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生成AIブームが押し上げるCPO(Co-Packaged Optics)、中国は世界のCPO市場をリード

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生成AIの急速な普及が、中国のデータセンターネットワーク市場に変革をもたらしています。IDCは2025年8月15日に公表した最新調査で、CPO(Co-Packaged Optics)技術がAI時代の高帯域・低消費電力ネットワークの中核を担うと指摘しています。

IDC:光电一体化封装(CPO)技术引领数据中心网络向全光演进

CPOは光と電気を同一基板で融合させることで、帯域密度とエネルギー効率を飛躍的に高め、運用コストや通信遅延を削減します。IDCによると、2025〜2026年はCPOの試験導入が本格化する重要な時期であり、超大規模データセンターが先行して価値を検証する見込みです。また、中国の生成AI関連ネットワークハードウェア支出は2023年の65億元から2028年には330億元へ拡大し、年平均成長率は38.5%に達すると予測しています。

今回は、生成AIがもたらすネットワーク需要の変化、CPOの技術的優位性、そして市場拡大に向けた展望を取り上げます。

生成AIが引き起こすネットワーク需要の急拡大

AIアプリケーションは企業の意思決定から個人のデジタルアシスタントまで、さまざまな場面で浸透しています。IDCの統計によると、2024年下半期の中国における大規模言語モデル商用利用のトークン消費量は前年比で約10倍に増加しました。パブリッククラウド上での大規模モデル呼び出しは114.2兆トークンに達しています。

この需要急増により、データセンター内部の東西方向トラフィックが爆発的に増加し、通信の消費電力も上昇しています。従来の「計算能力を先行、ネットワークは後追い」という投資順序は通用しなくなりました。AI競争で優位を保つには、GPU性能を最大限引き出すため、高帯域・高信頼・低消費電力のネットワーク設計が前提条件となります。特に400Gから800G、さらに1.6Tへと進む高速化の中、中国の高端(200G以上)イーサネットポートの出荷量は2029年に4,300万ポート超に達する見込みです。

CPO(Co-Packaged Optics)技術の特長と市場展開

CPOは光エンジンとスイッチASICを同一基板に統合し、従来の可插拔モジュールや長距離電気配線を不要にします。この構造により、

  • 高帯域密度:限られたスペースでより多くの光チャネルを収容可能に

  • 低消費電力:短距離接続で伝送損失を抑え、冷却・電力コストを削減

  • 高信頼性:コネクタや中間部品の削減により故障率を低減

  • コスト最適化:長期的にはTCOを抑制し、データセンターの高密度化にも貢献

IDCは、CPOがAI時代の帯域需要とエネルギー制約を同時に解決し、全光ネットワークへの進化を牽引すると位置付けています。特に横方向スケールアウト型のAIデータセンターにおける導入効果は大きいといえます。

技術成熟と産業エコシステム

現時点ではCPOの初期コストや製造技術の難度が課題ですが、製造プロセスや部品標準化の進展により、2025〜2026年に試験導入が進むと予測されています。超大規模事業者が先行投資することで、関連部材・設計・運用ノウハウの共有が進み、中小規模のデータセンターへの波及も期待されます。また、CPOは将来的な「光学I/O」への布石ともなり、コンピューティングと通信の融合をさらに深化させる可能性を秘めています。

今後の展望

IDC中国の崔凯氏は、「CPOは単なるハードウェア技術の革新ではなく、AI普及とデジタル変革を推進する戦略的インフラです」と指摘します。今後5年間、中国市場では生成AIによるネットワーク需要の増加が続き、帯域確保と消費電力抑制の両立が競争力の鍵となります。CPOの早期導入は、AIサービスの応答性能とコスト効率の両面で優位性を生み出すでしょう。

一方で、部品供給網の確立、異なる機器間の互換性確保、運用人材の育成などの課題も残ります。これらに対応するためには、産業界と標準化団体、政策当局が連携し、技術ロードマップと市場インセンティブを明確化することが求められます。AIインフラの戦略的強化が進む中で、CPOは中国だけでなくグローバル市場においても、AI時代のネットワークアーキテクチャを再定義する存在となる可能性が高く、今後の動向に注目していきたいと思います。

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出典:IDC 2025.8

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