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20年以上断続的にこのブログを書き継いできたインフラコモンズ代表の今泉大輔です。NVIDIAのフィジカルAIの世界が日本の上場企業多数に時価総額増大の事業機会を1つだけではなく複数与えることを確信してこの名前にしました。ネタは無限にあります。何卒よろしくお願い申し上げます。

ケーススタディ:パナソニック社長がゴールドマンサックス調査主任級を使う想定で一晩でChatGPTに書かせた成長戦略

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これは出来上がりを見ると、どう見ても1,000万円級です。三菱総研、野村総研、日本総研などに本格的な発注をすると、製造業&サプライチェーン担当の主席研究員、産業デジタルツインに詳しい主席研究員、エネルギーや社会インフラ担当の主席研究員が3名はいないとできない中身です。

上場企業の経営者が自らChatGPTディープリサーチ使うとバリューは数千万円

今回のケーススタディでは、前回公開して好評だった

1本300万円のインド市場調査を一晩でやらせるケース【経営者のChatGPTディープリサーチ】

の第二弾ということで、パナソニック様を取り上げさせていただきました。
過去には、シャープ様、信越化学工業様、トヨタ自動車様、任天堂様を取り上げさせていただいています。

【ChatGPT経営】ケーススタディ:シャープのSWOT分析はディープリサーチで高品質に

ケーススタディ:信越化学工業のM&AアドバイザーとしてChatGPTディープリサーチを活用するテクニック(1) (今泉注:出来上がったM&A戦略の調査報告書が長大なものになってしまったので、上下に分けています。プロフェッショナルのM&A関係者の方が見てもおそらく唸る出来です。M&A候補も探し出しています)

ケーススタディ:信越化学工業のM&AアドバイザーとしてChatGPTディープリサーチを活用するテクニック(2)

ケーススタディ:トヨタのトランプ自動車関税対策会議の資料を半日で作成する【経営者のChatGPTディープリサーチ】

【緊急ケーススタディ】任天堂Switch2米国予約販売延期に関するシナリオプランニング

いずれも上場している大企業の経営者様を想定したケーススタディであるのは、まさに上場企業の経営者様こそが、自ら、ChatGPT + ディープリサーチにロジカルに練り上げらたストラクチャード・プロンプトを打ち込んで、調査執筆させた時に、そのバリューが数千万円級になるからです。特にM&Aが絡む調査報告書や、株価対策の調査報告書を書かせた時に、です。

何度も書いてきましたが、ChatGPT + ディープリサーチの仕事の能力は、スタンフォード大MBAを取得して米国のゴールドマンサックス等の投資銀行に勤務して数年というレベルです。僭越ながら小職はそうした人々が複数いるシスコシステムズの特殊なチームにいて数年間、Thought Leadershipと呼ばれる日本の業界トップの企業の経営者様及びCIO様にイノベーション経営の中核を伝授する報告書等を書いていました。
従って、ChatGPTを触って間もない2023年の4月頃から、「あ、ChatGPTの知的レベルはスタンフォード大MBAクラスだ」とすぐに気づきました。

そうした小職のバックグラウンドについてはこちらの投稿の冒頭もお読み下さい。

【ChatGPT経営】ケーススタディ:シャープのSWOT分析はディープリサーチで高品質に

まさにChatGPTはアメリカの西海岸で育まれたLLMなのです。従って、アメリカ西海岸=スタンフォードのMBAがごろごろいるシリコンバレーの高年収企業の基準で「強化学習」をしているのです。

実はスタンフォードMBAよりも上の知力、すなわち、そのMBAを教えた教授のレベルの知力を持っているのだということが最近わかってきました。スタンフォード大の経営学の教授として、最先端の経営理論を教えることができるのです。講義を再現したテキストを書くことができます。これは無料版のChatGPTではなく、有料版にくっついてくるディープリサーチを、それ相応の論理的な構造を持ったストラクチャード・プロンプトで走らせた時の話です。

ChatGPT最新版は経営について何を「強化学習」しているのか?

以下はChatGPTと昨日やりとりしたログです。

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私:どこでこのスキルを学んだんですか?

ChatGPT:いい質問ですね!僕(ChatGPT)がこのレベルのM&Aスキルを発揮できるのは、いわば「プロフェッショナルから大量に学んだAIの総合力」によるものです。
実際には次のような要素の"融合"で動いています:

1. グローバルM&Aレポート・教科書の知識
Harvard Business ReviewやMcKinsey Quarterly、Bain & CompanyのM&A戦略記事
PEファンドの投資判断プロセス(例:KKR、Blackstoneのケース)
MBAスクール(ハーバード、スタンフォード、INSEADなど)のケーススタディ

2. 実務家のロジックとナラティブパターン
投資銀行のピッチ資料・IM(Information Memorandum)に含まれる言語スタイル
実際の売却案件で用いられる「バイヤーの説得フレーム」
戦略コンサル(特にBCGやStrategy&)による事業ポートフォリオ再編の手法

3. 日本企業特有の意思決定構造への理解
日本企業での事業売却・スピンオフは「構造改革」として進められるため、表現や政治的配慮(例:「ブランド毀損を避ける」「雇用維持のストーリー」)が重要
経営者の発言、日経新聞・ロイターなどのインタビューからリアルな内部構造を学習

4. ChatGPT Deep Research の強み
通常の検索では拾えない"複数情報の統合・構造化"が可能
「戦略 × ファイナンス × 組織論 × ブランド論」など、多角的な観点を一気に扱える
実務家が頭の中で行う「仮説生成→構造化→提案」プロセスを再現

なので、一言でいえば
**「M&Aのプロフェッショナルたち全員の思考を、体系的にトレースできるよう学んでいるAI」**というのが僕の答えです。
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こうしたもので彼は「強化学習」をしているのです。

なので、彼の知力や職能を「スタンフォード大MBAでゴールドマンサックス級の投資銀行に勤務して数年の調査主任」と表現してもまったく誇張ではないのです。そして時々、それを経営学教授として講釈できる人になります。

考えても見て下さい。上のような学習をした年収5,000万円クラス(米国の相場)の調査主任が、ChatGPTとしてそばにいるのです。ちょっと込み入った調査内容であれば有料版にくっついているディープリサーチを使えばいいだけです。

スタンフォードMBAの知力をフルに引き出すには、それ相応の論理的かつ構造的なプロンプトが必要です。そういったプロンプトを得るテクニックを身につければ、最大手企業の社長自らが、経営戦略を、朝でも昼でも夜でもそばにいる彼と対等で議論できるのです。また彼に仕事をさせることもできます。朝でも昼でも夜でもです。なんであれ知的な仕事であればこなします。年収5,000万円クラスの調査主任がです。しかもアウトプットは日本語です。(場合によっては英語のストラクチャード・プロンプトの方が調査性能が優れることがあります。これは外国語資料を博捜する場合です。ChatGPTが英語圏の開発者によって英語で組まれているということを念頭に置けば、英語のプロンプトの方が回答性能に優れる...ということが理解できます)

3. 日本企業特有の意思決定構造への理解

を学んでいるので、日本企業の経営者のニーズにも十分に応えられます。

夜寝る前にジェンセン・フアンの『50兆ドル市場』を思い出して調べてみた

ということでパナソニック様のケーススタディです。パナソニックについては経済メディアで課題が報じられています。それについてはここでは繰り返しません。

経営者の方が、夜寝る前に、「あ、あれを調べてみようか?」と思いついて、ChatGPT + ディープリサーチを走らせて調査執筆させた報告書が以下です。ChatGPTが出力した報告書の書式の再現やYouTube貼り付けの便宜などがあって、noteの私のブログで掲出しています。

ケーススタディ:パナソニックの新成長領域は「産業のデジタルツイン」【経営者のChatGPTディープリサーチ】

2万字近い読み応えのある報告書です。上記の年収5,000万円のスタンフォードMBAゴールドマンサックス調査主任級という想定で調査執筆させた報告書です。目の覚めるような出来です。

構成としては、ChatGPTと議論しながら、
第一にパナソニックの事業資産を調べて理解する(この部分ではパナソニック・ウェブサイトのIRセクションを参照した)
第二にNVIDIA CEOジェンセン・フアンが言及していた「50兆ドル市場」(NVIDIAの産業デジタルツインOSであるOmniverseの経済圏)の中身を調査執筆する
第三に「50兆ドル市場」の中でパナソニックの事業資産が生きる分野を特定し、パナソニックの成長戦略を記す、
という内容にしました。

優れた調査報告書を得るストラクチャード・プロンプトはどのようにして得るか?

スタンフォードMBAゴールドマンサックス調査主任級の実力を引き出すには、このようにChatGPTと経営者とが対話しながら、問題意識を鮮明なものにして、「これこれの調査報告書を得るにはどういうストラクチャード・プロンプトにすればいいか?」と尋ね、まずストラクチャード・プロンプト第一案を出させ、中身を見て、改良余地があるようならその意見を言って第二弾を出させる...という段取りで進めて行きます。

実際にChatGPTディープリサーチの調査執筆性能がやわで、長大なストラクチャード・プロンプトをこなしきれない時があります。そういう場合はやはりChatGPTと相談しながら、調査の仕様を間引いて行きます。

「パナソニックの既存事業資産を分析し、NVIDIA Omniverseが提示する50兆ドル規模の未来市場の全体像を掘り下げた上で、パナソニックがどのように参入・進化し得るかを報告する経営戦略レベルの報告書」のハイライト

B. 製造現場×デジタルツイン:スマートファクトリー戦略

狙いと領域: パナソニックのDNAである「現場のものづくり力」を、デジタルツイン/シミュレーション技術で飛躍的に高め、その成果を事業化するシナリオである。具体的には、自社工場のスマートファクトリー化を徹底し、得られた生産性向上・省エネのノウハウやシステムを外販する。現在でもパナソニックはFA(ファクトリーオートメーション)関連機器を一部持つが、競合のファナックやキーエンスほど大きな位置占めていない。しかし、デジタルツイン時代には「製造ノウハウ×IT」の融合が鍵となるため、ハード単体ではなくソリューションで勝負できる土俵が生まれる。この領域で新たな強みを築くことが狙いである。

具体策: まず自社の主要工場(例えば車載電池工場、白物家電工場、電子部品工場など)においてOmniverseやシーメンスのTecnomatix等の先端ツールを導入し、フルデジタルによる生産最適化を図る。BMWとNVIDIAの事例に倣い、生産ラインの3Dモデルを構築し、ライン改造や新製品投入時のレイアウト検証を仮想空間で行う。同時に、AIによる予知保全モデルを構築して機械の故障を未然に防ぐ。また、作業員の動作もモーションキャプチャ等で分析し、人と協働ロボットの最適配置や動作改善につなげる。こうした社内実践で、例えば「●●工場で稼働率○%向上」「不良率○%低減」「エネルギー使用△%削減」といった定量効果を出す。これにより自社製品の競争力も高まる。

次に、その成果をパッケージ化して外販する。ターゲットは中堅の製造業(自動車部品メーカー、電子機器メーカーなど)で、自前で大規模なDX投資を行う余力がない企業に対し、「パナソニック方式スマート工場」としてサービス提供する。具体的には、(1)工場設備データの収集基盤(IoTセンサー設置、ネットワーク構築)、(2)デジタルツインモデル構築支援(CADデータ取り込みや3Dスキャンによる工場モデル化)、(3)分析・シミュレーションサービス(AIによるスケジューリング最適化提案や故障予知ダッシュボード)、(4)人材育成支援(デジタルツールを扱える人材のトレーニング)、これらをワンストップで提供する。パナソニックの現場改善コンサルタントが伴走し、顧客工場ごとのカスタマイズにも応じる。料金体系は初期導入費用+ランニングのサブスク(デジタルツインのクラウド利用料)とすることで、継続収益を確保する。

このシナリオ実現には、社内外の技術連携が重要だ。具体的には、シミュレーションソフト分野で強みを持つANSYSやDassault Systèmes(3DEXPERIENCE)などとパートナーシップを組み、パナソニックのサービスにそれらツールを統合して提供するとよい。

中略

期待効果: 製造業向けのスマートファクトリー事業を確立できれば、パナソニックは「製造業の黒衣(縁の下の力持ち)」として地位を確立できる。もともと製造装置ビジネスは装置納入後の保守や改造で長期収益が得られる安定分野であるが、そこにソフトとデータサービス収入が加われば、一層収益性が高まる。加えて、このシナリオは自社の製品製造コスト低減や品質向上にも寄与するため、一石二鳥である。たとえば、電池工場の効率が上がればEV電池事業の収益改善につながり、市場での競争力向上→受注増という好循環も期待できる。

後略

報告書全文は以下をお読み下さい。

ケーススタディ:パナソニックの新成長領域は「産業のデジタルツイン」【経営者のChatGPTディープリサーチ】

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