【CES2026視察】米国唯一のロボ出展:物流製造ロボAgility Robotics:会場では大型商談とM&Aの余地
【今泉追記】
CES2026の出展企業は11月の今頃にならないとわからない。ヒューマノイド関連で調べた所、米国/西側企業で出展するのはAgility Robotics 1社であった。他は中国企業である。こちらの投稿参照(【CES2026視察】中国Booster Roboticsの子供の身長サイズのK1を見るだけでも価値がある。中国ロボット企業の発想の大胆さ)。
発展著しい中国企業のヒューマノイドも、単純に買うだけであるならば、さほど問題はない。しかしこちらの投稿で詳細を記したように、経済安全保障上の問題から数年前の華為と同じ運命を辿るリスクがある程度ある。(日本の大学/研究機関が中国企業と連携してロボット開発を行う際に「安全保障貿易管理」面の配慮が求められる)少なくとも国の予算が関わるプロジェクトでは中国のロボットは使えない。経産省の明確な規制がある。リンク先投稿参照。従って、CES2026で中国の華々しいヒューマノイドの展示をご覧になっても、具体的な商談として可能なのは買い付ける程度であり、M&A、技術パートナー等の商談は後から無意味だったと判明することになる。
その点、アメリカ企業であるAgility RoboticsはM&A、技術提携、日本&アジア販売展開の協業等、様々な商談が可能。CES2026は大型商談のきっかけ作りとして最適の場である。(CESを逃すと、独自にコンタクトチャネルを作り、訪問して、ゼロから関係づくりをしなければならない。CESでは1きっかけで名刺交換等を行なって、次回の訪問を軽く約束すればいいだけである。)
さらに追記すれば、イーロン・マスクTesla社Optimusには日本企業が参画する余地はゼロ。Figure AIもCES2026に出展しないのは「会場での商談やM&A交渉を求めていない」と解することができる。NEOの商用化に入ったばかりの1Xも同様。
その点、Agility Roboticsはロボット事業への参入・投資を考える日本企業には、絶妙のタイミングで「オープンになった案件」だと言うことができる。
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企画:株式会社インフラコモンズ
監修:ラウンズベリー・アソーシエイツ
Agility Robotics:CES2026で商談をするための会社概要と技術解説
エグゼクティブサマリー(経営層向け)
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会社概要:Agility Robotics(アジリティ・ロボティクス)は、米国オレゴン州発のヒューマノイドロボット開発企業です。2015年にオレゴン州で創業し、オレゴン州立大学の研究成果を基に設立されましたxmaquina.io。累計調達資金は約1.8億ドルに上り、Amazonの産業イノベーション基金やDCVCなどから2022年に1.5億ドルの大型出資を受けています。現在シリーズC段階で、NVIDIA(NVentures)やドイツの自動車部品大手Schaeffler(シェフラー)など戦略的投資家も参画していますagilityrobotics.com。本社および製造拠点はオレゴン州にあり、2023年にはセーラム市に世界初のヒューマノイド専門工場「RoboFab」を開設し年間1万台規模の量産体制を整えました。主要パートナー企業として、物流分野で協業するAmazonやGXO Logistics(米大手3PL)に加え、Ford(自動運転配送実験で協力)やSchaeffler(製造業での活用を見据えた提携)などが挙げられます。
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主力技術と競合差別化:Agility Roboticsの主力製品は二足歩行のヒューマノイドロボット「Digit(デジット)」で、人の体格(身長約175cm・重量65kg)に近いサイズと関節構成を持ちます。ダイナミックな歩行制御技術(ダチョウの脚に着想を得た逆関節レッグ)により、段差や不整地でもバランス良く歩行し、狭い空間での方向転換や高いリーチを実現しています。上半身にはカメラやLiDARを備えたセンサー群とバッテリー・計算ユニット(NVIDIA製Jetson加速器を採用 agilityrobotics.com)を内蔵し、自律移動と物体認識を行います。Digit最大の特徴はマルチパーパス(多目的)かつヒューマンセントリック(人間中心設計)である点です。人間と同程度のサイズ・形状のため人の職場にそのまま導入でき、特定用途専用機とは異なり様々なタスクに対応可能です。実際、最新世代のDigitではプラスチック製トートコンテナを掴むための新型ハンド(エンドエフェクタ)や、人と目を合わせて意思疎通するための頭部(LEDの「眼」付き)を搭載し、倉庫内作業への適応性と安全な協働性を高めています。競合のヒューマノイド(例:Teslaや米新興A社等)はまだ研究段階の実証や限定的パイロットが中心ですが、Agility社は業界に先駆けてDigitを商業環境に実投入し収益化している点で一歩リードしていますtechcrunch.com。同社は「顧客への価値提供(ROI)こそ最重要」と強調しており、単なるデモンストレーションに留まらない実用志向で競合との差別化を図っています。
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物流・製造分野での応用事例:Digitは物流倉庫や工場内での搬送・仕分け作業の自動化を主な用途としています。具体的には、GXOロジスティクス社が運営する米ジョージア州のSPANX(衣料ブランド)配送センターにおいて、Digitが自律搬送ロボット(AMR)が運んできた商品コンテナ(トート)を受け取り、コンベヤに積み替える作業に従事していますdcvelocity.com。この導入は2023年のパイロットを経て、2024年に業界初のヒューマノイド商用稼働(RaaS契約)として複数台のDigitが本格稼働開始しましたagilityrobotics.com。人手では過重で単調な「持ち上げ・運搬」の仕事をロボットが担うことで、作業者の負担軽減と24時間稼働によるスループット向上に寄与していますxmaquina.io。またAmazonも自社物流センターでDigitのテスト運用を開始しており、2023年にはシアトルの施設でトート箱のリサイクル回収といった反復作業をDigitに行わせる実証を実施しました。これらの現場実績は「既存の人手中心のプロセスに大きな改修をせずロボットを導入できる」ことを証明し、労働力不足や高離職率に直面する物流業界に新たな解決策を提示しています。製造分野でも、前述のSchaeffler社が今後Digitをグローバル工場に配備し、部品の運搬や組立支援などに活用する計画ですrockingrobots.com。今後は他の自動車メーカーや小売倉庫などでも人と同じインフラを使って作業できるロボットとしてDigitの適用範囲が広がると期待されます。
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日本企業がパートナー参画するメリット:Agility Roboticsと日本企業が共同開発や出資パートナーシップを組むことには多くの利点があります。第一に、先端ヒューマノイド技術の習得です。Agility社の持つダイナミック歩行制御やロボットアーム協調制御、クラウドロボティクス(Agility Arcプラットフォーム)等のノウハウに触れることで、自社の技術水準向上やエンジニア育成に繋がります。実際、Agility社はパートナープログラムを通じて顧客企業と現場での課題解決に取り組み、新機能開発にもフィードバックを得る方針を採っていますagilityrobotics.com。日本企業が参画すれば、自社の物流・生産現場のニーズをロボットの機能改良に反映させる機会も得られるでしょう。第二に、アジア市場展開の橋頭堡となれる点です。Agility社は現在主に北米で事業展開していますが、日本企業が戦略的パートナーとなることで、アジア地域での販売展開やローカライズ(例えば日本の倉庫事情に合わせた機能調整)を主導できます。これは将来的なアジア市場独占的提供権や合弁生産など、有利な事業展開にも繋がり得ます。第三に、ブランド強化とPR効果です。世界初の商用ヒューマノイドを扱うAgility社との協業は、日本企業にとってイノベーションをリードする企業というイメージ向上に寄与します。特に製造・物流業界で慢性的な人手不足や高齢化が課題となる日本において、最先端ロボット活用に積極的な姿勢は社会的評価も高まるでしょう。第四に、投資収益の見込みです。ヒューマノイド市場規模は2025年時点で約29億ドルと推定され、2030年までに約153億ドル規模(年平均+39%成長)に拡大すると予測されていますresearch.contrary.com。Agility社はその市場をリードしうる有力企業であり、早期に出資・提携することで株式価値の向上や事業利益分配といった経済的リターンも期待できます。何より、Agility社自身が「Digitを現場投入して実利を生むこと」にフォーカスしているためtechcrunch.com、パートナー企業はロボット導入による生産性向上・コスト削減効果という直接的なROIを享受しやすい点が魅力です。総じて、日本企業にとってAgility Roboticsとの協業は先端技術へのアクセスと事業成果の双方を得る戦略的投資と言えるでしょう。
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CES2026における展示予測:2026年1月開催のCESでは、Agility RoboticsがDigitの最新デモンストレーションを披露すると予想されます。同社は既にCES2025でもDigitの実演を行っており、2026年はさらに進化したパフォーマンスを見せる可能性があります。例えば、倉庫内でのトート積み下ろしだけでなくパレタイジング(パレットへの箱積み)や協働作業デモなど、新たなスキルを公開するかもしれません。実際、同社は製品のスキルライブラリを拡充中で、トートの積み重ね・デパレタイズなど様々なシナリオへの対応を計画していますagilityrobotics.com。CES2026の会場では、Digitが人と一緒に働く様子や、自律移動ロボット(AMR)との連携動作(例えばAMRが運んだ荷物をDigitが受け渡す一連の流れ)を再現する展示が考えられます。またAgility社のクラウド管理ソフトウェア「Agility Arc」の紹介にも注目です。Arcは複数のDigitや他のロボット群を遠隔からモニタ・制御し、既存の倉庫管理システムや設備と統合できるプラットフォームであり、CESではこの商用ロボットプラットフォームとしての成熟度をアピールするとみられます。さらに同社はNVIDIAと深い協力関係にあり、CES2025ではNVIDIA基調講演にも登壇しました。このためCES2026でも、高度なAI統合(例:大規模言語モデルによるロボット制御デモや高度な物体認識)などAI×ロボティクスの最先端事例として紹介される可能性があります。(今泉注:DigitはNVIDIA技術スタックで高速に開発改良を行なった実例として注視できる)
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2026年のCES全体では韓国企業連合による大型ヒューマノイド展示など、ヒューマノイドロボットが大きな注目テーマとなる見込みですces.tech。(参考記事:South Korean Companies Sweep CES 2026 Innovation Awards, Samsung, LG, Doosan Robotics Among 196 Korean Award Winners)
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Agility Roboticsはヒューマノイド展示の中心的存在としてDigitの実用性と商用展開力を強調した発表を行うでしょう。いずれにせよ、CES2026でAgility Roboticsは「ロボットが実際に働き始めている未来」を象徴する存在として、大手企業との商談の場でもあるこの展示会で大きな話題をさらうことが期待されます。
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