BM-0002:事業モジュール#2 カスタマーアライブ
本事業案における中核部分を成す事業モジュールの第二番目です。
Googleが地球上のすべての事物を検索対象にする野望を持っているのはつとに知られたことですが、まさか、人間の頭のなかまではやりはしないでしょう。それをやってやろうじゃないかというのが、本事業モジュールです。統計的に人様のマインドをスキャンさせていただくと捉えてもよいです。
原理は単純であり、人の頭のなかを探るための“検索ロボット”をランダムにかつ頻繁に参画消費者に対して飛ばします。これは簡単に言えば「質問」ないし何らかのレスポンスを求めるメッセージです。その「質問」が回答を得てサーバーへ戻っていく。それを収蔵して、法人のマーケティング担当者や商品開発担当者などが活用できるように加工して提供するというサービスです。
個人情報によって特定しうる個人と、その彼/彼女の頭のなかを調べた結果とが一対一対応するようではものすごくまずいですから、①“検索ロボット”の発信対象はランダムにサンプリングし、②得られた結果も統計手粋な処理を施して、「モデル」化した擬似人格に加工して利用するようにします。
ただし、オプションのサービスとして、企業のマーケターなどが、特定の回答に対して特定の答えをするサンプルに対して“ドリルダウン”をかけたい時、さらには、その特定個人に対してデプスインタビュー、あるいはモニターを依頼したい時などは、当該個人と当該企業との間である種の取り決めを交わすことによって、これができるものとするという方向もありだと考えています。要議論ではありますが。
いずれにしても個人情報のもっともデリケートなところに切り込んでいくサービスであるので、種々の方策によって、リスクを回避していかなければなりません。
事業モジュール#2 カスタマーアライブ(仮称)
本事業モジュールは、消費者のマインドのなかに対して、マーケティング的な有用性を持つ擬似的なサーチをかけることを可能とするものである。
以下の諸機能から成る。
①何らかのレスポンスを行ってくれる消費者をランダムにサンプリングする機能
②得られたレスポンスと、レスポンス当事者の属性をひもづけた上で、多数のレスポンスに対して統計的な処理を施し、そこから、マーケティング的に有意なモデル化された擬似人格を生成する機能
③ランダムサンプリングされた消費者に対して、何らかのレスポンスを要求するメッセージ等の生成、送信機能
④マーケティング的に有意なモデル化された擬似人格を生成するために、レスポンスの要求の内容を、整合性を持った形で設計するための機能
⑤年齢や居住地など、消費者の属性データを収蔵しておき、個々のレスポンスとのひもづけを維持する機能
⑥個人情報保護法の規定に鑑み、個人を特定しうる住所や指名などの情報と、本事業モジュールが提供するすべての業務処理とを遮断したり、必要に応じては個別的に接続したりできる機能
⑦本事業モジュールの顧客である法人のマーケティング担当者などが、必要なモデル化された擬似人格を選択し、その擬似人格と、マーケティング的に有意な対話を行うことができる機能
⑧上記の対話を行う際に、収集済みのレスポンスからだけでは、顧客が求めている回答が得られない場合に、追加的にレスポンスの要求の内容を生成し、ランダムサンプリングされた消費者に対してそれを送信する機能
⑨顧客が必要と判断した場合には、特定の回答を行う特定の消費者と当該顧客とのコミュニケーション経路を設定し、場合によっては、当該消費者を匿名の状態においたままでコミュニケーションを行う、別な場合には、当該消費者と当該顧客とが直接的に契約を結ぶなどしてモニターやインタビューなどの依頼ができるようにする機能
⑩消費者とのレスポンス要求のやりとりを、インターネットウェブサイト、インターネットメール、携帯電話ウェブサイト、携帯電話メールなどチャネルの区別を問わず、統合的に管理する機能
⑪レスポンス要求の内容に関して、アンケート的な質問に対する回答に留まらず、音声による報告、デジタルカメラ等による静止画および動画、バーコードリーダによる商品バーコードの読み取り結果、RFIDリーダによる商品装着RFIDの読み取り結果、なども統合的に管理できる機能
これらの諸機能により、企業顧客のマーケティング担当者などが持つ、消費者に対して直接的に問い、答えをもらいたい要求を、生成された擬似的な人格との間で行うことができるようにする。生成された擬似的な人格には、統計的な偏りがなく、かつ、個人情報保護法上の管理面の煩雑さもない。ただし、顧客が希望する場合には、特定の回答を行う特定の消費者に対してアクセスすることも可能な機能を具備する。
以上です。
付記。
事業モジュールとは言いながら、マーケティングや営業に関する計画、料金体系や収支見込などが一切ありませんが、それらについては追々拡充していきます。現時点では、ビジネス方法特許が存在しうるレイヤ、およびその一段上の個々のビジネス方法特許が複数束になって実現するサービスのレイヤにおける、私自身の考案内容を「事業モジュール」として記述しています。
お気づきのように、上で述べた「モデル化された擬似人格」は、おそらくは、2001年半ば頃から、Cooper.comのKim Goodwinという方などが言及し始めた、「Persona」の延長線上にあります。
文脈としては、ウェブサイトのユーザビリティ向上のためにインターフェース設計を行う際に、万人のためのインターフェースの誤謬に陥らないように、主ターゲットが誰かをPersonaとして設定し、それも必要に応じて複数設定して、インターフェース設計効率を上げようではないかという、ところから出てきたものと推察します。
Googleで検索してみると、ペルソナ法、ペルソナ・シナリオ法といった名称で、無数の日本語資料がたくさんあり、すでに定着しているのだということをつい最近になって知りました。
私が直接このPersonasを知ったのは、ForresterのCustomer Experience Value Chainというレポートによってです。このレポートでは、ウェブサイトのデザインに留まらず、カスタマーエキスペリエンスの醸成が必要な諸分野で、Personaを設定してかかれば効果的であると述べられています。
本事業モジュールのアイディアは、このレポートでPersonaなるものを知るかなり前から私の中にあったのですが、その後先のことを言ってみても始まりますまい。こういうことはよく起こります。
ただし、本事業モジュールは、現在のところ、Persona設計が人手で行なわれているところを、消費者に対する“検索ロボット”をランダムかつ頻繁に放ち、そのレスポンスを統計的に処理することで、ダイナミックな(かつリアルタイム性のある)Persona状の擬似人格にしようというところが決定的に異なっています。ビジネス方法特許の審査的な基準で見れば、そこに新規性あるいは進歩性があるのかどうか?
このPersonaという用語ですが、完璧にユング心理学から来ていますね。上のKim Goodwinさんの文章において冒頭に”archetype”とありますが、このアーキタイプ(原型)は完璧にユング用語です。
本事業モジュールについても、事業の案であり、ドラフトです。特許庁に出願されているドキュメントの中にバッティングしているものがあるかどうかも精査していません。その点についてご承知おきください。