未来型EVトラックから空飛ぶクルマが飛び立つ衝撃!経営者がCES2026に行くべき理由【モビリティ編】
トヨタがWoven Cityのコンセプト発表をCESの場で行ったり、ソニーとホンダが共同開発したEV「AFEELA」のお披露目の場をCESに設定したりと、CESは自動車OEMにとっても先端的なコンセプトやプロトタイプを発表する場になってきています。
斬新なモビリティのコンセプトやプロトタイプはまずCESで発表して、それが世界に自然浸透していくのを待つ...というのが常套手段になりつつあります。
従って、例えば東証上場企業の経営者がCES2026の会場に直接足を運び、展示を見ていく際に、あっと驚くような想像したこともないモビリティの新しいカタチが目の前に飛び込んでくる...ということが起こります。
小鵬汽車 XPeng Motorsの空飛ぶクルマ部門XPeng AeroHT
以下で紹介するXPENGの空飛ぶクルマは、中国国内での試験飛行を経て、世界の先端テクノロジーが集まるCESで初めて国際的にお披露目されました。
それまでは詳細が伏せられており、CESが実機展示としての初登場となりました。
日本では新興モビリティ企業"小鵬匯天"については全く知られていませんが、社名からわかるように、同社は中国のEVメーカー小鵬汽車の系列会社です。
会社概要:小鵬匯天(XPeng AeroHT)
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会社名(中国語):「廣東匯天航空航天科技有限公司」(通称:小鵬匯天/XPeng AeroHT)です。
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起源・設立:元々は「匯天科技有限公司」として2013年に東莞(広東省)で創立されています。
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小鵬汽車からの投資・改組:2020年7月ごろ、何小鵬(小鵬汽車CEO)および小鵬汽車がこの匯天科技に投資・支配権を持ち、「小鵬匯天」として同社のエコシステム企業(生態企業)となりました。
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企業ミッション・ビジョン:
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ミッション: "讓飛行更自由"(「飛行を、より自由に」)というフレーズが使われています。
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ビジョン:グローバルで「低空移動(個人飛行/都市空中モビリティ)」の実現を目指す。"智能電動飛行汽車"(スマート電動飛行車)を開発し、都市の"立体交通"を構築することが掲げられています。
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主な活動・進捗:
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同社は「陸地航母(Land Aircraft Carrier)」という分体式飛行車(地上モジュール+飛行モジュール)を開発中で、2026年の納入開始を目指していると報じられています。
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2025年3月には湖南省柳葉湖観光リゾート区でこの機体の地上走行・飛行デモを実施。
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量産工場の建設および大量受注の報もあり、例えば中東で600台の初期受注を獲得という報道もあります。
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R&D・特許・人材など:85%以上が修士以上の研究者からなる開発チームという情報や、数百件の特許出願という報道あり。
小鵬汽車(XPeng Motors)との関係
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小鵬汽車は中国・広東省広州市を拠点とするEV(電気自動車)メーカーで、2014年創立。
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小鵬匯天は、小鵬汽車の「生態企業(エコシステム企業)」またはグループ関連企業という位置づけです。つまり、小鵬汽車が自社のモビリティ・エコシステムの一環として、空中モビリティ・低空分野を拓くための子会社・関連企業として関与しています。
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実際の整理:
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小鵬汽車がEV事業を軸にモビリティ戦略を進める中で、空と地の統合型モビリティの可能性を探るため、2020年に匯天科技を支配下に置いた。
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匯天は、小鵬汽車のブランド・技術リソース/電動化・ソフトウェア資源を活用しつつ、飛行車という"次世代モビリティ軸"を構築している。
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そのため、匯天の成果(飛行車開発・技術実証・製造体制構築)も、広義には小鵬汽車のモビリティ戦略の一部として位置づけられていると言えます。
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意義:この関係によって、小鵬汽車は「地上のEVメーカー」から「空も含む次世代モビリティ企業」へとブランド拡張を図っており、匯天はその"空側"の開発・実証実験拠点として機能しています。
このように小鵬匯天XPeng AeroHTは、小鵬汽車XPeng Motorsが次代の生き残りをかけた戦略部門であることがわかります。
ここがCES2025で来場者をあっと言わせた展示をお披露目したのです。
経営者がCES2026に行くべき理由【モビリティ編】
――Xpeng Aerohtが示した「空のインフラ」発想の衝撃
(Xpeng Aeroftの空飛ぶクルマの展示は17:50頃から)
CES 2025。
ラスベガスの会場で、観客の視線を一身に集めたのが、中国の新興モビリティ企業・Xpeng Aeroht(小鵬匯天)の「空飛ぶクルマ」でした。
巨大な6輪EVバンの後部が開き、格納されたeVTOL(電動垂直離着陸機)がゆっくりと姿を現す。
離陸準備を整えるその光景は、もはや"展示"ではなく、空と地上を統合したモビリティ・インフラのデモンストレーションそのものでした。
「陸地航母」という思想:空と地上の境界をなくす
Xpeng Aerohtのモジュラー型飛行車「陸地航母(Land Aircraft Carrier)」は、
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地上を走るEVバン(マザーシップ)
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着脱式のeVTOL(エアモジュール)
という2つの構成から成り立っています。
マザーシップは航続距離1,000km、エアモジュールは35分間の飛行が可能。
離陸場所まで自走し、eVTOLを切り離して飛行、帰還後は再充電する。
つまり、この車両そのものが「移動式の空港兼ハンガー」です。
経営的に見れば、これはインフラを車に内包する発想です。
滑走路を造るより、飛行を可能にする地上モジュールを動かす。
この"インフラ内製化"という概念は、都市交通、観光、物流など多くの分野に波及する可能性を秘めています。
規制を逆算した設計:分離構造という経営戦略
Xpengの特徴は、技術よりも制度設計への洞察にあります。
空飛ぶ車の課題は常に「認証の二重構造」――つまり、自動車と航空機の両方の基準を満たす必要があること。
そこで彼らは、あえて車と航空機を分離。
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マザーシップは自動車規制で認可
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eVTOLは航空局(CAAC)で個別認証
という「規制リスクの分散戦略」を採用しました。
これにより、開発スピードを最大化し、耐空性審査を並行処理できる。
CESという場でこの構造を見せたことは、「技術展示」ではなく「制度突破のモデル」を世界に発信したという意味を持ちます。
2026年納入開始──中国発・空の産業化ロードマップ
Xpeng Aerohtは、2026年に量産開始を予定し、価格を30万ドル以下に設定。
既に世界で7,000件以上の予約を受け付け、
中東市場(UAE・クウェート・カタールなど)からは600台という一括発注を獲得しています。
さらに同社は、広州に年間10,000台の量産工場を建設中。
「航空機ではなく車の生産プロセスを応用する」ことで、スケールを自動車産業レベルに引き上げようとしています。
この「量産できる航空機」という発想は、欧米のeVTOLスタートアップ(Joby、Liliumなど)にはない、中国的な産業アプローチです。
経営者が学ぶべき"展示の構造":構想→試作→実装
ホンダが「コンセプトを翌年プロトタイプ化」したように、(経営者がCES2026に行くべき理由【モビリティ編】―ホンダの出展スタイルからインサイトを得る)
Xpengもまた、展示の3年サイクルを経営計画の可視化に使っています。
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2024年: ドバイで初の公開飛行試験
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2025年: CESで国際デビュー
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2026年: 量産・納入開始
つまり、展示はプロモーションではなく、投資家・政府・規制当局を巻き込む"経営ツール"になっているのです。
このスピード感を現場で体感することこそ、経営者がCESに足を運ぶ最大の理由といえるでしょう。
"空飛ぶ車"の本質は、都市のルールを変えるテクノロジー
Aerohtの狙いは、単に空を飛ぶことではありません。
「どこで離陸し、どこに充電し、誰が運用するか」――
つまり"空のインフラ"をどうデザインするかが主題です。
規制、電力、サプライチェーン、観光、物流。
どの産業においても、いまや「垂直統合」ではなく、"垂直移動"という発想が新しい競争軸になりつつあります。
経営者がCESに行くべき理由は、この「産業境界の書き換え」を自らの目で見るためです。
空飛ぶ車は、まだ日本市場には遠い未来に見えるかもしれません。
しかし、中国企業はすでに"制度とインフラごと"動かし始めています。
結語:CESは、未来を展示する場所ではなく、未来を配分する場所
CESはもはや単なる展示会ではなく、「未来をどの国がリードするか」を可視化する舞台です。
Xpeng Aerohtが示したのは、テクノロジーの進化ではなく、経営判断の速さと制度連携の設計力でした。
経営者がCESを訪れる最大の意味は、
「技術トレンドを見る」ことではなく、
"ルールをつくる企業"がどこにいるかを確かめることにあります。
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