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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

ST-0001:基本的なスタンス

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STはStrategyを表します。

前回のエントリに質問をいただきました。

まだまだ未完成のものを、細切れに日ベースで記しているので、わかりにくいところが多々あるかと思います。

先に新発見事項を1つだけ記しておくと、GNU GPLFAQに、「ソースコード」が明確である限りにおいて、GPLはどのようなworkにも適用できると書いてあります。従って、GPLを適用することはまったく可能なわけです。

本論に入ります。私が考えていることは大きくは2つです。


第一は、消費者が持っている情報や知識は、適正な価格で取引される環境が整うのであれば、Consumer-to-Businessの事業が成立するのではないか。

第二は、事業の設計図に相当するものをインターネット上で公開することによって、実現がより早まると同時に、不特定多数の主体がその内容の改良に取り組み、より完成度の高い事業が成立するのではないか。


少し細かく説明してみます。


第一の点については、先日、ある方に説明する際に作成したPPTがちょうどいい具合に要約になっていますので、アップロードします。

business_plan_summary.pptをダウンロード

kaizen-engine-background.docをダウンロード (GPL云々言っているのにパワポとワードですみません。今日の段階ではこれしか用意できていないので、あしからず)

まだGPLを適用していない、ごく普通の事業素案説明ファイルですので、とりあえず従来型の(c)は付けさせてもらっています。けれども生なPPTファイルですので、流用しようと思えばできる形になっています。


この2本のファイルをご覧いただくと、こちらで考えているConsumer-to-Business事業の輪郭がおわかりいただけると思います。Wordファイルの方はKAIZENエンジンの背景説明になっています。いずれのファイルもドラフトであり、まだまだ雑なところがあります。内輪でアイディア共有に使うというレベルです。

このようにして公開することに、どういう意味があるのか?


まず、コンセプトの“通り”がよくなるということがあります。一般的に新しいアイディアを他者に初めて説明する際には、なかなかよく理解してもらえません。事業に限らず、イベントやメディアコンテンツの企画案でも同様です。

個人的な経験から言うと、初回は大多数が否定するコンセプトであっても、その後、2回、3回とその内容に接する機会があると、なぜか知らぬ間に「けっこういいじゃん、コレ」となっている状況が多々あります。

その状況を出現させるには、「新しくて妙な概念」→「よくわかってきた魅力的な概念」へと移行させるためのいくつかの仕掛けが必要です。例えば、それとなくその概念を繰り返し露出させてみる、そして理解が醸成されるための適度な時間を置くといったことです。これをやるのにインターネットは非常によいメディアです。


本事業案に関して、仮に、ほんとうに資金を拠出してもよいと考えていただける方がいらっしゃる場合、こうして公開しておくことで、初回にご説明に伺った際にも、すっとコンセプトがご理解いただけるようになる。そう考えています。


さらにこれには続きがあります。事業案について、この場で書かせていただくことによって、この事業における顧客になりうる消費者、そして企業の間でも、うっすらとこのコンセプトに関する理解が醸成されるであろう、ということです。これはものすごく重要なことです。


過去10年、インターネット上で成立する事業モデルを多々見てきましたが、いちばん手間ひまがかかって、時間もかかるのが、新しい事業コンセプトを顧客に理解してもらって、それをキャッシュが生じる程度にまでに使い込んでいただくというフェーズです。

多くの新規ビジネスは、このフェーズが乗り切れずにキャッシュがショートし、消えていきました。ジェフリー・ムーアの言うところの「キャズム」です。


この種のコンセプト系のビジネスは、顧客に理解してもらってなんぼなのではなく、理解してもらって、価値をわかってもらって、使って喜んでもらって、その先に売上が生じるという、多段式ロケットのような構造を持っています。市場が存在しないところに、市場を作っていくという、実はものすごい話です。

キャッシュが生じるところまで最短で行くには、ありとあらゆる工夫を施さなければなりません。その工夫のごく最初期のうっすらとした下地づくりに、このようなインターネットにおける公開が役立つのではないかと考えられます。

第二の点が、GPLが関わる部分ですね。本ブログの最初の頃のエントリをお読みいただければご理解いただけると思うのですが、最初は私もビジネス方法特許で儲けてやろうと考えていました。

けれども、インターネットで展開する事業案に関しては、独占的な知的財産権を設定することで、かえって事業の展開・普及が制約を受けやすいということがだんだん明らかになってきました。


では、事業の展開・普及を速めるためにはどうすればいいかということを考えてみると、数年前に読んだ「伽藍とバザール」で記述されていたオープンソースの開発スタイルに思い至った(このへんについても記述済みです)。たぶん、そうだろう、これしかないだろうと考えつつ、この関係を論じていそうな「コモンズ」を読んでみると、「おぉ、やっぱりそうじゃん!」と声を上げたくなることがいっぱい書いてある。1箇所だけ引用すると、

でもイノベーションという観点からすると、(コントロールをかけることで)よくならない場合もある。特に未来がよくわからないとき---あるいはもっと正確には、ある技術の将来的な利用方法が予測できないとき---その技術にコントロールがないままにしておくほうが、正しい種類のイノベーションを見つける支援としてはよい方法なのだ。不確実性の世界においては可塑性---システムが簡単に各種の方向に発展できること---が最適なのだ。      *括弧内は今泉

というのがあります。これがまさに私が考えていたことです。リアルオプションのエッセンスが入っているのがまたいいですね。

上で言うコントロールは、インターネット上で展開する事業案の場合はビジネス方法特許ということになります。また、それに準じる、独占的な権利の設定です。そうした権利をはずすことが、当該事業案の連鎖的なイノベーションにとってはこの上なくよいことなのです。


テクニカルな問題として、どのようにして事業案から私的権利をはずすかということがあります。自分にとっての選択肢は、クリエイティブ・コモンズでいくか、GPLないしGPL系のライセンス方針でいくか。
以前に記したように、私はこの分野については、まったく知識がなかったものですから、その他のライセンス方針が存在することぐらいは知っていましたが、よくはわからない。よって選択肢に入ってこない。単純にそういうことだったです。


で、2つを比較検討してみると、これもすでに書いたことですが、GPLは、すでに歴史で価値が実証されている。
対するCCは、登録されている著作物の大多数はブログのエントリである模様で(違っていたらご指摘ください)、かつ、連鎖的なイノベーションが生じている風がない。言い換えれば、単に著作物をコモンズに解き放つツールにはなっているけれど、その先で別な主体がその著作物に改変を加えて新たな知的有用物を作っている風がない。
そこが自分としてはいまいちに感じる。個人的な好き嫌いで言えば、自分はGPL系をとる、そういうことです。CCをやっていらっしゃる方々には申し訳ないですが。

そのへんが、「私が考案し、本ブログで公開した3つの事業案については、GNU General Public LicenseLesser GPLを適用して、ネット上でオープンにします」と書いた背景です。

実際にこれらの事業案にGPLが適用できるかどうかについては、115日時点ではわからなかったですが、昨日、GPLFAQを読んでみると、

Can I use the GPL for something other than software?

You can apply the GPL to any kind of work, as long as it is clear what constitutes the "source code" for the work. The GPL defines this as the preferred form of the work for making changes in it.

と書いてある。おぉ、なんだ書いてあるじゃん、という感じです。

GPLのライセンスに関する文言をどう付加するか、テクニカルな部分で要確認事項はありますが、これでもう大丈夫だと思っています。


これらの事業案の「ソースコード」に相当する部分は、ビジネス方法特許を出願する際に記述しなければならない「請求項」の記述内容が該当すると考えます。特許の明細書における記述は、その記述を読んだ同業の人たちが、記述内容に基づいて当該新規考案物を作成できる程度に具体性を持っていなければならないとされており、これはまさに、コンピュータプログラムにおけるソースコードと同じ位置づけを持つものであると解釈します。

上に掲げた事業案サマリーのPPTファイルの8p14pがこの事業案における請求項的な記述ですが、まだ厳密さが足りません。もう少しみっちり書かないとソースコード相当のものにはならないと思います。ただ、雰囲気はこれでおわかりいただけると思います。

こうした解釈でよいか、gnu@gnu.org に確認のメールを出してみないといけませんね。


なお、本事業の推進に関して、資金を拠出していただけそうな方にご説明するという行動を始めつつ、事業案をGPLで公開するということに矛盾はないのかという点については、日を改めて記したいと思います。

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