▼背景 ・消費者側の商品知識が増大し、それがインターネットで瞬く間に伝播する時代になった。悪いニュースが瞬時に伝わるだけでなく、特定製品の利用ノウハウ、新しい使い方、高度な使い方なども、ゆっくりとではあるが、確実に伝播する時代になっている。 ・価格コム。ブログ。 ・一方、日本のハイテク電機メーカーは、デジタル機器の急速な陳腐化、価格下落、そして中国メーカーなどの追い上げによって、売上高営業利益を向上させることができないでいる。 ・一般的に、欧米の電機メーカーが売上高営業利益5〜10%であるところ、日本は1〜5%。半分以下の水準しかない。 ・この図式は、  「ネットワークウォークマン」という携帯プレイヤー単体で勝負したソニー   と  「iPod」というハードウェア+「iTunes」というソフトウェア+「iTunesMusicStore」というサービス  によって新しい世界を構築し、それが絶大な支持を得ているアップル   との違いを見ればよく理解できる。 ・日本のハイテク電機メーカーは、これまでのハードウェアの機能向上一本槍の姿勢を改めて、   ハードウェア + ソフトウェア + 有料サービス  の三要素によって、高品位のカスタマーエクスペリエンスを提供できるビジネスモデルへとシフトしなければならない。 ・同じことは、携帯電話を代表とする通信サービス分野、および、自動車分野にも言える。 ・これらハイテク電機、通信サービス、自動車は、日本経済を支える屋台骨であり、それらすべてが、 「ハードウェア+ソフトウェア+有料サービス」によって、高品位のカスタマーエクスペリエンスを提供する方向へシフトすることが求められている。 ▼日本企業の現状 ・日本企業の多くは、「ハードウェア+ソフトウェア+有料サービス」の三要素を有機的に組み合わせた商品を開発できる体制を持っていない。モノ単体の機能向上は得意だが、カスタマーエクスペリエンスの世界はまだ手探りである。 ・カスタマーエクスペリエンスの改善は、直接的に、消費者側からフィードバックをもらうことによって可能になる。特に、さまざまなメーカーの製品やソフトやサービスを組み合わせて使いこなしている、一部の、“スーパーユーザー”からのフィードバックが不可欠である。 ▼現在の“スーパーユーザー”の姿 ・現時点では、“スーパーユーザー”の大多数は、価格コムの特定製品の書き込みで、初心者から問いがあった場合に、無料で、ボランティアとして、それに答えてあげるか、自分のブログで、特定製品を使いこなした経験を、ひとつの“ネタ”として披瀝するか、いずれかしかない。 ・せっかくの高い価値のある知識が、まったく経済的な見返りのないまま、インターネット上に流されている。 ・たとえば、あるカーナビ製品で、ある有料情報サービスを使って、ある地点からある地点まで走ってどうだったか。そして、非常に細かいが非常に有用な改善ポイントを発見し、それについても親切に書き込んでいる。 ・たとえば、ある携帯電話機で、Felicaを使い、ある店舗と関係した有料情報サービスを使ってみた。しかし、店舗側の対応と、情報サービスの内容とに齟齬があり、少しぎくしゃくした経験をした。これについて、有用な改善ポイントを発見し、それについても意見を表明している。 ・たとえば、あるデジタルカメラで、SDカードに記録したデータを、あるプリンターに装着し、カラーで出力しようとした。しかし、そのプリンターのソフトウェアに不具合があり、出力に手間がかかった。これについて、ソフトウェアのインターフェース上の改善ポイントを発見し、それについて詳細に説明している。 ・こうした例が多々あり、それらが経済的な見返りを受けないまま、いわば垂れ流しの状態になっている。 ▼消費者の知識をベースにした新しい経済モデル ・求められているのは、 a. 消費者の高度な知識が経済的な見返りを受け b. 企業側が、これを取り入れて商品開発に生かすことができる体制を作り c. できるだけ早期に、消費者知識→新しい手法の商品開発→高度なカスタマーエクスペリエンスの実現→高い営業利益率、を実現できるプロセスを確立する ことである。 ・仮に、現行のハイテク電機、通信サービス、自動車メーカーの営業利益を50%でも向上させることができるとすれば、この経済ポテンシャルは莫大なものとなる。 ・この枠組みを事業として行う者は、向上した営業利益の一部を、一種の成功報酬の形で受け取ることも不可能ではない。 ・また、消費者側に相応の金額を還元することにより、彼らには“スーパーユーザー”たらんとするインセンティブが大いに働き、日本人固有の細やかさが大いに発揮されて、より多くの利用ノウハウや新しい使い方の発見が相次ぐようになるであろう。 ・これらにより、多くの消費者がマーケティング機能の一端を担うようになり、企業はこれを自由に商品開発に取り込むことによって、開発効率が増し、それがゆくゆくは海外輸出の売上増大となって日本の経済力を高めていく。