【ランサムウェア被害に遭わない米国最新DX】従来の日本型DXの弱点を分析する
第1回|「DX推進」がランサムウェアに侵入しやすい脆弱性を作る現実
日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、この数年で急速に進みました。
クラウドへの移行、SaaSの導入、ペーパーレス化や業務自動化。どれも「効率化」という旗印のもとに推進され、コスト削減やスピード向上という成果を挙げてきました。
しかし今、多くの企業が見落としている現実があります。
それは、「DXが進めば進むほど、防御が薄くなる」という構造的なリスクです。
DXがもたらした"境界の消失"
DXの象徴は「クラウド化」です。
オンプレミスから脱却し、社員がどこからでもアクセスできる環境を整えた結果、VPNや社内AD、メールサーバ、ファイル共有システムが、いまやほぼすべて外部から接続可能になりました。
つまり、多くの企業は"いつでも・どこでも・誰でもアクセスできる"利便性を実現した一方で、同時に「攻撃者も容易に侵入できる」構造を自ら作り出してしまったのです。
社内ネットワークという「堀」は消え、ファイアウォールという「城壁」は形骸化しました。
それでも従来の延長線上でDXを進めている企業が少なくありません。
それはつまり、「堀を埋めたあとに、門を開けっぱなしにして城をリフォームしている」状態です。
経営者が気づいていない「防御の空白」
なぜこの問題が経営課題として顕在化しないのでしょうか。
理由はシンプルです。DX推進を「攻めの投資」として評価し、防御を「コスト」と見なしているからです。
情報システム部門が警鐘を鳴らしても、経営会議では「ROIが見えにくい」「保険のようなものだろう」と片づけられがちです。
しかし実際には、防御を前提にしないDXは、「効率化」ではなく「脆弱化」を招きます。
特にVPNの集中アクセスや社内ADの一元認証構造は、一度侵入されれば「全社のシステム権限が連鎖的に奪われる」リスクを抱えています。
クラウド化・API連携・SaaS利用を進めるほど、この連鎖は広がります。
DXを推進するたびに、「防御の空白」は静かに拡大しているのです。
「ゼロトラスト」を前提にしないDXは、"攻撃者にとって便利なDX"
ここに根本的な転換点があります。
ゼロトラスト(Zero Trust)―「すべてのアクセスを疑う」設計思想を前提にしないDXは、もはや"守ることを放棄したDX"です。
参考投稿:
社長のためのゼロトラスト入門 - 数十億円の損失をどう回避する?【ランサムウェア被害に遭わない米国最新DX】
攻撃者は、VPNの脆弱性を突き、クラウド認証情報を奪い、SaaSアカウントから横展開していきます。
そして彼らにとっても、生成AIや自動化ツールによる"攻撃のDX"が進んでいます。
言い換えれば、「ゼロトラストを導入していない企業のDXは、攻撃者とって便利なDX」なのです。
利便性を追求すればするほど、攻撃の効率も高まっていく。
この構造を理解せずにDXを語ることは、経営として致命的な盲点になります。
経営者に問う:「あなたのDXは、誰のための変革か」
DXを推進する理由を改めて考えてみましょう。
それは企業価値を上げるためであり、社員や顧客の体験を良くするためであるはずです。
しかし、もしそのDXが「攻撃を容易にし、全社停止リスクを高める構造」を内包しているなら、それは真の変革ではありません。
これからのDXは、「ゼロトラストを基軸にした防衛DX」でなければならない。
その設計思想を抜きにしてクラウド化を進めることは、経営リスクそのものです。
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