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リサーチのプロとして長いこと歩んできた今泉大輔です。ChatGPT出現以降、Facebookで「ChatGPTとMidjourneyのビジネス活用を探って行く勉強会」を立ち上げ、「ビジネスパーソンにとってのAI」の観点で米国情報を収集して来ました。知的アウトプットの質と量を向上させるプロンプトの開発にも取り組んでいます。

【ChatGPT経営】ケーススタディ:シャープのSWOT分析はディープリサーチで高品質に

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ChatGPTを上場企業の経営者が使うケースをお伝えしています。

私はシスコシステムズのIBSGという外資系コンサルタント集団(マッキンゼー、ボストンコンサルティンググループ、アクセンチュアなどのシニアな経歴がある人々、当時の年収2,000万円〜3,000万円のスター的なコンサルタントの方々。米国大学MBA)の中にいて、恐れ多くもFortune Global 500社のCXOの方々(CEO、CIO、COO)に向けたThought Leadershipという活動に携わっていました。Thought Leadershipは、マッキンゼーの場合、McKinsey Quarterlyという高級感のある雑誌があり、中でコンサルタントが執筆したハイエンドのビジネス記事が読めます(今はウェブ版のみだと思います)。エグゼクティブの方々の関心を惹く知的アウトプットをお配りしてエンゲージメントを進めるというのがThought Leadershipの役割です。

私は、今で言う「DX」の啓蒙を図る報告書や提案書、小冊子の類を作る役割を担っていました。そのためCXOに向けて書くというのは職業的に身についたスタイルで、それでもってこのブログも書いている次第です。

Fortune Global 500社とは、日本で言えばトヨタ自動車様、三菱UFJフィナンシャル・グループ様、イオン様、日産自動車様など、各業界の一位二位の会社です。そうした企業のCXOに向けてThought Leadershipの何かを書くという、大変に恐れ多い仕事をさせていただいていました。

ChatGPTディープリサーチの調査執筆性能は群を抜く

ChatGPTの調査執筆性能に優れる「ディープリサーチ機能」は、上場企業の経営者こそ使うべきであるというのが、2023年3月頃からChatGPTをガンガン使い始めた小職の持論です。そうしたケーススタディをこのブログでも何本か書いています。

1本300万円のインド市場調査を一晩でやらせるケース【経営者のChatGPTディープリサーチ】

1本1,000万円の価値?米国25%自動車関税の影響分析レポート【経営者のChatGPTディープリサーチ】

生々しく1本いくらと書いているのは、ChatGPTディープリサーチの性能を端的に表すには金額換算をした方が早いからです。

小職は一昨年まで海外事業調査会社にいて、日本を代表するクライアント様などから回ってきた調査案件を職業的にこなしていました。受注する際には見積を作成して営業を介して提出し、良しとなれば調査を実施します。そのため、調査案件の金額換算は普通にできます。

おおよそその原理は調査員の人件費(稼働の日割)+会社としての利益+営業費+報告費(結果報告会)です。三菱総研、野村総研、日本総研クラスではこれこれ、各業界の調査に特化した調査会社ではこれこれといった見積の水準があり、それは対応できる調査案件の難易度によっても変わってきます。

そういう調査案件を職業的に行なってきた者の目から見ても、ChatGPTのディープリサーチの調査執筆性能は群を抜くものがあります。Gemini、Perplexity、Genspark、GrokなどのDeep ResearchないしDeep Searchも興味があって時々試してみますが、プロの使用に耐えるのはChatGPTディープリサーチしかないと言っても過言ではありません。

ChatGPTとの対話によって練り込まれたプロンプトを得る

ケーススタディとしてシャープをSWOT分析することとします。あくまでもビジネススクール的な意味のケーススタディですので、何卒、ご理解下さいますようお願い申し上げます。上場企業でありかつ知名度の高い製品を製造販売している会社様の方が、ケーススタディとしてはリアリティがあるのでそのようにさせていただいています。

プロンプト(以下をChatGPTにコピペし、Deep Researchボタンを押して調査を開始します)

最新の情報に基づき、シャープ(Sharp Corporation)のSWOT分析を実施してください。以下の点に注意してください。

  • 強み(Strengths): 事業のコアコンピタンス、技術力、ブランド力、グローバル市場での優位性
  • 弱み(Weaknesses): 経営課題、財務状況、競争力の低い分野、内部的なリスク
  • 機会(Opportunities): 新規市場の可能性、成長分野、戦略的提携の可能性
  • 脅威(Threats): 競合の動向、業界のリスク、マクロ経済要因、規制リスク

特に以下のポイントに重点を置いて分析してください。

  1. 家電事業(特に液晶テレビとスマートホーム機器)における競争環境
  2. 半導体・ディスプレイ(IGZO、OLED、MicroLED)の技術競争力
  3. シャープが進出している海外市場(アメリカ・欧州・アジア)でのシェアと戦略
  4. 親会社である鴻海(Foxconn)の経営方針がシャープに与える影響
  5. AI、IoT、再生可能エネルギーなど、新規事業の成長可能性

可能な限り、最新の財務データや市場動向を含めて分析してください。
また、同業他社(Samsung、Sony、Panasonic、LGなど)との比較分析も加えてください。

最後に、シャープの競争戦略について、経営者向けの示唆を含めた結論を提示してください。

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上のプロンプトは事前の対話に基づいて練り込まれています。

プロンプトのポイントは以下の通り。

  • 最新の情報を取得する指示を明記(「最新の情報に基づき」)
  • SWOTの各要素を詳細に定義(「事業のコアコンピタンス」「経営課題」「マクロ経済要因」など)
  • 具体的な分析ポイントを追加(「親会社である鴻海の影響」「液晶テレビの競争環境」など)
  • 競合比較を指示(「Samsung、Sony、Panasonic、LGと比較せよ」)
  • 経営者向けの示唆を求める(「経営者向けの結論を提示せよ」)

ChatGPTディープリサーチの圧倒的な調査結果

これをChatGPTディープリサーチで走らせた調査結果のハイライトが以下です。

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ChatGPTが調査執筆した報告書の現物は以下のリンクでご覧いただけます。

ケーススタディ:シャープのSWOT分析

このようにSWOT分析一つ取っても、ChatGPTディープリサーチは優れた性能を示します。上場企業の経営者にとってありがたいのは、練り込まれたプロンプトがありさえすれば、分析と報告が1時間もしないうちに上がってくる時短効果が得られることです。

思いついた時にChatGPTディープリサーチを走らせることで、色々な仮説や思い付きが有効であるかどうかをすぐに確かめることができます。外部の調査会社やコンサルティング会社に依頼すると、行って来いで最短1ヶ月かかる調査や分析が、プロンプトの練り込み(ChatGPTとの対話)を含めても、1時間で済んでしまいます。

これは使わない手はない...というのが、長年調査案件を多数こなしてきた小職の確信です。

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