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若者の孤立を防ぐNPO法人D×Pで、「ハブ」として活躍するkintone

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こんにちは。葉月へちまです。

今回のkintone取材記では、大阪を拠点に若者の居場所づくりをしている「認定NPO法人D×P(ディーピー)」(以下、「D×P」)さんを訪ねました。

(kintoneのサービスについてはこちら

D×Pとは?

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D×Pは「ユース世代(13歳〜25歳までの若者)の孤立」という社会課題に取り組む団体です。不登校、経済的困難、家庭内不和などさまざまな境遇にあるユース世代に、セーフティネットと機会を提供します。学校とLINE相談で若者と出会い、居場所をつくることで困った時に頼れる人とのつながりをつくります。

LINE相談窓口「ユキサキチャット」

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ご本人から掲載の許可をいただいています

ユキサキチャットは、D×Pが運営するLINE相談サービスです。現在の累計登録者は約1万8000名。不登校、進学、生活にまつわる相談など、幅広い悩みに対応しています。

今回はそんなユキサキチャット事業部のマネージャーを務める小田由希子さんと、事業の業務プロセス改善に携わり、kintoneのアプリの作成や管理を担当している辻田さとみさんからお話を伺いました。

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(向かって左が辻田さん、右が小田さん)


D×Pへの相談者は主に、SNSの広告、Web検索、友人からの紹介、そして公的機関や他のNPOからの紹介でユキサキチャットに辿り着くことが多いそうです。

特に2020年6月に現金給付を始めたことや、昨今の物価高などの社会状況に合わせ、登録者数は爆発的に増加。経済的困難を抱える若者への支援ニーズが高まるなかで、支援の記録や情報共有に限界が見えてきました。

そこで情報管理を立て直すため、2023年6月にkintoneを導入。以前はすべてスプレッドシートで管理していたため、「コピペミスで支援物資の発送トラブルが起きたり、『誰がどこまで担当したか』がわからなくなることもありました」と小田さん。

kintoneの管理を担当する辻田さんは、「NPOはシステムの予算が限られています。費用を抑えつつすぐに使えるkintoneは、私たちにとって本当にありがたい存在でした」と、導入の決め手を語りました。

現場が実感した「事務作業の削減」と「成果の見える化」

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kintone導入から約2年。現場の職員からは、「事務作業が減った」「誰が担当か、進捗状況がパッと見てわかるようになった」と、ポジティブな声が多く寄せられ、kintoneはすっかり現場で馴染んでいるそうです。

特に大きな変化は、活動の成果がリアルタイムで見える化されたこと。

小田さん:「kintoneに情報を集めたことで、現在の登録者数や支援の発送状況がリアルタイムで確認できるようになりました。これは想像していなかったメリットでしたね。今、どこに力を入れるべきか可視化されたことで、チームとして動きやすくなりました」

kintoneを「ハブ」として活用し、情報を一元化

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相談者リストとkintoneを連携させたことで、相談者情報、過去の支援内容、相談員間のやりとりの記録まで、すべてを一箇所に集約できました。

相談者情報・支援実績の「一元化」と「チーム連携」

小田さんは、導入後の情報の一元管理について、

「以前は、相談員同士がチャットで話し合うとき、背景情報をいちいち手入力する必要がありました。今はkintoneを通じてすべての情報を共有できます。連携が格段にスムーズになりましたね」

と言及。デリケートな相談内容の共有については、

「組織全体が見るチャットツールではなくkintoneアプリのコメント欄にて、メンションをつけた数名とクローズドに話し合っています。kintoneだと細かくアクセス権の設定ができるので、機密情報を守れてありがたいです」

と、情報セキュリティ面にもメリットも感じたとのことでした。kintoneだと、スペースごと、アプリごとといった形でアクセスできる人を柔軟に設定できるので、密なやりとりも安心ですね!

食糧支援の正確なステータス管理

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食糧支援の分野では、他社のツールで受け付けた申し込み情報をkintoneへ自動連携し、管理しているそうです。支援の要となる食料は、多くの方からいただいた寄付金から購入しています。最近はフードバンクや個人、企業から寄贈の問い合わせも増えてきましたが、管理が困難になっています。

食料は毎週火曜日と水曜日に定期発送されていますが、緊急時にはイレギュラーな対応が必要となることもあります。

誰に何を、いつ送るかの判断や発送状況などのステータス管理は、kintoneが担っています。

「食糧支援アプリをつくり、そのアプリのデータをスプレッドシートに反映させる仕組みをつくったことで、現場スタッフへの指示伝達もスムーズになりました。またステータス管理ができるようになったことで発送ミスがなくなりました」

今後の展望:柔軟なシステム構築とデータ活用

D×Pは新しいプロジェクトを柔軟に始める団体であるため、活動に合わせてkintoneのアプリの仕様も変更していく必要があります。今後は、プロジェクトが増えても「前のシステムから使える部分」をノウハウとして蓄積し、柔軟にシステムを構築していける体制を目指しているそうです。

小田さんは、グラフや表を活用することで、組織運営がよりスムーズになることを目指し、今後もデータ活用を推進していきたいと意気込みを語りました。

kintone導入を検討中の方へ向けて

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辻田さん:「『Excelで無理だったらkintoneに』とお伝えしたいです。スプレッドシートでの管理でデータが溢れてしまう前に、早めに導入することが大切です。量が増えてから整理するのは本当に大変なので!」

小田さん:「デジタルツールがあまり得意でない人でも取っ掛かりやすいのがkintoneの魅力です。特に私たちのようなNPOはシステムに大きな予算をさけませんが、kintoneは安価で導入しやすいため、『まずシステム化しよう』と考えた時の第一歩としておすすめです」

データの一元化と連携機能によってkintoneが、社会貢献を行うD×Pの活動を力強く支えるツールとなっていることがよくわかりました!

おわりに

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インタビューのあと、食糧発送の作業場を見学させていただきました。全国にいる生活状況が安定しない若者へ送るため、たくさんの食品が積み上げられていました。現在、月に250箱~300箱ほど発送しているそうです。

見学のなかで、小田さんの言葉が特に印象に残っています。

「私たちは単にお腹を満たすだけでなく、『大切にされた』という経験を届けたいと考えています。そのため必ず一箱にひとつお菓子を入れたり、季節ごとに中身を変えたりといった工夫をしています」

相談者が届いた箱を開けた瞬間に、少しでもホッとできる瞬間が生まれるようにという願いを込めて発送しているという小田さん。

私も今回のインタビューを通してkintoneが、D×Pの皆さんの温かい支援をさらに広げる力になることを願っています。

D×Pの皆さん、取材のご協力ありがとうございました!

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