Figure社のHelix最新動画がプレゼンしている「洗濯物を畳む動作」はなぜロボティクス的にすごいのか?
なぜ各社が「洗濯物を畳む」動作をデモするのか?
① なぜ"洗濯物を畳む"なのか?
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柔らかく動的に変形する対象(布)を操作するのは、ロボティクスにおいて極めて難易度が高い。布が伸びる、たわむ、折れ曲がるといった複雑な物理変化があるため、制御・認識・把握すべてに高度な技術要求。
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日常家事の代表的タスクかつ、多種多様な衣類形状への汎用的対応能力を測るのに好都合(Generalizationの指標になる)。
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YouTubeなどで視覚的にわかりやすく「人らしさ」「実用感」を伝えやすいため、研究/ビジネスの双方でデモンストレーションとして多用される。
② 各社の代表的デモ例リスト
企業・団体名 | デモ内容 | |
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Tesla(Optimus) | 洗濯物を畳むデモ動画をElon MuskがTwitterで共有 Reddit+2YouTube+2 | |
Toyota | チームメンバーが「日本式Tシャツ畳み」を紹介する動画。おそらく米国のToyota Research Instituteで開発されているLarge Behavior Modelsのデモ。 YouTube | |
AI Humanoid Robots(まとめ動画) | 2024年4月時点で畳み動作できるヒューマノイド上位3社紹介 YouTube | |
Physical Intelligence | Jeff Bezos出資のスタートアップ。pi-zeroモデルで洗濯物を取り出し畳むデモ Business Insider | |
中国 Agibot | 複数モデルで洗濯・畳む動作を含む家事デモを公開 ザ・サン | |
AIRoA AIロボット協会 / AIREC(日本) | 「洗濯物を畳む」動作についてドキュメントで言及あり |
上記のように、日本を含む多くの開発者・団体が、布の操作を「技術力の象徴」として強調しています。
Helix動画の注目ポイント - ロボティクス技術面から見た高度さ
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目の働き(視覚センサー)
・布のエッジやしわを認識し、掴むべき部位(角や端)を正確に把握
・布の形状が変化する中で対象認識がブレずに追随する能力 -
指の働き(ハンド巧緻性)
・布の端をしっかり挟みつつ、滑らかな挙動で布を引き延ばす
・複数関節・指先の協調制御により布を傷つけず確実に把握 -
柔らかい布を選り分ける動き
・衣類と背景や他の衣類を視覚的・触覚的に分離し、正確に取り出す
・布の種類(厚み、重さ)を察知し、適切な力で操作 -
畳む動き
・正しい折り目を計算し、布を段階的に整える流れるような動作
・人間のような滑らかな"手順制御"が可能であることを可視化 -
カゴに戻す動き
・整えた衣類をそっとカゴに戻す際の微妙な角度・力の調整
・落とさない、安全性を保った動作設計
これらはすべて、オンボード(オフライン)での高速リアルタイム制御により、外部演算への依存なく実現されている点も重要です。
動画の最後で指の動きを0.4倍スローで見せる意味
動画終盤で、動きを0.4倍のスローモーションで再生している理由は:
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細やかな動作の正確さを視聴者に伝えるため。高速では見えづらい関節・指先の微調整を可視化し、精緻さを強調。
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技術的インパクトの強調:どれほど精密に制御しているのかを、視覚的に理解させるプレゼン手法。
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"人らしい動き"の強調:スロー再生によって、人間の指の動きと似た滑らかさや柔らかさが際立つ。
つまり、この演出は「単に動いている」ではなく「人間のように美しく正確に動いている」ことを示す狙いがあります。
Helixが「オンボード(オフライン)で稼働する」ことの意味
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低レイテンシー:周辺機器・クラウドとの通信遅延がなく、瞬時の判断・反応が可能になる。
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信頼性(高耐障害性):通信障害やクラウドダウンがあっても作業継続可能。ミッション/工場レベルで重要。
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プライバシーとコスト低減:映像・センサー情報を外部に送信せず処理できる安心感。通信/演算コストも削減。
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エッジAIの実装例として、AI制御の高度化を示す好例。
Helixは、こうしたオフラインAI制御を実現している点が、他社との比較で際立った強みです。
Helixが世界最高レベルであることをプレゼンする理由
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総合的な動作完成度:認識 → 把持 → 折りたたみ → 安全に格納の一連をスムーズに行う、一貫したパイプライン制御。
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オンボードVLA制御:外部制御に頼らない完全自律型。実運用への移行に強く、スケール可能。
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多分野への応用可能性:布操作は柔軟体制御の極地。他タスク(梱包、組立、清掃など)にも応用可能。
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洗練されたユーザー体験:スロー再生や滑らかな動きなど示唆される"人らしさ"は、投資家やクライアントに"未来を感じさせる"。
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量産視点とロードマップが見える:先のBotQ計画やBMWとの協業もあり、ただの研究成果ではなく、産業展開可能な製品として印象付けられる。
まとめ
Helix洗濯物畳みのデモは、単なる「家事ロボ」ではなく、柔軟体制制御・リアルタイム自律AI・人間的滑らかさ・実務応用への布石という複数の技術観点とビジネス観点を象徴する注目動画。
以下が理解したいポイント:
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技術としての高度さ(柔らか体の扱い・滑らか動作・指制御)
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実運用志向(オンボード制御、パートナー実証、量産戦略)
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未来へのビジョン(人間のように、環境に適応し、価値を生み出す汎用ヒューマノイド)
【Figure AIも訪問予定!】
シリコンバレー最先端ヒューマノイド視察ツアーのご紹介 アップデート版
視察申込受付中!申込受付締切は9月10日!
個別の企業様では訪問しにくい企業ばかりです。この機会をぜひご活用下さい!
視察定員は12名となりました。現地でのハンドリング等を検討した結果です。
【視察の狙いと目的】
日本にいると信じられないほどのスピードで開発が進むアメリカのヒューマノイド/ヒト型ロボットの企業群。TeslaのOptimusを初め、Figure AI、Apptronics、Boston Dynamicsなど、YouTube動画で存在感を放つ企業は枚挙にいとまがありません。
今回、弊社で企画した「シリコンバレー最先端ヒューマノイド視察ツアー」は、シリコンバレーに拠点を置く
- ヒューマノイド完成体企業
- 物流倉庫関連ロボティクス企業
を訪問し、相互交流のきっかけとなる内容になっています。
この視察をきっかけとして、御社と訪問先の個々の会社とで、今後の商談、提携、投資などの展開に入ることができるように視察メニューを設計しています。
この視察ツアーではAI + ロボットの日本の権威である早稲田大学 尾形哲也教授が視察内容を監修し、同行して下さいます。尾形哲也教授が各視察先との関係づくりのフックとなる講演をして下さいます。外国企業視察では、テイク&テイクの姿勢は好ましいものではなく、必ず、こちらから何らかのものをギブして、ギブ&テイクのやり取りにすることが鉄則です。そのため尾形哲也教授の日本のヒューマノイド研究を紹介する講演が深い意味を持ちます。
【訪問予定企業と期待される視察内容】
Figure AIで期待される視察内容
将来ビジョン
Brett Adcock氏は「将来的には人間と同数のヒューマノイドが存在する社会を築く」と語っており、物流や家庭、製造現場へと展開していくロードマップを描いています。
製品ラインナップと技術概要
- Figure 01
初期プロトタイプとして2022-2023年頃に開発。物流や倉庫向けに設計され、物体移動や操作などを目的としたヒューマノイド。 - Figure 02
2024年8月発表。内部配線、バッテリー統合、6つのRGBカメラ、NVIDIA RTXベースのGPU、音声入出力、5本指/16自由度のハンドを備え、最大25kgの物体を扱えます。BMWの工場において実証テストも実施。 - Helix(ビジョン‑ランゲージ‑アクションモデル)
2025年2月発表のFigureの独自AIモデル。以下のような特徴があります: - VLA(Vision‑Language‑Action)モデルで、上半身全体(腕・手・胴体・指など)を高頻度かつ高精度に制御可能 。
- Dual‑systemアーキテクチャ:System 2が場面理解と言語処理、System 1が視覚-動作制御を担い、リアルタイム性と高い汎用性を両立。
- 複数ロボット同時制御が可能(2体同時にHelixで制御)、音声で指示された動作を実行 。
- 家庭向けユースケースのデモ(例:買った食材を片付ける)にも活用され、家庭での実用化に向けたAI制御戦略の紹介が可能。
直近の実証・実装成果
- 物流現場での進展(Helix)
2025年6月時点で、Helixはさまざまな形状の包装(柔らかい袋、封筒など)にも対応し、ヒトに近い速度と精度での搬送処理を実現。1パッケージあたりの処理時間は概ね4.05秒(以前の約5秒から改善)、バーコード読み取り成功率も約95%と飛躍的向上 。 - 適応的行動:ロボットがパッケージのしわを"軽く押す"ような動作を自発的に学習し、コード読み取りを助ける動作も観察できる。
1X Technologies シリコンバレー拠点で期待される視察内容
製品ラインナップの技術説明
- EVE:物流・医療・セキュリティなど産業用途向けの車輪式ヒューマノイド。アクチュエータや制御技術の応用事例。
- NEO Beta → NEO Gamma:家庭用二足型ロボット。歩行、物体操作、柔らかい被覆、安全設計、内蔵AIモデルなど技術の進歩。
デモンストレーション
- GTC(Nvidia)での実演のように、ロボットが家の中で歩行しながら掃除、植物への水やり、家具を避けて移動、といった日常シーンを再現する実演。
- 現段階では完全自律ではなく、遠隔オペレーターによるテレオペレーションによる動作制御が多く、これもリアルに示される可能性。
AI・データインテグレーションの解説
- 家庭内でのロボット利用によって得られる映像・音声データを用いたAIの学習プロセスや、遠隔操作とのハイブリッド駆動など技術戦略の紹介。
- OpenAIやNvidiaとの協業事例や、インハウスでのモデル訓練体制。
Boston Dynamics Mountain View Officeで期待される視察内容
ソフトウェア&プラットフォーム解説
- Spot SDK (商用化されており日本でも発売されている四足歩行ロボット)や Orbit (ロボット複数をマネジメントするフリートマネジメント技術)プラットフォームなど、Spot に対する開発環境や運用支援ツールの技術解説が期待されます。
- また、ロジスティック系ロボティクス(Stretch など)とのインテグレーションについても期待できます。
実証デモンストレーション
- 実ビジネス(物流/点検等)現場に近い環境での動作確認:Spot による施設巡回や点検、Stretch による倉庫内作業など、商業展開中のロボットのリアルな挙動を見学できる可能性。
Weave Robotics(ヒューマノイドのニューフェース)で期待される視察内容
Weave Robotics の概要
- Weave Robotics は、Y Combinator の 2024 サマー・バッチ出身のスタートアップで、エヴァン・ワインランド氏(元 Apple Siri 担当)とカーン・ドゥイルスオズ氏らが共同創業。2024~2025年にかけて創業された、比較的新しい企業。
- 同社が手がける初の家庭用ロボット "Isaac" は、「家の中の雑然とした場面を自律的に片付け」、「洗濯物をたたむ」、さらには「家を離れている間の見守り」などを行うヒューマノイド型ではない家庭用アシスタント型ロボットです。
- 最大の特徴は 2025年秋に最初の 30 台を出荷予定という点。月額型サブスクリプション(約 US$1,385/月)か、一括購入(約 US$59,000)で提供予定。
技術解説
- ハードウェア構成:可動関節の構造やモーター・センサー選定、カメラ収納機構などの詳細。
- 自律ロジックと人間とのインタラクション:音声認識やアプリ連携によるタスク指示、遠隔操作 Remote Op の仕組み。
- システムのモジュール設計と拡張性:ソフトウェアスタック・アプリとの連動・将来的な機能拡張の方向性。
デモンストレーション
- 実演:家事タスクの実行:掃除状態認識 → 片付け → 洗濯物の畳み作業など、一連の流れのリアルタイム展示。
Ambi Robotics(UC Berkeley発の倉庫ロボティクス企業)で期待される視察内容
企業紹介と開発背景
- 創業経緯:UC BerkeleyでのDex‑Net研究からスタートし、実用向けSim2Real AI技術に進化させた過程。
- 企業ミッション:AIとロボットの力でサプライチェーンの複雑な課題を解き、人の働きを支えることを目的にしている背景。
技術・製品紹介
- AmbiSort A‑Series / B‑Series:小包の自動仕分けを可能にするAI駆動ロボットシステム。多様な包装形態に対応し、効率化と安全性の向上に寄与。
- AmbiStack:AIを活用し、多種多様なSKU(商品)を高密度にパレットまたはコンテナに積む最適化ロボット。倉庫のスペース利用と物流コスト改善を支援 。
- AmbiOS(Sim2Real AI):ロボットの学習速度を劇的に高めるシミュレーション→現実環境への移行に優れたAIオペレーティングシステム。
- PRIME‑1(Foundation Model):倉庫オペレーション向けに特化されたAIの基盤モデル。3D認識、ピッキング、品質検査など多様なタスクに適応可能な生成モデル 。
デモンストレーション
- AmbiSortによる自動仕分けの実演:アイテムの認識、適切な搬送先への選定、仕分け精度や速度の確認。
- AmbiStackの積み付け最適化デモ:「3Dテトリス」とも言われる高密度積載をリアルタイムに実演。
【視察日程】
- 10月27日(月曜):日本出発
- 17:00頃 東京羽田空港からサンフランシスコへ出発(直行便利用)
- 10月27日(月曜):
- サンフランシスコ到着、シリコンバレーへ移動。
- 10月28日(火曜)
- 上記の企業1社〜2社を視察予定。先方とスケジュール調整中
- 10月29日(水曜)
- 上記の企業1社〜2社を視察予定。先方とスケジュール調整中
- 10月30日(木曜)
- 上記の企業1社〜2社を視察予定。先方とスケジュール調整中
- 10月31日(金曜)
- 予備日
- 11月1日(土曜):サンフランシスコ出発 (直行便利用)
- 11月2日(日曜):東京羽田空港到着
- 各訪問先ともロボティクスに詳しいシリコンバレー在住ITジャーナリストが通訳として同行します。
- 空き時間にはシリコンバレーならではのGoogleキャンパス見学、コンピュータ歴史博物館見学などシリコンバレーにちなんだアクティビティを予定
- [現地における移動は全てUBERタクシー3-4台への分乗となります](理由は米国におけるマイクロバスチャーターにしますと、1人当たりの視察代金が35万円アップとなってしまいます。視察代金総額を落とすため、現地ではUBERでの移動となりました。UBER手配等の一切は後方支援を担当しますインフラコモンズにてカバーいたします)
✔︎ 最小催行人数と定員:最少催行人数は10名。現地でのハンドリング等を細かく検討した結果、定員は12名といたします。12名になった時点で締切とさせていただきます。
✔︎ 申込期間:8月1日申込受付開始(JTBのOASYS申込ページより)、締切:9月10日(見積・請求はJTB)
✔︎ 申込:【アメリカ視察ツアー OASYS】にて受付。ツアーパスコード:tMCVCFZx5F 操作方法は下端参照
✔︎ 旅行代金:127万円(燃油サーチャージ・空港使用料別)
【視察監修・同行】
早稲田大学 理工学術院 基幹理工学部 表現工学科 尾形哲也 教授
2025年よりAIロボット協会理事長。2025年よりJST CREST領域研究総括。深層学習、生成AIに代表される神経回路モデルとロボットシステムを用いた,認知ロボティクス研究,特に予測学習,模倣学習,マルチモーダル統合,言語学習,コミュニケーションなどの研究に従事。
【視察企画・後方支援】
株式会社インフラコモンズ 今泉大輔(当ブログ経営者が読むNVIDIAのフィジカルAI / ADAS業界日報 by 今泉大輔 運営執筆者)。今泉も同行します。
ヒューマノイドに関して積極的に情報発信を行なっているYouTuberの柏原迅氏も同行します。
【資料請求および旅行について】
株式会社JTB
https://www.jtbcorp.jp/jp/
ビジネスソリューション事業本部 第六事業部 営業第二課内 JTB事務局
TEL: 03-6737-9362
MAIL: jtbdesk_bs6@jtb.com
営業時間:月~金/09:30~17:30 (土日祝/年末年始 休業)
担当: 稲葉・野田
総合旅行業務取扱管理者: 島田 翔