大限の協力が得られるはずです。

このアセンブリ工場に対して日本の製造業各社からアクチュエーターやセンサー等の精密部品が供給されることになる訳ですが、各プラントおよび生産されるOptimusがデジタルツイン上にも(リアルにも)存在するため、個々の部品はいわゆるSim2Realな部品として日本で設計され、日本で生産されることになります。これが日本の製造業に将来における大きな成長性をもたらします。

Training Sim-to-Real Transferable Robotic Assembly Skills over Diverse Geometries

この関連については調査報告書が何本あっても足らないぐらいですが、最初の1本という意味で以下を上げていますのでお読み下さい。

日本の製造業がNVIDIAフィジカルAIのロボティクス・エコシステムに参入して得られる事業機会【経営者向け報告書】

日本の製造業にとっても、この米国の雇用創出案件は大きな意味があります。


お問い合わせは、インフラコモンズ代表今泉大輔まで。

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