コンサルティング業界の地殻変動が始まった
2025年10月、Management Consultedが発表した最新の「Management Consulting Industry Report」は、グローバルなコンサルティング業界がAI、クライアントの成果志向、そして人材戦略の変化という三つの要素で根本的な変革期にあることを示しています。
---
### 1. クライアントが求めるのは「提案」ではなく「成果」
AI戦略、サイバーセキュリティ、デジタルトランスフォーメーションへの需要は依然として高いものの、クライアントは結果に対してこれまで以上に厳しくなっています。
BCGの調査によれば、AI投資で明確なリターンを得られた企業はわずか5%。その結果、多くの企業がコンサルティング依存から脱却し、AIや分析機能を内製化する方向に舵を切っています。
これに伴い、コンサルティングファームには「測定可能な成果」を提示するプレッシャーが急増。単なるアドバイス提供から、「実装と成果」を伴うパートナーシップへと役割が再定義されつつあります。
---
### 2. 各社の構造転換:戦略から"統合実行モデル"へ
McKinseyやAccentureはAIを活用して内部運営を最適化し、組織構造や人材配置を抜本的に再構築。EYも「Studio+」を立ち上げ、マーケティング、デジタル、CX領域を統合した変革ユニットを創設しました。
これは、かつての「戦略提言中心」から脱却し、「戦略+実行+テクノロジー」を一体化する"フルスタック型"モデルへの移行を象徴しています。
一方で、AIネイティブな小規模ファームが登場し、生成AIを活用してコストを下げ、納期を短縮。旧来の大手を脅かす存在として台頭しています。
---
### 3. 採用市場の変化:ピラミッド型からアジャイル型へ
採用戦略も転換期にあります。Management Consultedによれば、採用総数は前年比22%増加した一方で、従来のピラミッド型ではなく、オンデマンド採用・即戦力採用が主流に。
欧州では新規採用の50%以上が中途人材で占められ、従来の"新卒一括採用"モデルが急速に崩壊しています。
求められるスキルも明確に変化。
AIリテラシー、サプライチェーンの回復力、コーポレート・リストラクチャリング、そしてテクノロジー導入能力が鍵に。
MBAやジェネラリストよりも、AI×業務知見を兼ね備えたスペシャリストが求められる時代になっています。
---
### 4. 収益の二極化と「成果報酬型」への転換
地域・ファームによって業績は大きく分かれています。
EYのオセアニア部門ではコンサルティング収益が前年比10.3%減。KPMGオーストラリアは「コンサルティング・ウィンター」と呼ばれる再編に突入しています。
その一方で、クライアント側は成果連動報酬モデル(outcome-based pricing)を求める傾向を強めており、「時間単価」での契約から「価値ベース」へと急速にシフトしています。
---
### 5. 生成AIが「実行能力」そのものを変える
EY-Parthenonが神経記号融合AI(Neurosymbolic AI)を導入し、RGPがServiceNow上に生成AIレイヤーを持つrIQを展開するなど、AIはもはや"助言のためのツール"ではなく、"コンサルティング・エンジン"に進化しています。
AIによってリサーチ・分析・実装支援のスピードが圧倒的に向上し、AIを活用できるかどうかが企業価値そのものを左右する時代に入りました。
---
### 6. 今後の展望:成果を「測れる」ファームだけが生き残る
レポートはこう結びます。
AIの波に飲まれるか、それを武器に再定義するか。
生き残るのは、テクノロジーの専門性と業界の深い知見を融合させ、クライアントの成果に対して説明責任を持てるファームだけだと。
日本でもAIを軸にした変革プロジェクトが急増していますが、「成果を定義・測定・改善する文化」をいかに根づかせるかが次の焦点になるでしょう。
---
参照:
Management Consulted, Management Consulting Industry Report - October 2025
https://managementconsulted.com/management-consulting-industry-report/
#コンサルティング業界 #AI戦略 #タレントトレンド #報酬改革 #人的資本経営