ケーススタディ:信越化学工業のM&AアドバイザーとしてChatGPTディープリサーチを活用するテクニック(1)
本ケーススタディの趣旨
ChatGPTディープリサーチは紛れもなく「スタンフォード大学ビジネススクールMBA取得の米国系投資銀行勤務歴数年の実力」(←これは小職が外資大手でマッキンゼー出身コンサルタント等と数年仕事をしていた経験から言って本当です)を持っているAIであり、真に革新的な経営を可能にします。
仮に経営者の時給が3万円であるとすると、その時給を10倍以上にするインパクトを秘めています。経営者の意思決定に不可欠な決定的な報告書を1時間で得られるようになるからです。日本のトップクラスの調査会社に依頼すると1,000万円級の報告書が、調査範囲はウェブだけであるとは言え、ChatGPT Proの購読料(1ヶ月200ドル)だけで作成できるようになるのですから驚異的です。
本投稿は、その驚異的な調査執筆能力を数百億円〜数千億円規模の戦略的M&Aにおいて使うとすればどんな展開になるのか?ということを理解するためのケーススタディです。本投稿及びChatGPTが生成した調査報告書サンプルを掲出したnote投稿は、あくまでもビジネススクールで実在の企業のシナリオを使って学生達が議論するケーススタディと全く同じ目的で作成されていますことをお断りしておきます。何卒、趣旨をご理解くださいますようお願い申し上げます。
こうしたケーススタディを共有させていただくことで、真にAIでレバレッジされた経営者様が多数登場することを期待しております。
シスコシステムズが開発したM&A戦略は今やIT大手が全て採用
連続M&Aによって売上規模を拡大し、株価を上昇させている企業が日経新聞で話題になっています。以下は東証グロース上場のGENDAの例です。
日経新聞 2025/3/25:連続M&Aが生む株高 GENDAやトライアル ノウハウ蓄積、「次」にも期待
M&A(合併・買収)に積極的な企業の株価が上昇している。比較的短期間に同業や周辺事業を続けて買収したことで急ピッチでの成長が期待されている。継続的なM&Aをビジネスモデルに掲げる企業への注目度も高まっている。
GENDAの売り物が積極的なM&A。20年にセガサミーホールディングスからゲームセンター事業を買収するなど、これまでに40件を手掛けた。23年7月の上場以降では29社と、上場を機にペースを加速している。12日に発表した2025年1月期の連結決算は売上高が前の期の2倍に達した。
GENDAは積極的なM&Aと新規出店により、売上高が前年同期比100.7%増の1,117.86億円と大幅に成長しました。一過性のM&A関連費用を除いても増収増益を達成し、エンタメ・プラットフォーム事業を中心に事業拡大が進んでいます。今後も「世界一のエンターテイメント企業」を目指し、M&Aによる成長戦略を継続する方針です。
GENDAは信越化学から見れば極めて若い企業ということになるのでしょうが、そのM&A戦略が示唆するものは大きいです。
私がコンサルティング・リサーチャーとして仕事をしていたシスコシステムズは一時期世界最大の時価総額になったこともあるIT大手で、現在はダウ平均採用銘柄になっています。
同社はインターネットが全業種に浸透していく中で、通信インフラ機器業界トップの座を守り続けるために毎月のようにM&Aを行っていました。社内にいると新規のM&Aのニュースに対して不感症になるほど活発でした。シスコがM&Aに積極的だったのは、日進月歩のITの世界で次から次へと新規技術が開発されており、それを自社開発していたのでは間に合わないからです。(今泉注:日本の大手企業にはよくある自前主義が全くありません)また新規技術が出てそれを社内開発でフォローしても先行者利益は得られません。その新規技術を持っている企業を丸ごと所有することが理にかなっています。これをR&D (Research & Development)をもじってM&D (Merger & Development)と呼んでいました。
現在では米国のIT大手はほぼ全てが事業ポートフォリオを最適化するためにM&Dを採り入れています。
信越化学様におかれましても(本投稿はケーススタディです)、M&Aを戦略的に行っていく、それも継続的に行っていくことには大きな意味があると言えるでしょう。
また、それが海外のアクティビストに色々言われることを未然に防ぐ方策であるとも言えます。
ストラクチャード・プロンプトと報告書全文はnoteに
本ケーススタディでChatGPTディープリサーチの性能を最大限に引き出すストラクチャード・プロンプト(構造化されたプロンプト。自然文のプログラムと言っていいです)と、生成された経営者向けの報告書は、いくつかの理由があって以下のnoteに置きました。
信越化学工業:株価向上を目的とするM&AアドバイザーとしてChatGPTディープリサーチを使うケーススタディ(1)
ChatGPTディープリサーチが生成する報告書をnoteに置く理由は、生成された書式(以下の画像参照)をできるだけ崩さないでブログ投稿にするプラットフォームとして、noteがベストだからです。
ChatGPTディープリサーチの報告書を共有する手段はいくつか試してみましたがどれも一長一短あります。今回のシェアの方式は、ChatGPTディープリサーチの威力を肌で感じることができるフォーマットです。挿入されたリンクの再現や末尾の出典リストが優れています。
信越化学の株価を上げる戦略的M&Aに関する報告書のハイライト
信越化学が株価対策として戦略的M&Aに取り組む...その際にM&AアドバイザーとしてChatGPTディープリサーチが役割を果たす...そうした趣旨の報告書のハイライトとして、買収すべき企業のクライテリアに関する提言部分を引用します。読んで見ると、本当にその通りだと思っていただけると思います。
4. 信越化学が検討すべき買収ターゲット像の要件定義
最後に、信越化学が半導体材料分野で買収を検討すべき理想的なターゲット企業の要件を定義します。株主価値向上に資するM&Aとするために、財務面・戦略面・ESG面で満たすべき条件を整理すると以下のとおりです。
●財務貢献が高くEPSを押し上げること: 買収対象は黒字で収益性が高く、連結化によって信越化学のEPS向上に貢献できる企業が望ましいです。具体的には、営業利益率が高水準であるか、買収後のコストシナジーで速やかに利益率を改善できる事業が理想です。買収価格も妥当な水準に抑え、のれん償却等を考慮しても初年度から一株利益を希薄化させないこと(むしろ増加させること)が重要になります。例えば信越化学と補完的関係にあるニッチ高収益企業を適正価格で取得できれば、即座にEPSアクセレティブな案件となり得ます。
●ROICを維持できる事業特性: 信越化学の高いROICを損なわないため、資本集約的すぎない事業や固定費負担が重すぎない事業が望ましいです。半導体材料分野でも、シリコンウェーハのように巨額の設備投資を要する領域から、機能性化学品のように技術資産が価値の源泉となる領域まで様々です。理想的なターゲットは後者に近く、高い知的財産や技術ノウハウによって付加価値を生み出すタイプの企業でしょう。こうした企業は比較的少ない追加投資で成長でき、投下資本利益率の面でも有利です。また、買収後の統合で不要な重複資産を整理し、運転資本の効率化などを行うことでROICをさらに押し上げられる余地があるとなお良いでしょう。
●技術的シナジーと製品ポートフォリオ拡充: 技術や製品ラインナップにおける相乗効果が明確なターゲットが望ましいです。信越化学は既にシリコンウェーハとフォトレジストという半導体製造の要所を押さえていますが、例えば不足している領域として最先端パッケージ材料(高性能基板や封止材)、化合物半導体素材(SiCやGaN基板)、洗浄・研磨用ケミカルなどが挙げられます。これらの分野で優れた技術・製品を持つ企業を取り込めば、信越化学の製品ポートフォリオが一層充実し、顧客にワンストップで材料ソリューションを提供できるようになります。例えばSiCウェーハメーカーを買収すれば次世代パワー半導体材料へ参入でき、シリコン事業との相互補完が期待できます。また先端EUVフォトレジストのスタートアップを取り込むなども、自社のレジスト事業と組み合わせて技術リーダーシップを強めるシナジーがあります。信越化学自身、2024年にウェーハ子会社を完全統合した際「人的・経営資源の相互活用を阻む制約を排除し機動的な経営判断を可能にするため」と説明しており、このように経営資源を一体化してこそ生まれるシナジーが明確な相手を選ぶことが重要です。
●グローバル展開力の強化: 買収により地理的プレゼンスを強化できることも要件の一つです。信越化学は日本発の企業ですが、売上の約7割を海外で稼いでいます。さらにグローバル展開を加速するには、戦略的地域(米国、欧州、台湾、韓国、中国など)で拠点や顧客基盤を持つ企業を取り込むのが効果的です。例えば欧米大手IDM(インテル、マイクロン等)との太い取引関係を持つ材料メーカーを買収できれば、信越化学自身の販売チャネル拡大や顧客との関係強化につながります。地域ごとに異なる環境規制や商習慣に精通した現地企業の獲得は、グローバルでの事業運営効率やマーケティング力向上にも寄与します。特に米国・欧州は先端分野の顧客が多く、市場規模も大きいため、これら地域に強みを持つターゲットは優先度が高いでしょう。
以下略
本格的に動くには日本で最高のコンサルティング会社を使うべき
一読して明らかなように、ChatGPTディープリサーチは、真に「スタンフォード大学ビジネススクールMBA取得の米国系投資銀行勤務歴数年の実力」を持っています。これが経営者のそばにいて、四六時中経営アドバイザリーになってくれるのですから、その経済的インパクトたるや絶大です。経営者の時給が10倍どころか100倍になる威力を秘めています。それは経営者自身がChatGPTディープリサーチを縦横無尽に使いこなした時に初めて得られます。
ただ、ChatGPTディープリサーチが作成した報告書をもって本格的な展開に入るのは得策ではないと思います。経営者自らが手を動かしてこうした優れた報告書を得たとしても、またその提言内容が至極理にかなっているとしても、他の取締役等のステークホルダーは動かないでしょう。「なんだChatGPTか...」となるはずです。あらを探すのが好きな人は隅から隅まであらを探して、「ほら、これだけ欠陥がある報告書だ。だからChatGPTは使えない」と否定するはずです。この種のイノベーションはイノベーション忌避層の歯に絹着せない批判に遭うとひとたまりもありません。
そこで経営者自身がこうしたChatGPTディープリサーチの優れた報告書を得たとしても、回覧するのは側近中の側近に留め、後は、日本で最高のコンサルティング会社を使うべきです。アドバイザリー料が1億円であろうが、もっと高かろうが、社内の経営コミュニティが心の底から納得できるような専門会社を使うべきです。
使う際にこの報告書を見せて、こういう方向でやりたいと言えばいいのです。