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20年以上断続的にこのブログを書き継いできたインフラコモンズ代表の今泉大輔です。NVIDIAのフィジカルAIの世界が日本の上場企業多数に時価総額増大の事業機会を1つだけではなく複数与えることを確信してこの名前にしました。ネタは無限にあります。何卒よろしくお願い申し上げます。

ユニクロの店舗が丸ごとフィジカルAIになる!:NVIDIA Jetson Thor活用のフィジカルAI提案

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インフラコモンズの今泉です。

インフラコモンズという社名は、国際インフラ案件に関する情報発信、調査、コンサルティングをメインでやっていた時代のもので、あの頃は、内外の発電案件に携わっていました。当ブログの「インフラ投資」カテゴリーに名残があります。

巡り巡って、今はAIの時代。生成AIやフィジカルAIでも先頭を走れるように頑張っております。

さて、NVIDIAの先端的なAIエッジコンピュータであるJetson Thorを既存のメーカーの製品と組み合わせるとどのようなフィジカルAIが具体化するか?一種の思考実験としてこのシリーズを書いています。

ヤマハ発動機、産業ドローンが"現場を理解し動く"知能体へと進化:NVIDIA Jetson活用フィジカルAI大全集(第2回)

村田製作所のセンサー群はフィジカルAI全体を進化させる:NVIDIA Jetson活用フィジカルAI大全集(第3回)

豊田自動織機、フォークリフトが物流現場の主役AIになる日:NVIDIAフィジカルAI大全集(第4回)

Jetson Thorという、エッジで機能する(クラウドへの接続が不要)超高性能なAIデバイスは、リテールテックの世界でも有用です。リアルタイムで変動する売上などのデータがあり、店舗に出入りする顧客の人数などを検知するセンサーがあり、気温など天候データがあれば、売上増に直結する方策をAIが弾き出し、物流ロボットや店舗ロボットに直接命令して、「店舗全体がフィジカルAIになっている」という世界も不可能ではありません。

以下は技術的な正確性が担保されるようにChatGPT 5.1に書かせたテキストです。インプリケーションは、様々な企業において、NVIDIA Jetson Thorという過去にはなかった超高性能のAIデバイスを活用した「自社にとってのフィジカルAI」のドラフトを、現在の最先端AIであるChatGPT 5.1やGemini 3 Proに作らせることができるということです。

ユニクロ:倉庫・工場・店舗を"考える現場"に変えるフィジカルAI革命

ユニクロはすでに、店舗・サプライチェーン・顧客体験を「一気通貫のデジタル化」で統合し、小売業でありながら"テック企業"としての進化を遂げています。

NVIDIAの先端的なAIエッジデバイスJetson Thorがそこに加わると、現場そのものがAIで考え、動く――という、店舗丸ごとのフィジカルAIが可能になります。

1. Jetson Thorとは何か----"倉庫・店舗に頭脳を置く"ためのチップ

Jetson Thorは、ロボット・車両・工場設備など**「動く機械の中で、サーバーレベルのAI推論を行う」**ためのNVIDIA最新プラットフォームです。
単なる高性能GPUではなく、マルチモーダルAI(画像・音声・動作・センサー情報)を現場で統合推論できる点が決定的に異なります。

つまり、「倉庫ロボット」「物流車両」「工場機械」「店舗端末」そのものが、
クラウドに頼らず、リアルタイムで考えて動けるようになるのです。

この特性は、サプライチェーン全体を最適化してきたユニクロの次のテーマ――
**リアル空間の自律最適化(Physical AI)**と完璧に合致します。

2. ユニクロの現場が抱える「フィジカルAI化」余地

ユニクロの「Ariake Project」は、企画〜製造〜物流〜販売をデジタルで一気通貫化する構想です。
しかし、現場での動作判断・学習という点では、まだ人間の判断に依存している部分が多いのが実情です。

現場領域 現状の課題 Jetson Thorでの進化
物流倉庫(自動仕分け) ピッキング・在庫配置を人が微調整 ロボットが画像+LIDARで状況を認識し、最短経路・在庫最適化を即時判断
工場(縫製・検査) 品質判定・異常検知に熟練者の経験が必要 カメラとセンサーを統合し、製品状態をリアルタイムでAI検査
店舗(レジ・陳列) 補充タイミング・混雑対応を店員が判断 カメラ+在庫センサー+購買履歴から、AIが補充・配置を提案
配送(車両・ルート) 渋滞・天候変化で配送効率が乱れる Jetson搭載車両が現場でルート最適化・温度管理を自律制御

このように、Jetson Thorは"店舗運営や倉庫運用の脳"となりうるのです。

3. フィジカルAIが変えるユニクロの3大現場

(1)倉庫:ロボットが在庫を「探し、考え、並べる」

ユニクロの物流センターでは、既にAI・ロボティクス化が進んでいます。
Jetson Thorをロボット側に搭載することで、さらに以下が可能になります:

  • カメラ・LIDAR・重量センサーで倉庫内状況をリアルタイム把握

  • どの通路が混雑しているかを自律判断し、最短ルートを計算

  • 在庫補充の順序をAIが動的に入れ替え、作業を平準化

つまり「人がシステムを指示」するのではなく、
「倉庫ロボットが現場の最適解を自ら導く」フェーズに入るのです。

(2)工場:縫製ラインが"自分で検査する"

ファーストリテイリングは、中国・ベトナム・バングラデシュなど海外生産拠点に広範な縫製工場ネットワークを持っています。
ここにJetson Thorが導入されると、次のような自律検査・補正が可能になります。

  • カメラで縫い目やステッチずれを検出 → AIが即座に補正指示

  • 熱・圧力・振動センサーから機械の異常傾向を検知 → 整備員に自動通知

  • 生地ごとのテンションや光沢を学習し、「仕上がり品質のばらつき」を最小化

つまり、人間の経験をAIが模倣し、現場が自己修正する構造になります。
これこそが"生産工程のフィジカルAI化"です。

(3)店舗:カメラが「売場を理解し、補充を提案」

店舗では、すでにRFIDタグによる在庫管理・セルフレジ化が進んでいます。
Jetson Thorをバックヤード端末や什器に組み込むことで、
リアルタイム売場理解AIが実装可能になります。

  • 棚前カメラで在庫・欠品を自動検知 → 店員端末に補充指示

  • 顧客の動線・視線を解析 → 陳列パターンを自律調整

  • 外気温や時間帯から、販売予測に基づく商品入替を即時実施

「店員が動く」のではなく、「店舗そのものが考える」。
この構造が"リテールのフィジカルAI化"です。

4. Jetson Thor × ユニクロがもたらす産業的波及

領域 変化
サプライチェーン全体 倉庫・工場・店舗・配送がリアルタイムで情報連携し、クラウドに頼らず現場判断が可能に。
人的リソース構造 単純作業が減少し、現場人材は"AIを調律する"役割へ。
環境対応・効率性 在庫ロス・輸送コスト・電力消費が減少、CO₂排出削減に寄与。
競争優位性 フィジカルAIによる現場知能が競合の模倣困難な資産となる。

とくに物流×小売の両軸を持つユニクロにとって、
「AIが倉庫から店頭までを"ひとつの生体"のように動かす」ことは、
世界最先端のオペレーションモデルそのものです。


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「フィジカルAI」という言葉は2025年1月のコンシューマエレクトロニクスショー(ラスベガスのCES2025)におけるNVIDIA CEOジェンセン・フアンの基調講演をきっかけに世の中に広まり始めました。このセミナーでは時価総額でも世界有数の企業になったNVIDIAのCEOによるフィジカルAIの定義を基礎として、先ごろ発売されたロボット用エッジコンピュータJetson Thorによって初めて明確になった「日本の製造業が開発販売できるフィジカルAI」の全体像をご説明します。自律的なロボット、ドローン、農業機械、建設機械、検査保全ロボットなど、具体的な応用形は様々あり、日本の製造業にとって新しい時代が来ることを予感させます。

【参加申込はこちら/セミナー提供形態等の詳細はこちら】

1.イントロダクション:AIの進化の三段階

 ・知覚AI → 生成AI → フィジカルAI

 ・ジェンセン・フアンのフィジカルAIの定義は「知覚し、推論し、計画し、行動するAI」

  (AI which Perceive, Reason, Plan, and Act)

2.技術解説:ジェンセン・フアンの定義を技術的に翻訳すると...

 ・センサー&センサーフュージョン

 ・Vision-Language-Action (VLA) モデル

 ・リアルタイム推論とオンボード処理

 ・簡素化される学習プロセス:事前学習+現場適応

3.日本の製造業が開発に使えるツール:Jetson ThorとNVIDIAスタック

 ・Jetson Thorの特徴(オフライン/オンボードで動作、高度なリーゾニング、センサーフュージョンとの接続、

  ChatGPT的なLLMを搭載し人間の言葉による指示ができる等)

 ・Omniverse、Isaac SimなどNVIDIAスタックとの連携により高速開発ができる

4.ユースケース

 ・ヒト型ロボット//四足歩行ロボット

 ・自律走行ドローン

 ・農業機械(自律トラクター、収穫ロボット)

 ・物流倉庫ロボット

 ・建設機械(自律重機、搬送ロボット)

 ・外観検査ロボット

 ・サービスロボット

5.まとめと質疑

 ・「日本企業が参入すべき領域」

 ・「部品メーカーのビジネス機会」

 ・Q&A

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