日本では何も知られていない韓国造船業の最先端。軍民融合の国家戦略が奏功【AI調査術】.
昨日終了したセミナーはおかげさまで大盛況と言っていい反響でした。
大手企業40名以上が受講【終了しました】:SSKセミナー AI を活用した海外市場調査と情報収集ノウハウ 2025年11月 5日(水)10:00~11:30
資料としてお配りしたのはA4で60ページある長大な「AI活用海外市場調査ハンドブック」で、これまで小職が海外市場調査のプロとしてChatGPT 5やGemini Pro 2.5を使って蓄積した「現場系のノウハウ」をぎっしり詰め込んだ教科書です。
セミナーを受けない方でも「読めばわかる」式の記述がしてあります。これについてはSSK 21さんの方から、後日、オンデマンド配信式のセミナーパッケージ商品として提供される動画とセットの形で配布されると思います。詳しくは以下のプレスリリースにある連絡先へどうぞ。担当は青木様。
「AIを活用した海外市場調査と情報収集ノウハウ」と題して、株式会社インフラコモンズ 代表取締役 今泉 大輔氏によるセミナーを2025年11月5日(水)に開催!!
以下はセミナーで解説した海外市場調査の手法により作成したデモンストレーション的なスナップショット・レポート。韓国語資料だけで調査しています。
米国海軍が韓国の造船技術がないと新時代の軍用艦船が作れない現実がよくわかります。
韓国造船業の現在地:脱炭素・自動化・艦艇化で再び世界をリードする
―日本企業が学ぶべき「造船産業の国家戦略」―
1. エグゼクティブサマリー
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韓国造船業は復権期にある。 2020年代中盤、LNG船・防衛艦艇・自動化造船の3領域で中国との差別化を明確化。
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国策・金融・人材の三位一体構造により、国家として造船を「戦略産業」と再定義。
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日本企業にとっての最大の示唆は、「部品供給の最適化」ではなく**"統合造船エコシステム"の再構築**である。
2. 世界市場の構造変化:韓中日の再編
(1) 主要国の受注シェア(2024年ベース)
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韓国:約37%(特にLNG船で7割超)
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中国:約50%(中・低価格帯中心)
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日本:約7%(高付加価値・中小船中心)
(2) 市場の二極化
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中国:価格優位・大量受注モデル
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韓国:技術優位・安全保障+脱炭素対応モデル
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日本:ニッチ高品質モデルだが、ボリューム縮小傾向
(3) 韓国の戦略的転換点
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「LNG運搬船」・「艦艇」・「スマートヤード」
→ これらを三本柱に国家再成長を図る構造
3. 産業構造と国家支援メカニズム
(1) 政府の位置づけ
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産業通商資源部(MOTIE)による「K-造船産業革新戦略」
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政策金融機関(韓国輸出入銀行・産業銀行)による低利融資
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「グリーン造船推進団」設立(2023)
(2) 公的支援の三層構造
| レイヤー | 内容 | 主体 |
|---|---|---|
| 政策 | 国家産業戦略・輸出補助 | MOTIE, 大統領府 |
| 金融 | 造船金融枠の拡充 | KEXIM, KDB |
| 技術 | 研究開発+大学連携 | 韓国海洋大学, 釜山大 |
(3) 人材政策
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高卒技能人材を育成する「マイスター高校制度」
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AI・ロボティクス専攻を造船所内教育に統合
4. 韓国三大造船グループの戦略比較
| 企業名 | 主軸 | 特徴 | 代表プロジェクト |
|---|---|---|---|
| HD現代(旧現代重工) | LNG・原子力・軍需 | スマートヤード化、AI溶接ロボット導入 | LNG船、潜水艦KSS-Ⅲ |
| 三星重工業 | 海洋構造物・宇宙連携 | 宇宙衛星プラットフォーム連携 | FPSO、海洋風力基盤 |
| ハンファオーシャン(旧大宇造船) | 防衛艦艇・潜水艦 | ハンファ防衛グループ統合モデル | フリゲート輸出、韓国海軍潜水艦 |
キーワード:三位一体
「海洋・防衛・脱炭素」をセットで輸出する"パッケージ国家モデル"
5. 技術転換:スマート造船への飛躍
(1) DX・自動化
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HD現代:造船AI統合プラットフォーム「Hi-SEAS」
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三星重工:AI検査・ロボット塗装ライン導入
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造船ロボット化率、既に40〜50%水準(日本の約2倍)
(2) カーボンニュートラル技術
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アンモニア・メタノール燃料船の商業化
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舶用燃料電池、ゼロエミッション推進装置
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「IMO 2050」対応を先取り
(3) サプライチェーン統合
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韓国国内の部品企業を統合プラットフォームに連携(例:H-Smart Yard Network)
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造船所設計→部材発注→施工→検査までを一気通貫化
6. 防衛・艦艇分野の台頭
(1) 防衛造船の輸出化
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ポーランド・UAE・インドネシアへの艦艇輸出契約拡大
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「防衛+造船」の国家輸出戦略を掲げる
(2) 軍民融合の成果
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軍用船建造の技術を民間LNG船に転用
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軍需と商業がシームレス化し、生産効率を向上
7. 今後の展望と結論
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韓国造船業は「AI・脱炭素・防衛」を三本柱に、国家の成長軸へと再統合されている。
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日本がこの流れに学ぶなら、「海洋技術国家」への回帰が鍵となる。
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造船は再び国家の鏡であり、現場の復権こそ次世代産業の再生である。