実務家向け:Waymoに対する日本部品メーカーの供給可能性(2025年8月アップデート版)
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Google系の自動運転「Waymo」を徹底的に調べ上げてわかったこと(2025年5月)
日本で本格展開に入りつつあるGoogle系の自動運転車「Waymo」。日本展開の車両プラットフォームは順当にトヨタ系で決まりそうです。よく知られているように自動運転車では多数のセンサー類が装着されます。また心臓部であるECUもあります。日本企業によるそうした部品等の納入可能性はあるのでしょうか?あるとすればどの部分にどのような具体的な形で納入可能性があるのでしょうか?
公開資料を元にAIが詳細に調査した資料を以下に掲げます。全て出典がある記述内容となっています。
最初に2025年8月アップデート版を掲げ、その下に元となっている2025年5月版を掲げています。5月版の方が情報量は分厚いです。間に弊社が企画した「JTB上海・北京トップ大学新卒IT高度人材獲得ツアー」の告知が挿入されています。
Waymoの日本展開における日本部品メーカーの供給可能性(2025年8月アップデート版)
0. 直近アップデート(何が変わったか)
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日本での実走フェーズが始動:Waymoは日本交通・GOと提携し、東京でのデータ収集・マッピングを開始。左側通行・都市交通への適合が主目的(まずは有人運転での学習)。対象エリアは港区・新宿区・渋谷区・千代田区・中央区・品川区・江東区が中心。ReutersWaymo
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ハードは第6世代へ:Waymo Driverの新センサースイートはカメラ13/LiDAR4/レーダー6/外部音受信(EAR)。性能最適化と大幅なコスト低減が軸。Waymo
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トヨタ連携が「正式に前進」:トヨタとWaymoは戦略的協業の予備合意を公表。Woven by Toyotaも参画し、AVプラットフォームや将来的な「個人保有車」への展開も検討対象に。日本仕様の量産設計・適合で日本サプライヤーが入りやすくなる構図。トヨタ自動車株式会社 公式企業サイトReutersWoven by Toyota
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日本の制度面:2023年の法改正でレベル4の無人自動運行が許可制で可能に。都市部のロボタクシー実装に向けた環境整備が進行。警察庁貿易局 | Trade.gov
1. 供給機会マップ(カテゴリ別:センサー/LiDAR・レーザー/カメラ/EAR/ECU)
1-1 センサー(レーダー/超音波ほか)
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想定ニーズ:第6世代はレーダー6基。近中距離の全天候冗長検出、車両側統合のしやすさ、AEC準拠、量産品質。Waymo
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有望Tier1/Tier2
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デンソー/デンソーテン:トヨタ量産でのミリ波レーダー実績・車載信頼性。Waymo×トヨタ連携の最短経路。
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日本セラミック(NICERA):超音波センサーで高い国内シェア。周囲監視・低速域マンバー検知で強い。chugokukeiren.jp
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示唆:Waymoの既存構成を尊重しつつも、日本ローカル部品化(品質・保守網・コスト)の合理性が増大。トヨタ採用実績を梃子に置換・併用の打診が現実的。
1-2 LiDAR(および光源レーザー)
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想定ニーズ:第6世代はLiDAR4基。中長距離の高SNR・耐環境・長期信頼性、コスト最適化。Waymo
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有望Tier1/Tier2
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デンソー:レクサスLS/MIRAIの「Advanced Drive」向け量産LiDAR・カメラ群・ECUの実績。トヨタ系統合力。デンソー
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小糸×Cepton:短距離LiDARがレベル4用途で受注実績。小糸は車載量産の信頼性・製造基盤、CeptonはMMT方式。加えて小糸によるCepton買収合意で一体運営が前進。koito.co.jpcepton.com
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浜松ホトニクス/京セラSLDなど(Tier2):受光素子(APDアレイ)・車載向けレーザーダイオード等の供給力。ヘッドランプ統合型の赤外レーザー照明など、光学モジュール統合の選択肢を提供。
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示唆:Waymoは歴史的に自社LiDARも保有するが、日本量産・保守連携を重視するなら、デンソー or 小糸のモジュール+国内デバイスの組み合わせが有力。
1-3 カメラ(CMOSイメージセンサー/モジュール)
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想定ニーズ:第6世代で13カメラ。HDR・LED信号対策・夜間SNR・低温/高温耐性、RAW/YUVの柔軟出力など。Waymo
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有望Tier1/Tier2
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ソニーセミコンダクタ:車載CMOSで世界上位。高画素・HDR・車載耐久の新世代センサーを継続投入(例:RAW/YUV同時出力)。sony-semicon.com
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デンソー(日系モジュール):トヨタ先進運転向けの望遠・広角カメラ量産実績。Waymo×トヨタの統合窓口として最適。デンソー
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示唆:**「センサー=ソニー、モジュール=日系Tier1」**の王道構成は、日本拠点での品質管理・歩留まり・サプライ安定に優れる。
1-4 EAR(外部音受信:サイレン検知用マイク)
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想定ニーズ:第6世代は**外部音受信(EAR)**を標準装備。耐候・ビームフォーミング・AEC-Q準拠が必須。Waymo
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有望Tier1/Tier2
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TDK InvenSense/村田製作所:車載MEMSマイクの量産力。AEC準拠、PPAP対応など車載品質体制。TDK InvenSense
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Infineon(競合だが参考):AEC-Q103-003に準拠した車載MEMSマイクの代表例(規格面のベンチマーク)。infineon.com+1
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示唆:日本側はAEC-Q103(MEMSマイク規格)への完全適合と、「日本のサイレン音」データでのアルゴリズム最適化を一体提案できると強い。aecouncil.com
1-5 ECU(自動運転・統合制御)
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想定ニーズ:Waymo独自計算機+車両側統合ECUのハイブリッド構成が有力。ASIL・OTA・高信頼I/F、国内サービス網。
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有望Tier1/Tier2
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デンソー/J-QuAD DYNAMICS(アイシン・JTEKT・アドヴィックス連合):統合制御ソフト/ECUを共同開発する合弁。車両運動系との安全連携に強み。ジェイテクトデンソー
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ルネサス(R-Car V4H/V4M、RH850):ADAS/AD向けSoC(~34TOPS)やMCUの国内エコシステム。量産指向・低消費電力・車載信頼。ルネサス+2ルネサス+2
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示唆:Waymo計算機 × トヨタ系ECU網の分担が最適解。国内Tier1はI/F定義・機能安全アーキで主導権を取り得る。
2. 車両プラットフォーム動向(日本)
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当面の日本での車両:2025年にまず25台規模での有人データ収集に着手。初期は既存Waymo仕様車(I-PACE等)を投入、道路・信号体系の学習を優先。The Verge
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トヨタ連携の含意:予備合意により、トヨタベースでのAVプラットフォーム設計・量産適合の検討が公式化。将来の**個人保有車(POV)**への技術展開も視野。日系サプライヤーの参画余地が拡大。トヨタ自動車株式会社 公式企業サイトReuters
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制度適合:レベル4は都道府県公安委の許可制で実運用可能。国内量産・保守体制をパッケージで提示できるサプライヤーが選ばれやすい。警察庁
3. 推奨アクション(Tier1/Tier2別)
Tier1(完成モジュール)
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共同PoC提案:デンソー/小糸/日立Astemoなどで、Waymo第6世代仕様に即した**「日本ローカルBOM案」**を作成(LiDAR・カメラ・レーダー・EAR・ECUの置換/併用パターン)。
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機能安全&I/F主導:J-QuADと連携し、Waymo計算機⇔車両ECUの冗長・安全I/F仕様を先回り提案。
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アフターサービス網:東京圏での24/7保守SLA(校正・交換・予備品)をコミット。
Tier2(要素部品・素材)
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AEC適合の見える化:AEC-Q103(MEMS)/AEC-Q100など規格適合証跡+PPAPを英語・日本語で整備。aecouncil.com
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性能差の可視化:低温・雨天・夜間・LED信号など東京ODDに合わせた実測データ提示(例:IMX系HDRの歩行者検出距離、マイクのビームフォーミングSNR)。sony-semicon.com
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共同評価環境:Woven City/テストコースや都内実環境でのセンサーHIL/SIL評価枠に同梱提案。
4. リスクと留意点
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Waymo自社設計の強さ:LiDARなど一部は内製志向。国内量産・保守・コストで置換の合理性を示せるかが鍵。Waymo
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都市部レベル4の認証実務:装置単体ではなくシステム一体での適合・記録・遠隔監視が前提(公安委許可制)。ローカル保守設計は入札評価点になり得る。警察庁
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競合:カメラはオンセミ等、マイクはInfineon等、LiDARはValeo/Luminar、中国勢(Hesai/RoboSense)も。車載信頼・長期供給・サービス網で差別化。
5. まとめ(日本サプライヤーへの示唆)
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方針:**「Waymo第6世代仕様 × トヨタ流量産適合」**の交点に、日本サプライヤーの商機。
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勝ち筋:①国内量産・保守体制、②機能安全&I/F主導、③**東京ODD実力(夜間・雨・密度)**をデータで証明。
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次の一手:Waymo/トヨタ/Woven向けに、日本ローカルBOM(置換・併用)+SLA+認証運用設計をセット提案。
主な根拠ソース
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トヨタとWaymoの予備合意(Woven参画、POV含む):トヨタ自動車株式会社 公式企業サイトReutersWoven by Toyota
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レクサスLS/MIRAI向けデンソー製先進運転製品(LiDAR/カメラ/ECU):デンソーADAS & Autonomous Vehicle International
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小糸×Cepton(L4短距離LiDAR受注/買収合意):koito.co.jpcepton.com
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ソニー車載CMOSの最新動向(RAW/YUV同時出力ほか):sony-semicon.com
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車載MEMSマイクのAEC-Q103基準(規格・実装例):aecouncil.cominfineon.com
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レベル4制度(日本・許可制):警察庁貿易局 | Trade.gov
【中国トップ大学の優秀なSDV開発人材にアクセスできるチャンス!正式告知/最終視察内容決定】
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JTB上海・北京トップ大学新卒IT高度人材獲得ツアー
私たちインフラコモンズ株式会社では、先日ご紹介の「シリコンバレー最先端ヒューマノイド企業視察ツアー」に続いて、中国・上海および北京のIT人材教育に注力するトップ大学群を訪問し、日本企業が各大学の優秀なIT系人材――新卒のみならず、修士・博士課程の高度人材まで含めて――とつながるための視察ツアーを実施します。
【視察日程】
◉9月22日月曜日〜9月26日金曜日 申込締切8月26日火曜日
【視察設計のポイント】
- IT人材教育を積極的に行なっている上海と北京のトップ大学における新卒/修士/博士課程人材窓口を訪問し、御社と各大学とのパスが構築できる機会を目指します。
- ベテランの日本人中国語通訳が付きます。
- 旅行会社はJTBになります。参加申込はJTBの予約申込ページOASYSから行っていただきます。8月上旬に開通したURLを告知、正式なお申し込みができるようになります。
- 月曜出発、金曜日帰国。最少催行人数10名。最大20名。(20名になった時点で締め切ります)
- 中国における視察コーディネート会社:CARETTA WORKS。視察実施後の個別企業様と各大学との交渉等を個別のコンサルティングサービスとして請け負うことも可能です。
- 視察代金は80万円(航空サーチャージおよび空港使用料別)
【対象となる企業】
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日本の大手IT企業。特にAIやクラウド人材を求めている大手IT企業
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日本の自動車メーカー及びティア1企業でSDV(Software Defined Vehicle)開発人材を求めている企業、及び、ADAS開発人材を求めている企業
- 日本の大手企業において、業務部門内でアプリケーションを内製するチームの充実を図りたいとお考えの企業
- 日本のIT人材企業で中国IT人材企業とのパイプを作りたいとお考えの企業
【視察スケジュール】
【Day 1】東京 → 上海
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午前:東京(羽田/成田)発
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午後:上海浦東空港着
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夕方以降:自由行動/休憩→歓迎会・オリエンテーション
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宿泊:上海市内ホテル
【Day 2】上海市内訪問(午前+午後で2大学) → 夜に北京へ移動
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上海交通大学、復旦大学の2校のIT新卒人材にアクセス可能な窓口を訪問
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夜便:上海 → 北京移動(例:19〜21時台便)
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宿泊:北京市内ホテル
【Day 3】北京訪問(午前+午後で2大学)
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清華大学、北京大学、北京航空航天大学、北京郵電大学、北京理工大学のいずれかのうち、2校のIT新卒人材にアクセス可能な窓口を訪問
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宿泊:北京市内ホテル
【Day 4】北京訪問(午前+午後で2大学)
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清華大学、北京大学、北京航空航天大学、北京郵電大学、北京理工大学のいずれかのうち、2校のIT新卒人材にアクセス可能な窓口を訪問
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宿泊:北京市内ホテル
【Day 5】北京 → 東京
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午前:自由時間/チェックアウト
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午後:北京首都空港または大興空港へ送迎
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夜便:北京発 → 東京着
【資料請求および旅行について】
株式会社JTB
https://www.jtbcorp.jp/jp/
ビジネスソリューション事業本部 第六事業部 営業第二課内 JTB事務局
TEL: 03-6737-9362
MAIL: jtbdesk_bs6@jtb.com
営業時間:月~金/09:30~17:30 (土日祝/年末年始 休業)
担当: 稲葉・野田
総合旅行業務取扱管理者: 島田 翔
細かな問い合わせは、株式会社インフラコモンズ (ホームページ下端の問い合わせ欄よりお送りください)まで
Waymoの日本展開における日本部品メーカーの供給可能性(2025年5月版)
はじめに:Waymoの日本展開とトヨタ車両
2025年4月、トヨタとWaymoは自動運転技術の開発・普及で戦略的パートナーシップを結ぶことで合意しましたglobal.toyotaglobal.toyota。今後Waymoが日本で自動運転サービスを展開する際、ベース車両にトヨタ車を採用すると想定すると、必要となるセンサー類(カメラ、LiDAR、レーダー、音響センサー等)やECUについて、日本の部品メーカーが供給を担う可能性が高いです。Waymoの自動運転車(第5・6世代)は**13台のカメラ、4基のLiDAR、6基のレーダー、そして外部音響レシーバ(EAR)**からなるセンサースイートを搭載しておりautonomousvehicleinternational.com、これらを統合制御するECU(電子制御ユニット)も含めた高度なシステムです。本調査では、各カテゴリ(センサー、LiDAR、レーザー、カメラ、音響センサー、ECU)について、日本メーカーの供給可能性や競争力、実績、Waymo/Googleとの関係、海外勢との競合状況を分析します。各カテゴリごとに、主要な日本企業名(例:デンソー、村田製作所、ソニーセミコンダクタ等)と製品シリーズ名・技術的特徴も可能な限り示します。
センサー(レーダー・超音波 等)
日本の自動車部品メーカーはレーダーや超音波センサー分野で豊富な実績を持っています。デンソーはトヨタ向けを中心にミリ波レーダー(76GHz帯)を量産しており、トヨタの「Toyota Safety Sense」や「Lexus Safety System+」といった先進安全システムに不可欠な前方レーダーを供給してきました。デンソーは米スタートアップMetawave社に出資してレーダーの高性能化・小型化技術開発も進めておりjidounten-lab.com、次世代の高解像度レーダー開発に取り組んでいます。また、デンソーテン(旧・富士通テン)も車載レーダー開発で高い実績を持ち、79GHz帯の高分解能・広角検知レーダーを開発していますjidounten-lab.com。新型79GHzレーダーでは超広帯域FMCW変調とセクターアンテナ技術を採用し、小型障害物や歩行者をより早期に検知可能としていますjidounten-lab.com。さらにパナソニックもデジタル符号化技術を応用した79GHzレーダーを開発中で、交差点内の危険検知など安全性向上を目指していますjidounten-lab.com。これら日本メーカーは次世代79GHzレーダーで海外勢に対抗できる高性能センサーを実現しつつあります。
超音波センサーでは、鳥取県の日本セラミック(ニッセラ)が世界シェア約50%を握るリーディング企業ですbloomberg.co.jp。同社の高精度超音波センサーは他社より小さな障害物も検知でき、自動運転車の周囲監視・駐車支援用途で不可欠となる見込みですbloomberg.co.jp。ニッセラは需要拡大に備え大規模な生産能力増強も計画しており、自動運転特需に対応できる供給力がありますbloomberg.co.jp。
日本メーカーの競争優位性: デンソーやデンソーテンのミリ波レーダーは既にトヨタやレクサス車で実績があり、車載環境での信頼性・耐久性に強みがあります。また、日本セラミックの超音波センサーのように高精度かつ小型なセンサー技術で世界トップシェアを獲得している例もありますbloomberg.co.jp。トヨタ車をベースにするなら、これら国内サプライヤーのセンサーは車両設計への適合性も高く、Waymoシステムとの統合もしやすいと考えられます。
Waymo/Googleとの関係性: 現時点でデンソー等とWaymoの直接の取引は公表されていません。しかし、Waymo車両に搭載される6基のレーダーautonomousvehicleinternational.comについて、日本の高性能レーダーがコスト・性能面でマッチすれば、トヨタ経由で採用される可能性があります。例えば、トヨタとデンソーが共同開発した「Global Safety Package 3」にはミリ波レーダーとカメラの組合せで高度な認識を行うシステムが含まれjidounten-lab.com、トヨタはこの実績を踏まえWaymo車両にも国内製センサー採用を働きかけるかもしれません。
海外企業との競合: レーダーでは独BoschやContinental、米Delphi(現Aptiv)などが世界市場をリードしており、日本勢と熾烈に競っています。超音波センサーでも米Sensataや独HELLAなどが競合ですが、日本セラミックが高精度技術で優位に立っていますbloomberg.co.jp。Waymoは米国で従来からContinental製レーダー等を使ってきたとされますが、日本展開にあたりトヨタ系列のデンソー製品に置き換える可能性も十分あります。日本メーカーは信頼性の高さや自動車メーカーとの長年の協業関係が強みであり、コスト次第では海外勢に対して有利に働くでしょう。
LiDAR(ライダー)
デンソーは近年、自動運転用LiDARを自社開発し実績を上げています。2021年にはトヨタの新型MIRAIおよびレクサスLS向けに、デンソー製LiDARが採用されましたjidounten-lab.com。この「Advanced Drive」システムでは、前方の車両や道路形状を捉えるLiDARとロケーター望遠カメラなどを組み合わせ、車両周囲を高精度に検知していますjidounten-lab.com。デンソー製LiDARは200m以上先まで検知可能でありjidounten-lab.com、高速道路上での車線変更や合流支援を実現しました。デンソーはLiDARを含むセンサー群(カメラ2種、SIS ECU、ADS/ADX ECU)を統合提供しており、これは日本メーカーが完成車メーカー(トヨタ)に直接LiDARを供給した初のケースとなりましたjidounten-lab.comjidounten-lab.com。この実績は、日本のTier1がLiDAR製品を量産・実装できることを示し、Waymo導入時にもデンソーのLiDAR技術が選択肢に入ります。
また、小糸製作所(Koito)は大手車灯メーカーですが、米LiDARベンチャーのCepton社と提携し、自動車向けLiDARを開発しています。2024年4月には**「車載向け短距離LiDAR」を開発しグローバルOEMから新規受注を獲得したと発表しましたkoito.co.jp。このLiDARはCepton社の独自方式「MMT®(マイクロモーション技術)」を用いた機械的可動部のない堅牢なLiDARで、小糸が培った車載量産ノウハウと組み合わせ高い信頼性を実現していますkoito.co.jp。小糸は2028年度以降のLiDAR量産本格化**によって黒字化を見込み、2030年度に売上高500億円を目指す計画でありasset-alive.com、日本企業としてLiDAR事業に本格参入する姿勢を示しています。
他にも、パイオニアとキヤノンは共同で車載3D-LiDARセンサーを開発しており、2020年以降の量産化を目指しましたasset-alive.com。パイオニアは小型・低コストのLiDARハードウェアと独自の物体認識アルゴリズムを開発、キヤノンが光学技術を提供する形で協業していましたasset-alive.com。現在このプロジェクトはパイオニアの経営再編もあり動向に注視が必要ですが、光学機器に強いキヤノンが関わることで高性能化が期待されます。さらに三菱電機はMEMSミラー式の固体型LiDARを開発中で、業界最大級のMEMSミラー(7×5mm)を搭載し視野拡大と小型化を両立すると報じられていますen.eeworld.com.cn。日立Astemoも独自のLiDAR開発に取り組んでいる可能性があります(※正式な公表情報は限定的)。加えて、浜松ホトニクスはLiDARのキーデバイスである光半導体に強みを持ち、近年温度変化に影響されないアバランシェフォトダイオード(APD)アレイを開発asset-alive.com。セルフバイアス回路を一体化し外気温に応じた増幅制御を不要にした独自技術で、LiDAR検出器の安定性向上に寄与していますasset-alive.com。このように、Tier2レベルでも日本企業はLiDAR性能を支える先端部品を提供しています。
日本メーカーの競争優位性: 自動車用LiDARは耐振動・耐環境性能や信頼性が極めて重要で、日本のメーカーは車載品質の製造技術に長けています。例えば小糸はヘッドライト生産で培った量産技術をLiDAR製造に応用することで、高い信頼性とコスト低減を両立するとしていますkoito.co.jp。デンソーは車載ECUやセンサー群とLiDARを統合的に提供でき、完成車への組込みや制御統合に強みがあります。さらに国内メーカー同士・大学との連携(例:パイオニア×キヤノン、デンソー×東大やスタートアップ投資など)で光学・電子双方の知見を結集できる点も優位です。
Waymo/Googleとの関係性: Waymo(Google)はかつてVelodyne社製LiDARを使用していましたが、コスト削減のため自社開発に踏み切り「1台あたりコスト90%削減」を実現したと2017年頃に述べていますiotworldtoday.com。以降、Waymoは社内で設計したLiDAR(例:Honeycomb LiDAR)を量産しています。日本展開にあたり、Waymoが必ずしも日本メーカー製LiDARに切り替えるとは限りません。しかしトヨタとの協業で車両プラットフォーム開発を進める中、国内サプライヤーのLiDAR採用も十分考えられます。特にデンソーはトヨタと密接であり、高速道路用とはいえ実車搭載実績がある点は大きな信用につながりますjidounten-lab.com。Googleが自社LiDAR量産で築いたノウハウと、日本メーカーの車載量産力を組み合わせることで、さらに低コストで高耐久なLiDARを供給できる可能性もあります。
海外企業との競合: LiDAR分野は世界的に新興企業も含め競争が激しいです。米国のLuminar(ボルボや日産と提携)、Innoviz(BMWに供給)や、VelodyneとOuster(合併)、Aeva、Auroraなど多数のスタートアップが存在します。中国勢もHesaiやRoboSenseが台頭し、高性能LiDARを低価格で提供し始めています。既存部品大手では独ValeoがAudi向けに市販車用LiDARを供給した実績があり、BoschやContinentalも開発中ですasset-alive.com。こうした中、日本勢はやや出遅れ感も指摘されてきましたasset-alive.comが、デンソーや小糸が具体的な成果を出しつつあり巻き返しを図っています。競争上、日本企業は車載品質と統合設計力で勝負する必要があります。例えば小糸は「2028年以降LiDAR黒字化、2030年500億円規模」を目標に掲げておりasset-alive.com、グローバルプレイヤーと伍していく覚悟です。Waymoにとっても、日本メーカーのLiDARは高品質かつトヨタ車への組込み適性が高いため、米中スタートアップ製品との比較で優位性があれば採用が見込まれるでしょう。
レーザー(LiDAR用レーザー光源 等)
LiDARの「眼」にあたるレーザー発振器も、日本の部品メーカーが供給可能な領域です。浜松ホトニクスは前述のとおり検出器(APDアレイ)で強みを持ちますが、レーザーダイオードなど光源技術でも世界有数の企業です。自動車LiDARで主流の905nm帯パルスレーザーについても開発・製造ノウハウがあり、産業用向け高出力レーザーを手掛けています。京セラは米国のレーザー光源メーカー「SLD Laser」を買収しており、GaN系高出力レーザーによる白色・赤外線デュアル照明モジュールを世界初公開しましたamericas.kyocera.com。この技術はヘッドライトから高出力白色光を照射しつつ、赤外レーザーも同時発振するもので、夜間照明とセンサー用光源を両立する画期的な製品ですamericas.kyocera.com。京セラSLDのレーザーは75Wピーク出力を持ち、3DセンシングやLiDARに応用可能とされていますmouser.com。
また、三菱電機や住友電工などは光通信向けレーザーデバイスで長年の実績があり、1550nm帯レーザーや高速変調器技術を保有します。車載LiDAR向けにも、三菱電機は高出力・高信頼性のレーザーダイオード製品を展開できるでしょう。日亜化学は青色レーザーで世界をリードした企業で、近年は自動車のARヘッドアップディスプレイ用の緑色レーザーや赤外LEDなども開発しており、将来的にLiDAR光源へ展開する可能性があります。ロームも半導体レーザー分野に参入しており、一部製品を産業用センサー向けに提供しています。これらTier2の日本企業群は、LiDAR用レーザー素子(エミッタ)の国内調達を可能にします。
日本メーカーの競争優位性: 日本は半導体レーザーの研究開発で歴史が深く、高出力化・小型化に強みがあります。特に車載環境では温度範囲が広く耐振動性が必要ですが、日本企業は光通信や光ストレージ(Blu-ray/DVD)の経験から、信頼性の高いレーザー素子製造プロセスを確立しています。浜松ホトニクスのようにレーザーと受光素子の双方を扱う企業は、システム最適化の提案も可能です。京セラのデュアル光源技術americas.kyocera.comは日本発ならではのユニークなソリューションで、車両照明とセンサーを統合できる点は競争力になります。
Waymo/Googleとの関係性: Waymoは自社LiDAR開発時に、市販のレーザーダイオードを用いつつ独自設計でコストダウンしたとされますiotworldtoday.com。具体的な部品サプライヤーは非公開ですが、もし日本メーカーのレーザーを使っていれば既に関係があるかもしれません。GoogleはConsumer向けにもLiDAR(Pixel 4スマホのセンサーなど)経験があり、浜松ホトニクス等からセンサーを購入した実績があります。自動運転用では、求める仕様に応じ世界中からベストな部品を選ぶはずです。日本のレーザーが高品質・低コストで提供できれば、Waymoシステムの一部として採用される可能性があります。特に、京セラSLDのようにヘッドライト統合型レーザーはWaymo車両デザインをすっきりさせるメリットがあり、トヨタ経由で提案されるかもしれません。
海外企業との競合: レーザー光源分野では、ドイツのAMS Osram(旧Osram Opto Semiconductor)が大手で、LiDAR向け長距離レーザーを発表していますautonomousvehicleinternational.com。アメリカのII-VI(現Coherent)やLumentumも自動運転用の高出力レーザー素子市場を狙っています。中国にもレーザー専業メーカーが台頭しつつあります。日本企業はこれらに対し、歩留まりの高い量産技術と品質の安定性で勝負する必要があります。幸い、日本は自動車用ヘッドライト(LED/レーザー)でも実績があり(例:BMWのレーザーヘッドライト用青色レーザーは日亜製)、自動運転向けレーザーでも国産化の下地は整っています。Waymo車両においても、信頼性第一で部品が選定されるなら、日本製レーザーが強みを発揮するでしょう。
カメラ
自動運転車の「目」であるカメラについても、日本企業の存在感は大きいです。特にソニーセミコンダクタ(ソニーグループ)はCMOSイメージセンサーで世界シェアNo.1を誇り、車載カメラ向けセンサー市場でも主導的立場にあります。ソニーは自動運転車用に感度を従来比10倍に高めた高感度CMOSセンサーを開発し、夜間や悪天候下での視認性向上を図ると報じられていますasset-alive.com。またLED信号機のちらつきを抑制するハイダイナミックレンジ技術や、複数露光合成によるHDR(広ダイナミックレンジ)撮像など、ADAS/ADに必要な機能を実装した製品(例:ソニー「IMXシリーズ」車載センサー)を提供しています。トヨタの先進安全システムに使われる単眼カメラもソニー製CMOSが採用されているとされ、デンソーなどTier1が組み立てるカメラユニットに組み込まれています(※トヨタ公式発表はないものの、業界では周知の事実)。実際、デンソーはAdvanced Drive向けにロケーター望遠カメラと広角カメラの2種類を新開発し提供しておりjidounten-lab.com、この望遠カメラも200m先まで検知可能な高精細CMOSセンサーが使われていますjidounten-lab.com。ソニー以外では、オンセミ(旧Aptina、米国・日本拠点あり)が車載映像センサー市場でソニーに次ぐ地位にありますが、日本企業としては他にキヤノンもCMOSセンサー技術を持ち、一部先進車載カメラ向けに供給例があります。キヤノンはLiDAR開発でも述べた通り光学技術が強みで、レンズやカメラモジュール開発も可能です。また、パナソニックは車載用魚眼カメラやミラー替わりのカメラモニターシステムなどを製品化しており、暗所性能を高めた車載カメラを展開しています。ジャパンディスプレイ(JDI)やシャープなどもイメージセンサーに参入した経緯があります(シャープはスマホ向けに実績)が、車載用では現状大きなシェアはありません。
日本メーカーの競争優位性: ソニーの車載CMOSセンサーは画素あたりの感度や信号対雑音比(S/N)、飽和耐性で業界トップクラスと評価されています。自動運転では昼夜問わない視認が求められるため、高感度かつHDR対応のソニーセンサー採用は各社の定石になっています。実際、米テスラ社の自動運転システム(HW2.5まで)はソニー製センサーを使用していたとの報道もあります。日本勢はまた、光学レンズやアクチュエータの分野でも優れた企業があります。たとえば、板津製作所やミネベアミツミはカメラのレンズアクチュエータ(フォーカス制御など)を供給しており、小型高精度なレンズユニット組立に強いです。総合的に、日本メーカーはカメラセンサーから光学系、画像処理SoC(ソニーは自社AIプロセッサも開発中)まで網羅できる体制を整えつつあります。
Waymo/Googleとの関係性: Waymo車両には13台ものカメラが搭載されautonomousvehicleinternational.com、周囲360度の映像取得を行います。Waymoが具体的にどのメーカーのセンサーを使っているか公表はありませんが、性能面からソニー製CMOSの可能性は高いと見られます。実際、Waymo第5世代システムのカメラは高感度なイメージャにより夜間性能を高めたとされています。Googleはスマートフォン向けカメラ技術にも非常に精通しており(Pixelのカメラ評価は高い)、自動運転向けにも最高性能の部品を選ぶでしょう。日本のソニーセンサーや高品質レンズが採用されていれば、今後日本展開時も継続採用される公算が大きいです。また、トヨタ系のデンソーが供給するカメラモジュールがWaymo車両に組み込まれる場合、その中身のイメージャはソニー製となる可能性が高いでしょう。Googleとソニーは直接資本関係はないものの、技術面では密接に協力してきた歴史(Android端末向けイメージセンサー提供など)もあり、協業の土壌はあります。
海外企業との競合: 車載カメラセンサー市場では、前述のオンセミ(米国、本社は米だが開発拠点が日本にあり、旧日本ビクター系技術を引き継ぐ)や、オムニビジョン(米→中国資本)、韓国のサムスン電子などが競合します。ソニーは2020年代に入ってもシェア首位を維持しつつありますが、各社も高性能品を投入中です。ただ総合性能でソニー優位は揺るがず、「夜間の歩行者検出にはソニー製センサーでなければ難しい」とも言われます。またMobileye(モービルアイ)はカメラ単眼での自動運転技術を推進していますが、同社はイメージセンサー自体は外部調達であり、多くはソニーやオンセミから購入していますjidounten-lab.com。このように、日本のイメージセンサーは事実上の標準となりつつあり、Waymo/トヨタ連合でも引き続き重要な役割を果たすでしょう。一方、カメラモジュール(完成品)では、独Boschや大手ライトメーカーのValeoなども車載カメラを供給しています。日本勢ではデンソーや日立Astemoが対抗していますが、今後は画像認識ソフトウェアとのセット提案が鍵となります。ソフト面ではトヨタ系が培った画像認識AIや、ソニーAI部門の技術などを組み合わせ、海外勢に対抗していく展望です。
音響センサー(外部音検知:EAR)
自動運転車には、サイレンやクラクションなど音による緊急車両の接近を検知する機能も求められていますwaymo.com。Waymoは車体外部にマイクアレイを配置し、救急車やパトカーのサイレン音を方向まで含めて認識する「外部音響レシーバ(EAR)」を導入していますautonomousvehicleinternational.com。日本メーカーもこの音響センサー分野で貢献可能です。ハードウェア面では、TDK(Invensense)や村田製作所がMEMSマイクロフォンを製造しています。TDK-InvenSenseの製品には車載アプリケーション向けの高S/N比マイク(74dB以上)があり、既にAEC-Q103規格に適合したものも提供されていますinvensense.tdk.com。これらは小型ながら高感度で、車外の微かなサイレン音も捉えられる性能を持ちます。村田製作所も圧電素子の応用などでマイクを手掛けており、2017年にはノイズに強いMEMSマイク開発企業を買収したと報じられています(※村田の正式リリースより)。また日本電産(Nidec)やアルプスアルパインなども、車載マイクや音響デバイスを扱っています。完成品レベルでは、デンソーが車両周囲音認識システムを研究中との情報もあり、将来的に「緊急車両接近お知らせ」機能を製品化する可能性があります。かつてオーディオ機器で知られたパイオニアやクラリオン(現フォルシアClarion)も音響信号処理技術を持っており、車内外マイクロフォンのノウハウがあります。例えば、一部高級車ではエンジン音の打ち消し(ANC)や車内通話マイクにパイオニア製が使われていますが、これらメーカーが屋外音検知にも応用できるでしょう。
日本メーカーの競争優位性: 音響センサー自体はグローバルにはMEMSマイクで定評のある米Knowlesや独Infineonなどがあります。しかし、日本企業は車載向け品質管理と他センサーとのシームレスな統合で強みを発揮できます。例えばデンソーはマイクから得た音情報を他のセンサー(カメラ映像や車両CAN情報)と付き合わせ、緊急車両の位置特定や回避行動提案まで統合制御する、といったシステムを構築できる立場にあります。部品単体ではTDKや村田のマイクが高性能で、特にTDK-InvenSenseの製品はスタジオ品質と謳われる高音質でありながら低消費電力で、車載に適しますinvensense.tdk.com。さらに、日本企業は騒音環境下での音認識アルゴリズムにも研究実績があります(ホンダ・ヤマハ発動機などはバイクエンジン音分析などの経験豊富)。総じて、ハードとソフト両面から質の高い音響センサーソリューションを提供できるでしょう。
Waymo/Googleとの関係性: Waymoは独自に音響検知システムを開発しましたが、そのマイクハードは市販品を流用している可能性があります。公開情報によれば、Waymo車両は複数のマイクでサイレン音を集音しAIで方向を判別していますwaymo.com。Googleはスマートスピーカーなど音声デバイスも展開しており、高性能マイクの選定には強い知見があります。日本製MEMSマイクも、Google Home製品などに採用例があるため、Waymo車両にも使われている可能性があります。仮にまだであっても、トヨタ車ベースで日本国内生産となれば、調達の利便性からTDKや村田のマイクを採用することも考えられます。音響処理ソフトでは、米Cerence社(旧Nuanceの車載部門)がBMW向けに緊急車両検知システムを提供開始していますjidounten-lab.com。トヨタも将来車にCerence技術を導入するかもしれませんが、日本語サイレン固有のパターン認識などローカライズが必要です。この点、日本の音響メーカーや大学研究機関との共同開発も十分考えられます。
海外企業との競合: 音響センサーのハード自体は汎用品が多く、KnowlesやInfineon、米Analog Devicesなどが高シェアです。ただし自動運転向けの「外部音検知」という新領域では、明確な先行企業はまだありません。前述のCerenceはソフトウェアアルゴリズム提供で先行していますが、ハードはどこのマイクでも動作します。従って、日本勢にとっては後発参入でも勝機のある分野です。車内音声認識ではGoogleやAmazonが得意とするところですが、サイレン検知のような安全用途では自動車メーカー主導のカスタム開発になる可能性があります。日本メーカーが競合に勝つには、低ノイズマイク+高度な信号処理をワンセットで提供し、「日本のサイレン音なら誤検知ゼロ」のような実績を作ることです。幸い、日本の救急サイレンは規格化され特徴的な音響パターンがあるためjidounten-lab.com、認識精度を上げやすい面があります。トヨタ系サプライヤーがそのノウハウを蓄積すれば、Waymo車両への実装も十分可能でしょう。
ECU(電子制御ユニット)
自動運転システムの「頭脳」にあたるECUについても、日本のTier1および半導体メーカーが重要な役割を担います。デンソーは高度運転支援ECUを開発・量産しており、前述のトヨタ「Advanced Drive」用にSIS ECU(自車位置特定)、ADS ECU、ADX ECUを供給しましたdenso.com。これらECUは複数の高性能マイコン/SoCを搭載し、LiDARやカメラからの情報を高速処理するコンピュータですdenso.com。ソフトウェアのOTA(無線)アップデートにも対応し、出荷後も性能向上できる拡張性を備えていますdenso.com。デンソーはアイシン、JTEKT、アドヴィックスと共にJ-QuAD DYNAMICSという合弁会社を設立し、統合ECUソフトウェア(車両運動制御+自動運転)開発も進めておりdenso.com、日本勢として統合制御型ECUの体制を整えています。日立AstemoもADAS用ECU(カメラ+レーダ統合ユニットなど)を日産やホンダ向けに供給した実績があり、ホンダのレベル3自動運転車「Legend」では日立製作所系のECUが使われたと報じられています(推定)。三菱電機もパワートレインからボディ制御までECU製品群が広く、近年は自動運転用コンピュータ"xAUTO"の試作を発表しました。アイシンも走行系ECUに強く、ステア・ブレーキ制御と自動運転アルゴリズムを連携させる統合ECUを開発中です。これらTier1は、それぞれの強み分野(デンソー=センシング、アイシン=駆動制御、JTEKT=ステア制御、アドヴィックス=ブレーキ制御)を持ち寄り、車両運動と自動運転AIを融合したECUを目指しています。
一方、基幹半導体(マイクロプロセッサ/SoC)ではルネサスエレクトロニクスが日本を代表する存在です。ルネサスの車載SoC「R-Car」シリーズと制御用マイコン「RH850」シリーズは、トヨタ・デンソーと協力して自動運転用途に投入されましたbusinesswire.com。実際、2017年にトヨタとデンソーはルネサスと提携しており、トヨタの自動運転用コンピュータにルネサス製チップを採用すると発表していますbusinesswire.com。R-Car H3/M3などはADAS用画像認識プロセッサとして既に車載実績がありrenesas.com、近年はよりAI処理に特化したR-Car V3H/V3Mや次世代のR-Car V4Hも登場しました。ルネサス製SoCは、NVIDIAやIntel(Mobileye)など海外製品に比べ演算性能では一歩譲るものの、低消費電力と車載信頼性、そして日本OEMとの密な協働によるソフト最適化が強みです。特にASIL規格対応や機能安全設計で高い評価を得ています。ECU全体としては、デンソーなどTier1がルネサスや国内製FPGA等を組み込みつつ、場合によってはNVIDIAなど海外チップも採用しハイブリッドに構成する可能性があります。実際、日産やホンダは自動運転ECUに外国製SoCも組み合わせていますが、トヨタは比較的ルネサス重視の傾向にあります。
日本メーカーの競争優位性: ECU領域での日本勢の強みは、車両制御と直結したシステム設計能力です。自動運転ECUは単にAI計算をするコンピュータではなく、ステアリングやブレーキを制御する車両運動ECU群と安全に連携する必要があります。日本の主要サプライヤー(デンソー、アイシン等)は従来からエンジンECUやブレーキECUを担ってきたため、その知見を活かし車全体を俯瞰した統合制御が可能です。J-QuADの設立も、海外勢(BoschやZFなど)が統合ECUを開発する動きに対抗し、オールジャパンでのソフト・ハード協調設計を進める狙いがありますdenso.com。また、ルネサスという国内半導体メーカーを擁する点も強みです。世界的に先進運転支援ECU向けの半導体は供給が逼迫する中、国内である程度調達できる安心感はトヨタにとってプラスです。ルネサス自身もトヨタ・デンソーと組むことで市場を牽引しようとしており、日本の自動運転ECUがハード・ソフト・半導体が一体となったエコシステムを形成しつつあります。
Waymo/Googleとの関係性: Waymoは独自に自動運転車向けコンピューティングプラットフォームを開発しており、第5世代ではIntel製Xeonプロセッサを用いたラックサーバー相当のECUを搭載していました(推定)。第6世代ではさらに小型化・高性能化しつつコスト90%削減を達成したと述べていますautonomousvehicleinternational.com。GoogleはクラウドやAIチップ(TPU)開発の経験から、自動運転用の自社プロセッサを開発している可能性もあります。ただし、トヨタとの協業で「市販車両向け技術の一部を導入」していく計画もありglobal.toyotaautonomousvehicleinternational.com、トヨタ車に搭載しやすい形でECUを再構成することが考えられます。具体的には、Waymo独自ECU+トヨタ/デンソー製ECUのハイブリッドになる可能性があります。安全策として、車両制御系はトヨタ既存のECU網(デンソー製ADAS ECUやブレーキECU)に任せ、自動運転AI判断はWaymo独自コンピュータが行い、最終的な制御コマンドを車両側に渡す、といった役割分担です。そのインターフェース作りにおいて、デンソーなど日本側ECU開発陣とWaymo側の協調が必要であり、すでに技術折衝が行われている可能性があります。Googleにとって日本のECUメーカーは協力関係になる一方、将来的には競合ともなり得ますが、日本市場参入にあたっては現地パートナーのECUを活用する方が円滑でしょう。
海外企業との競合: ECU全般では独Bosch、Continental、ZF、米Delphi/Aptivなどが伝統的な強者です。彼らも統合ECUや自動運転コンピュータを開発しており、実績ではBoschはメルセデスの自動運転ECUを供給、Mobileye(Intel)はホンダやBMWにシステム提供などがあります。半導体ではNVIDIAが自動運転用AIコンピューティングで突出した存在で、多くの欧米中の自動運転車がNVIDIA Driveシリーズ(Orin等)を搭載しています。日本勢はこのハイエンドAIチップ分野で遅れていますが、ルネサスは車両制御との統合を武器に巻き返しを図っています。実際、トヨタの高度運転支援ではNVIDIAではなくルネサス採用を続けておりbusinesswire.com、国内路線を堅持しています。もっとも、完全自動運転レベルになると演算性能でNVIDIAやQualcommのSoCが必要になる可能性が高く、日本メーカーもそれらを組み込んだECUを作らざるを得ないかもしれません。その場合でも、日本勢はシステムインテグレーターとして価値があります。Waymoがハードウェアを持ち込んでも、車両とのインターフェースや冗長系制御は日本側が受け持つ、といった形で協業できるでしょう。競合というより、日本Tier1と米IT企業が補完関係を築くことで、安全で信頼性の高いECUシステムを構築できるはずです。
おわりに
Waymoの日本展開に際して、センサー(レーダー・LiDAR・カメラ・音響)およびECUの各分野で、日本の自動車部品メーカーは重要な役割を果たす可能性があります。デンソーやソニーなどは既に当該技術で世界トップクラスの実績を持ち、トヨタとの強固な関係もあります。日本企業は高い信頼性と車載適合性を武器に、海外勢と競合しつつ協業も模索するでしょう。特にトヨタ-Waymoの提携枠組みでは、日本のサプライヤーの知見を活かしつつWaymoの先進技術を取り入れる方向性が示唆されていますglobal.toyota。センサー類では国内外の競争が激化していますが、日本メーカーは部品(Tier2)からモジュール(Tier1)まで垂直統合的に供給できる強みがあります。例えばLiDARなら浜松ホトニクスのAPDとデンソーのLiDARユニット、カメラならソニーのCMOSとデンソーのカメラECU、といった組み合わせで高性能システムを構成できます。音響センサーやECUも含め、オールジャパンの技術でWaymo車両を支えることが十分に可能であり、それはひいては日本の自動車産業全体の競争力強化にもつながります。今後、Waymoとトヨタの協業詳細が詰められる中で、日本企業が培ってきた完成部品・要素部品の技術がどのように活かされるか注目されます。国内サプライヤーにとっても、世界最先端の自動運転サービスに自社製品が採用されるチャンスであり、引き続き技術開発とグローバル競争力強化に努めることが求められるでしょう。
参考文献・情報源: 日本経済新聞、Bloomberg、自動運転ラボ、各社プレスリリース、他global.toyotabloomberg.co.jpjidounten-lab.comkoito.co.jpautonomousvehicleinternational.comdenso.comなど。