Hugging Faceの"Reachy Mini"は日本のロボティクス関係者にとっても学びが深いAI + ロボティクスの先端トイロボット
Reachy Mini - The Open-Source Robot for Today's and Tomorrow's AI Buildersの告知記事よりReachy Miniの外観写真
Hugging Faceが発表したAI + ロボティクスの先端トイロボット"Reachy Mini"がXで話題になっています。
Reachy Mini - The Open-Source Robot for Today's and Tomorrow's AI Builders
Reach Mini - 現在と未来のAI開発者のためのオープンソース・ロボット
以下のYouTube動画をご覧下さい。一発で概要がわかる構成になっています。
このReachy Mini、Pythonができる子供であればプログラムを組んで遊ぶことができるトイロボットですが、AIを組み入れたAI + ロボティクスの学習・実験プラットフォームとしての意味もあり、日本のロボティクス関係の方々にも触って実験をする価値があるアイテムではないかと思っております。
同じ趣旨で、以前にCalifornia University Berkeley校のAIロボティクス・ラボが開発したオープンソースのヒューマノイド・キットをご紹介しました。
草の根的に始めるヒト型ロボ開発プロジェクトにピッタリのオープンソースキットBerkeley Humanoid Lite
バークレーのヒト型ロボキットを自社でカスタマイズし実機のPoCまで具体化するステップ
ちなみに先日告知させていただいた 2025年10月27日東京出発「シリコンバレー最先端ヒト型ロボット(ヒューマノイド)視察ツアー」 では、上のヒューマノイド・キットを開発・公開しているUC Berkeley Hybrid Robotics Labも訪問先の1つとしてリストアップしております。先端的なヒューマノイド開発の現場がどういうものかを実見し、シリコンバレーのAIロボティクスの先端にいる研究者の"生の姿"に触れ、意見交換をすることでこちらが大いに刺激を受けることを狙っています。
日本にいるとわからないことがわかるようになる、"シリコンバレー人種"とのリアルな交流には大いに意味があります。私もシスコシステムズ勤務時代やその後のSkyTranプロジェクトなどで(当ブログにその痕跡があります)、シリコンバレーの方々と直接交流する機会が多々あり、日本にいるのでは得られない形式知 + 暗黙知を学んだように思います。
イノベーションが当たり前であるシリコンバレー環境では、日本人とは異なる発想があり、異なる思考法があります。そこが一番の刺激の受けどころだと考えています。彼らが使う言語も、英語を日本語にして字義通りの理解をするのではキャッチしきれない、独特の言語を使っています。顔を見ていれば、しゃべっている内容がわかる...という所はあります。(コンテキストが共有できる。)(なお先方都合により訪問ができない場合もあります。その際には代替的な研究機関等を訪問します)
Hugging Faceの先端的なトイロボット"Reachy Mini"の概要
以下では、Hugging FaceがアナウンスしたReachy Miniについて、日本のロボティクス関係者の方々に参考になる形で情報をまとめてみました。
1. Hugging Faceとはどんな会社か?
Hugging Faceは、機械学習・NLP界隈で急成長する オープンソースAIプラットフォームです。モデル、データセット、コミュニティを統合する「Hub」を提供し、研究者や開発者が自由にアクセス・共有・コラボレーションできる環境を構築しています。
2024年にはロボティクス領域に参入し、LeRobot プラットフォームを通じて、ロボットシステムのためのオープンAIモデルやツールを展開。2025年4月にはヒューマノイドの Pollen Robotics を買収し、物理ロボット分野への本格展開への布石を打ちました Analytics India Magazine。
2. 新製品 Reachy Miniの概要
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デスクトップロボット:高さ28cm、重さ1.5kg -- 机の上に置いて使えるコンパクトサイズActuIA。
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価格構成:
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Lite版:$299(PC接続)
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Wireless版:$449(Raspberry Pi 5搭載・Wi‑Fi・バッテリー内蔵)
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可動性とセンサー搭載:頭部6自由度回転+2本のアンテナにより人間らしいリアクション、広角カメラ・マイク・スピーカー・加速度センサー内蔵 Medium。
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プログラミング対応:Python SDKで制御可能。まもなく JavaScript・Scratchにも対応予定。シミュレーターを使って、実機到着前に開発環境としても利用可 Hugging Face。
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即利用可能な動作ビヘイビア:15種以上が初期搭載、すぐに実験を始められる体制 。
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Hub連携:1.7M以上の公開AIモデル、40万件超のデータセットにアクセス可能なエコシステムiotworldtoday.com。
発売時期は Lite版が2025年夏後(late summer)、Wireless版が秋~2026年にかけての段階的出荷が予定されています。
3. 日本のロボティクス関係者にとっての先端技術インパクト
Reachy Miniは、単なるおもちゃ型ロボットではありません。
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安価かつオープンソースで、ブラックボックスを排し、誰でも設計・改変できる設計思想は、これまでの日本のロボット業界にはない革新です。
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教育機関、スタートアップ、研究所が小規模でもロボットのハード+AI統合を手がけられる環境を整備します。
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Python制御+Hub連携の組み合わせにより、「AIモデル→ロボット実装→実地評価」のサイクルを机上で閉ループ化でき、日本の研究・開発効率を大きく底上げする可能性があります。
4. AI + ロボティクス領域で日本のロボ関係者が学べること
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物理モジュールを用いた実験環境構築
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低コスト(~$300)でも「動くAIシステム」を回せるサイクルが、教育・実装の入り口となります。
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オープンソースによる技術共有文化
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ハードウェア・ソフトウェア両面の設計仕様の公開と、コミュニティ連携による高速進化モデルを取り入れることで、産官学連携の新潮流を築けます。
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ソフトとハードの一体開発
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モデル開発者が、そのままロボットアクチュエータやセンサーを扱うことで、AIモデルの「実用性」がリアルタイムで検証される好循環が可能です。
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教育への応用
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学部・大学院や専門スクールでの教材として、子供から大人まで使える柔軟な実習資材としての可能性は非常に大きいです。
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✔︎ 総まとめ
Hugging Faceの Reachy Mini は、
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オープンソース × 可搬型AIロボットとして、
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比較的低予算で手に入り、
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AIモデルとフィジカルな動作を統合できる教材・実験プラットフォーム
です。
日本のロボティクス界においては、
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オープン文化の推進、
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モデル実装と検証の高速サイクルの実現、
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教育・研究・開発の現場での即時投入可能なツール構成
として、大きな学びと刺激を提供する存在になるでしょう。
[今泉の補足]
日本でも以前はロボットの骨格フレームとアクチュエーター用モーター数個を組み合わせたキットが発売されていたのを記憶しています(今もあったらごめんなさい)。
私はプログラムが組めないので、このReachy Miniが販売されてもうまく活用できないのですが、Pythonが使える日本のロボティクス関係の方々が使い倒すと、AIで可能になるロボティクスの様々な可能性に、短いサイクルで触れることができるようになって、大変に好ましいのではないかと思います。