オルタナティブ・ブログ > 経営者が読むNVIDIAのフィジカルAI / ADAS業界日報 by 今泉大輔 >

20年以上断続的にこのブログを書き継いできたインフラコモンズ代表の今泉大輔です。NVIDIAのフィジカルAIの世界が日本の上場企業多数に時価総額増大の事業機会を1つだけではなく複数与えることを確信してこの名前にしました。ネタは無限にあります。何卒よろしくお願い申し上げます。

【ランサムウェア被害に遭わない米国最新DX】従来の日本型DXの弱点を分析する

»

Alternative2025Nov05b.png

第1回|「DX推進」がランサムウェアに侵入しやすい脆弱性を作る現実

日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、この数年で急速に進みました。
クラウドへの移行、SaaSの導入、ペーパーレス化や業務自動化。どれも「効率化」という旗印のもとに推進され、コスト削減やスピード向上という成果を挙げてきました。

しかし今、多くの企業が見落としている現実があります。
それは、「DXが進めば進むほど、防御が薄くなる」という構造的なリスクです。

DXがもたらした"境界の消失"

DXの象徴は「クラウド化」です。
オンプレミスから脱却し、社員がどこからでもアクセスできる環境を整えた結果、VPNや社内AD、メールサーバ、ファイル共有システムが、いまやほぼすべて外部から接続可能になりました。

つまり、多くの企業は"いつでも・どこでも・誰でもアクセスできる"利便性を実現した一方で、同時に「攻撃者も容易に侵入できる」構造を自ら作り出してしまったのです。

社内ネットワークという「堀」は消え、ファイアウォールという「城壁」は形骸化しました。
それでも従来の延長線上でDXを進めている企業が少なくありません。
それはつまり、「堀を埋めたあとに、門を開けっぱなしにして城をリフォームしている」状態です。

経営者が気づいていない「防御の空白」

なぜこの問題が経営課題として顕在化しないのでしょうか。
理由はシンプルです。DX推進を「攻めの投資」として評価し、防御を「コスト」と見なしているからです。

情報システム部門が警鐘を鳴らしても、経営会議では「ROIが見えにくい」「保険のようなものだろう」と片づけられがちです。
しかし実際には、防御を前提にしないDXは、「効率化」ではなく「脆弱化」を招きます。

特にVPNの集中アクセスや社内ADの一元認証構造は、一度侵入されれば「全社のシステム権限が連鎖的に奪われる」リスクを抱えています。
クラウド化・API連携・SaaS利用を進めるほど、この連鎖は広がります。
DXを推進するたびに、「防御の空白」は静かに拡大しているのです。

「ゼロトラスト」を前提にしないDXは、"攻撃者にとって便利なDX"

ここに根本的な転換点があります。
ゼロトラスト(Zero Trust)「すべてのアクセスを疑う」設計思想を前提にしないDXは、もはや"守ることを放棄したDX"です。

参考投稿:

社長のためのゼロトラスト入門 - 数十億円の損失をどう回避する?【ランサムウェア被害に遭わない米国最新DX】

攻撃者は、VPNの脆弱性を突き、クラウド認証情報を奪い、SaaSアカウントから横展開していきます。
そして彼らにとっても、生成AIや自動化ツールによる"攻撃のDX"が進んでいます。

言い換えれば、「ゼロトラストを導入していない企業のDXは、攻撃者とって便利なDX」なのです。
利便性を追求すればするほど、攻撃の効率も高まっていく。
この構造を理解せずにDXを語ることは、経営として致命的な盲点になります。

経営者に問う:「あなたのDXは、誰のための変革か」

DXを推進する理由を改めて考えてみましょう。
それは企業価値を上げるためであり、社員や顧客の体験を良くするためであるはずです。
しかし、もしそのDXが「攻撃を容易にし、全社停止リスクを高める構造」を内包しているなら、それは真の変革ではありません。

これからのDXは、「ゼロトラストを基軸にした防衛DX」でなければならない。
その設計思想を抜きにしてクラウド化を進めることは、経営リスクそのものです。


QilinやRansomHouseの被害から完全防御:米国最新ランサムウェア対策セミナー

-経営企画室が主導するアメリカ基準のランサムウェア対策-

一般社団法人 企業研究会

【開催にあたって】

アサヒグループやアスクルが被害に遭っているランサムウェアは、犯罪集団の手口が高度化しており、多くの上場企業が潜在ターゲットになっています。従来サイバーセキュリティはCIO/情報システム部門が管掌していましたが、アサヒに見るように全社規模の営業損失になりかねないことから、対策には経営者の意思決定が不可欠になっています。

このセミナーでは経営者の意思決定を支援する経営企画室が主導するアメリカ水準のランサムウェア対策について、ChatGPT 5を活用した情報収集から現行社内システムに堅固なランサムウェア防御策を組み入れるプロジェクト詳細まで、ノウハウを伝授します。

【講師】

インフラコモンズ代表

リサーチャー AI×経営ストラテジスト
今泉大輔 氏
日時 2025年 11月 17日(月) 13:30~16:00  
受講料 1名につき 
会員 38,500円(本体 35,000円)  一般 41,800円(本体 38,000円)
講演者 インフラコモンズ代表 リサーチャー AI×経営ストラテジスト 今泉大輔 氏
対象 経営企画部門、情報システム部門、リスク管理部門、法務部門、総務部門、管理部門の方、経営者の方など
内容 第一章 海外ランサムウェア事案を熟知しているAIを活用した情報収集
 ・主なランサムウェア犯罪集団と手口、被害に遭った主なケース
 ・平均的な身代金、ケースごとの損失額、被害対応のベストプラクティス

第二章 危機発生時に頼りにできる外資系フォレンジック専門会社5社
 ・ランサムウェア事案発生時の典型的な「フォレンジック専門会社の動き」
 ・フォレンジック会社を使えないと何が起こるか?
 ・世界的に定評のある外資系フォレンジック会社5社と日本の窓口

第三章 経営企画部が主導すべきランサムウェア対策の最重要項目5つ
 1.「ゼロトラスト・ネットワーク化」へ米国型DXの導入
 2.フォレンジック即応契約と「72時間以内復旧体制」の常設化
 3.「事業停止コスト」の定量化と"防衛費"の明示化
 4.「AI監視+EDR/XDR」統合監視体制の全社常時運用
 5.「経営サイバーKPI」と演習制度の組み合わせ

第四章 現行社内システムに堅固なランサムウェア防御策を組み入れる
 ・Wave 1(0〜90日)|初動と"止血"フェーズ
  目的:いまあるシステムの「弱点を塞ぎ」「72時間で復旧できる土台」を整える
 ・Wave 2(3〜6ヶ月)|構造改革フェーズ
  目的:VPN依存からの脱却と、ゼロトラストによる"侵入を許しても止まらない構造"の実現
 ・Wave 3(6〜12ヶ月)|定着と経営統合フェーズ
  目的:サイバー防衛を経営KPI・IR・監査に組み込み、"防衛文化"を定着させる
 ・会社規模別の費用レンジ(初年度)例:従業員 5,000名規模:5~12億円
  PMO/体制と期間の目安、経営会議用:"社長決裁を仰ぐ予算提案パッケージ"

第五章 危機発生時に初動を仰ぐことができるAI
 ・緊急時のシナリオに応じた具体的な活用方法
 ・AIを活用したランサムウェア犯罪集団にはAIで立ち向かう



※申込状況により、開催中止となる場合がございます。
※講師・主催者とご同業の方のご参加はお断りする場合がございます。
※録音、録画・撮影・お申込者以外のご視聴はご遠慮ください。



【本セミナーはZoomを利用して開催いたします】

視聴用アカウント・セミナー資料は、原則として開催1営業日前までにメールでお送りいたします。
※最新事例を用いて作成する等の理由により、資料送付が直前になる場合がございます。

Comment(0)